地球上に3頭しか生き残っていないキタシロサイを絶滅の危機から救うため、キタシロサイのiPS細胞から卵子を作り、将来の個体数増加を目指す研究を、九州大の林克彦教授(生殖生物学)とドイツの国際チームが7日までに始めた。
卵子を作製できれば凍結保存されている精子などと体外受精させ、近縁の動物を代理母にして妊娠、出産を試みる構想。絶滅の恐れがある動物の救済という、iPS細胞の新たな応用の可能性を示している。倫理的な問題や動物の保全策の在り方についても議論を呼びそうだ。
生存するキタシロサイは雄1頭と雌2頭で、ケニアの自然保護区で飼育されている。生存する3頭や死んだ個体から採取した細胞や精子がドイツや米国などに保管されており、一部でiPS細胞ができている。
林教授によると、ドイツのライプニッツ動物園野生生物調査研究所などの専門家で構成するチームは、iPS細胞から卵子のもとになる始原生殖細胞へ分化させる試みを始めた。林教授はマウスで卵子を作り、子を誕生させた実績があり、共同研究に加わってドイツで技術指導をしたという。
体外受精で使う精子は、iPS細胞から作る方法もある。代理母としては、近縁のミナミシロサイが候補だという。
林教授は、キタシロサイが誕生するまでのデータが乏しいことから「基礎研究も必要で、実現するには長い時間がかかる」と話している。
キタシロサイはもともとアフリカ中央部に分布。漢方薬として珍重される角を狙った密猟が横行し、多発する内戦の影響も受けて激減した。〔共同〕