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 500年ほど前に京都で創業し、御所に菓子を納めてきた虎屋。伝統に裏打ちされた菓子作りを続ける一方で、パリ店開設や、新業態のカフェ出店など新しい試みにも挑戦しています。社員の人材育成でも挑戦を促す仕組みを設けています。時代の荒波が押し寄せても、生き残ってきた虎屋の「知恵」とは何でしょうか。

 JR新宿駅新南口そばに、白いタイルに描かれた2匹の虎が目を引くカフェがある。「TORAYA CAFE・AN STAND(トラヤカフェ・あんスタンド)」。創業500年ほどの和菓子屋、虎屋のグループ会社が昨年4月にオープンさせた新型店だ。

 売りは和と洋が融合した「あんペースト」。冬季限定の「柚子(ゆず)」は、虎屋の白あんをベースに国産柚子とホワイトチョコレートが混ざり合い、まろやかな甘さに爽やかな柚子の香りがからむ。三浦純店長(33)は「アイスクリームやヨーグルトと相性が抜群です」。

 こしあんのあんペーストをコッペパンにはさんだ「あんコッペ」も人気。こしあんには黒砂糖やメープルシロップを加えた。

 出店を担当したのは17代当主、黒川光博社長(73)の長男、光晴専務(31)だ。「若者の興味を誘うため、『あん』を『AN』と表現した。和菓子の根幹、あんのおいしさを知って欲しい」

 虎屋は2003年にトラヤカフェの1号店を東京・六本木ヒルズに出店。07年にはギャラリーを設けた東京ミッドタウン店、静岡県御殿場市に庭園と菓子づくりが見学できる「とらや工房」をつくるなど、新しい取り組みに挑戦してきた。

 1号店の開設にあたって社内では消極的な意見もあった。「虎屋の名前に傷がつくのでは」「失敗したらどうするのか」。虎屋は中小が多い和菓子メーカーとしては大手。業界はバブル崩壊後、法人需要の低迷や後継者難に直面したが、虎屋の業績は堅調だった。

 ただ、黒川社長には「このまま続けていけるのか」という不安があった。伝統に縛られ、社内が保守的になっているのではないか。歴史があっても将来が保証されているわけではない。

 「新しい取り組みをして欲しい」。ヒルズ側の誘いは渡りに船だった。黒川社長は「『虎屋が一番だ』と思うのが一番ダメ。そこで成長が止まってしまう」。

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