2016年末に『Fate/Grand Order』が完結を迎えた。約一年五カ月にも渡る長い長い旅にも終わる日が来たのだ。
寂しくないと言えば嘘になる。この一年五カ月、このゲームと共に歩んできた道のりは本当に素晴らしいものだった。
サービス開始直後からプレイを開始したものの、手の余りにも届いていない仕様っぷりに落胆した事ももはや懐かしい。
あの時のガチャには星4確定枠すらなくサーヴァントも出るかどうかわからないため「金を溶かしている」という感覚しかなかったし、「出現するクラスはクエストに挑戦するまで分からない」という仕様によりメインストーリーの攻略すらユーザー間の情報交換がなければ成立しなかった。あとジャンヌが再臨素材が安い事や無敵持ちということもあってやたら歓迎されていた。佐々木小次郎はワイバーンを膾切りにしていた。会話の途中で「おっと、続きはワイバーンを倒してからだ」は日常茶飯事だった。今となってはかけがえのない絆レベル10という固い絆で結ばれた相棒である孔明も、「宝具は何一つ確定で入るものがなく、チャージ減少が確率付与なので事故死要因にしかならない」という仕様だった。
いずれを取っても本来だったら投げ出してもいいほど「残念な仕様」である。しかしシナリオだけは文句の付けどころがないほどに面白かった。マリーアントワネットとアマデウスのやり取りは儚く、ジャンヌ対ジャンヌという戦いは「ジャンヌ・ダルク」という存在を再定義されてその気高さに痺れた。歴代ローマ皇帝達の復活に自分の根幹を揺さぶられたネロが、自分の立つ場所を見定めて立脚し、「皇帝ネロ」として戦う姿は情熱的だった。
この素晴らしいシナリオがなければ自分は本作のプレイを継続していなかっただろう。本当に素晴らしかったのだ。
新年最初の福袋ガチャでジャンヌダブリをやらかし、女王メイヴが佐倉綾音だと聞いて溜め込んだ石をもって挑むも150連以上回して星4二人という爆死っぷりを晒して悲しみを背負いながらもプレイし続けたのはそのシナリオがあったからこそである(なおその後女王メイヴはちゃんと引いた)。
そして7月末に一周年を迎え、同時に第六章が始まった。
女王メイヴと同時にダヴィンチちゃんとカルナ君が加入して種火の枯渇という深刻な問題に対応していたため、既に攻略に励んでいた者達から一歩遅れる形でスタートした第六章であったが、その物語にたちまち魅了された。単刀直入にいうのならば「ベティヴィエール」という男が抱き続けていたその想いのあまりの美しさに震えたのである。
アルトリアを最期まで見続けてきたベティヴィエールが最後に抱いた後悔。
その後悔を終わらせるために、「終わる日が来るかどうかも分からない」という旅に身を投じ、魂をすり減らしてまでも歩き続けた彼の思いが報われる第六章の終幕は彼の忠義の生き様そのものであり、人間の美しさそのものだった。
そして第六章クリア報酬として多くのユーザーが手にする「ベティヴィエール」というサーヴァントの存在。
シナリオとシステムが見事に噛み合った最高の演出であった。
第七章で賢王ギルガメッシュと共に神代からの卒業を経て、山籠りでサーヴァント達との絆を深め、マーリンを育成してから迎えた終章は参加した者にしか味わうことが出来ない最高の体験だった。
主人公達の絶体絶命の危機に僅かな縁を頼りに召喚されて戦う英雄達。各章では敵対した者達も主人公のためならと大集合して戦う様はこれまでの歩みを物語るものであり、目に見えて減っていく魔神柱の数には英雄達の活躍を感じさせてくれた。
ゲーム的には「プレイヤー全員で魔神柱を狩る」であり素材の美味しさもあって争奪戦の様相を見せた事に胸が熱くなった次第である。開始から12時間ほどでバルバトスが死んだ時に心に誓ったものである。「昨日の友は今日の敵なのだ。素材が欲しければ効率を求めるべきだ」と。効率を求めた結果辿り着いた「(絆礼装装備の)孔明!マーリン!(フレの)金時!」という呪文は、唱えるだけで魔神柱が死ぬ悪魔の呪文だった。おかげでマーリンのスキルレベルが大変上がりました。ありがとう。もっとよこせ。
「魔神柱コロス!タノシイ!タノシイ!」と理性を失い、新人類と化した自分に理性を取り戻させてくれたのはマシュであった。
命尽きる最後の最後の瞬間まで永遠を否定し、抗い続けた彼女の想い。その想いを受け取っての最終決戦はまさしく人の想いと意味を問うた戦いだった。手持ちのサーヴァントを駆使し、共に歩んできたサーヴァント達との絆を力に変え、最後の最後にメイヴが逆レイプこと『愛しき私の鉄戦車』でトドメを刺した時、全ての人達の人生そのものを否定した彼に一矢を報いたように感じた。
英雄とは人が為るもの。人を否定した彼に相応しい幕引きだったように思うのだ。
そして――旅は終わる。美しい夜明けとともに。
この光景を見るために自分達はここまで歩んできたのだと。
そう思わせてくれたあの最後の景色を忘れない。
2016年の最期を締めくくるに相応しい、最高のグランドフィナーレであった――。
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まあ第二部もあるので旅はまだまだ続くわけなのだけれども。
今年は武蔵さんと金時でゴールデン駆け抜けます。
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