ご存知の方も多いように、や
の不定積分は高校で習うような関数(初等関数)では書くことができません。
今回は、このことを証明するために使われるLiouvilleの定理とその応用を紹介します。
今回の内容では、Liouvilleの定理の証明や"初等関数で書けない"とはどういうことかまで説明することができません。
今回を含めて4回くらいで、ほぼ完全に理解できる内容を書きたいと思っています。
Liouvelleの定理とLiouville判定法
まずはLiouvilleの定理を紹介します。これは、不定積分が初等関数で書けることの必要条件を与える強力な定理です。
Liouvilleの定理
を有理関数体とする。
の不定積分が初等関数で書けるためには、複素定数
と有理関数
が存在して、
と書けることが必要かつ十分である。
特別な場合には、もっと簡単な定理があります。
Liouville判定法
を有理関数体とする。
とする。
の不定積分が初等関数で書けるためには、ある
が存在して、
と書けることが必要かつ十分である。
Liouville判定法はLiouvilleの定理と定理の証明のアイデアから導くことができます。
が初等関数で書けないことの証明
Liouville判定法を用いて、が初等関数で書けないことを証明しましょう。
まず、Liouville判定法を満たす有理関数があったとし、互いに素な多項式
で
と書けたとします。
判定法の満たすべき式よりなので、計算すると
となることが分かります。
よっては
で割り切れる。
は互いに素なので、
が
で割り切れる。
このことはが定数、つまり、
が多項式であることを意味します。
再び、を考えると、左辺は0次の多項式であるが、右辺は
である限り1次以上の多項式である。
よって、矛盾である。
もちろん、でも矛盾。
つまり、Liouville判定法を満たす有理関数は存在しない。
厳密な証明に向けて
一応証明はできました。
特に、の不定積分は書けるのに、
の不定積分が書けない理由が、Liouville判定法の式から来ているということが分かると思います。
とりあえず、ここまでは前提知識が無くても分かっていただけると思います。
しかし、
a. 初等関数で書けないことの厳密な定義
b. Liouvilleの定理およびLiouville判定法の証明
がまだ説明できていません。
そして、それらの説明には、
c. 微分体の理論
が必要です。
これらのことは別の記事で説明しようと思います。
(おそらく、b. がかなり大変になります. )
参考文献
R. C. Churchill, Liouville's Theorem on Integration in Terms of Elementary Functions.
M. Rosenlicht, Liouville's Theorem on Functions with Elementary Integrals.
a.初等関数で書けないことの厳密な定義については記事にしました。
tetobourbaki.hatenablog.com
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