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【大林宣彦「時をかける少女」を語る】
「角川春樹氏は原田知世の引退作にしたかった」「足長おじさん2人のロマンチズムを体現した作品だった」
制作費は1億5千万円、角川さんのポケットマネーです。「時をかける少女」は僕ら足長おじさん2人のロマンチシズムを体現したものだったのです。
《タイムリープ(時間移動)などの力を身につけた女子高生の苦悩と悲恋を詩情豊かに描いた同作は大ヒット。その後もアニメやドラマなど繰り返し映像化され、7月30日から始まる角川映画祭でも上映される》
尾道の暮らしの良さを守りたい
主な舞台は私の故郷、広島県尾道市です。やはり尾道を舞台とする「転校生」(57年)と「さびしんぼう」(60年)と合わせて「尾道三部作」と呼ばれています。
尾道市を選んだのは、45年ごろから始まった全国的な町おこしブームへの反発がありました。尾道の昔ながらの町並みもどんどんと壊され、許せませんでした。故郷に根付いた文化や暮らしの良さを守りたい一心から、まず最初に「転校生」を作ったわけです。撮影地は、すっかり開発されてしまったきれいな場所ではなく、あえてひなびた風景ばかりを選びました。続く2作についても、同じ気持ちで撮影に臨みました。
地方に残された懐かしい風景を撮り続け、“ふるさと映画作家”として頑張ってきましたが、三部作はその出発点となりました。