東日本大震災で津波被害を受けた宮城県の小学校で、地元木材を使った新校舎が誕生した。同県東松島市の野蒜(のびる)小学校と宮戸小学校が統合した宮野森小学校で9日、竣工式と落成式が開かれた。高台に移転し、校舎と体育館ともに木造で東北地方の無垢(むく)材を使用。これまで仮設校舎で学校生活を続けてきた児童は10日、新たな学びやで3学期を迎える。
宮野森小は児童143人。津波で校舎が全壊した野蒜小と、宮戸小が2016年4月に統合した。野蒜小は震災後に仮教室や仮設校舎を使い、統合後も仮設で授業を続けていた。新校舎は15年9月に着工。震災翌月に入学した現在の6年生が卒業間際の3学期だけでも新校舎で過ごしてもらおうと、延べ約2万4千人の作業員を投入して工事を急いだという。
竣工式と落成式には学校関係者や施工した住友林業など300人以上が参加。木の香りがする体育館で宮野森小の児童が窓の外に広がる森を背景に校歌を披露した。6年生の阿部来春さん(12)は「卒業まで新しい校舎でいっぱい思い出を作りたい」と笑顔で話した。野田滉弥くん(12)は「自然を感じられる学校で過ごすのが楽しみ」と期待を込めた。
新校舎は一部2階建てで延べ床面積約4千平方メートル。教室棟や図書館、高さ10メートルの体育館などを渡り廊下でつないだ構造で、校舎の後ろに森が広がっている。校舎と体育館がオール木造なのは宮城県内で初めて。福島県や宮城県産の杉やヒノキなどを約5千本を活用した。
施工した住友林業の市川晃社長は「地元の支援で森に開かれた小学校が実現した。復興の新しい象徴として世界に発信できたらうれしい」と話した。