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 企業活動に対するあからさまな政治介入である。

 トランプ次期米大統領がツイッターで、トヨタ自動車のメキシコでの新工場建設計画について「米国に建てるか、国境で高い税金を払え」と迫った。

 またもやネットを使った一方的な攻撃だ。米国企業では空調機器のキヤリア社や自動車大手フォード・モーターが、トランプ氏からの圧力でメキシコでの工場建設を撤回したが、その矛先が日系企業にも向けられた。

 トランプ氏はまだ大統領ではなく、就任後にどう振る舞うかは定かでない。しかし、近く手にする絶大な権力を背景にした不当な圧力にほかならず、断じて許されない。トヨタが計画する新工場と生産を増強する予定の工場とを混同したとみられるなど、「事実」へのがさつな姿勢は相変わらずで、その異様さがいっそう際立つ。

 今回のトヨタの計画は、米国内の工場や生産ラインを国外に移すという話ではない。トヨタ自身が「新工場ができることによって、米国における生産台数や雇用が減ることはない」としている通りだ。メキシコにカナダを加えた北米自由貿易協定(NAFTA)に基づいて商品が米国に入ってくることを、トランプ氏は徹底的に排除するつもりなのか。

 一連の発言に共通するのは、「米国第一主義」とその根底にある保護主義的な考えである。

 トランプ氏は、NAFTAに否定的なのに加え、日本など12カ国で合意済みの環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱も表明している。多国間から二国間へと交渉の軸足を移し、世界最大の経済大国の力を前面に出す強圧的な姿勢が鮮明だ。

 しかし、それが中・長期的には逆効果になる恐れが強いことを理解できないのだろうか。

 相手国が米国への対抗措置をとれば、米国からの輸出が滞って国内企業の収益が悪化しかねない。工場を無理やり米国内にとどめても、経営が苦しくなれば人員削減や工場閉鎖を招き、雇用に悪影響を及ぼす。

 保護主義の最大の被害者は、安くて質の良い商品を手にしにくくなる各国の消費者だ。どの国の政府も、自由貿易が消費者にもたらす利点と国内での雇用の確保という課題とのバランスに腐心している。消費者が自由貿易の恩恵を最も受けてきたはずの米国が近視眼的な政策に陥れば、米国を含む世界経済が目詰まりを起こしかねない。

 日本をはじめとする各国政府は、そのことをトランプ氏に粘り強く訴えてほしい。

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