韓国外交部はこのような一連の状況について「韓国を取り巻く今の外交・安全保障情勢は、冷戦終結後では最も厳しい状況にある」との見方を示している。この言葉が決して誇張とは思えないほど確かに今の状況は深刻だ。ところがこの危機的状況の中、韓国では国のリーダーシップが完全に欠如し、しかも今後どうなるのかさえ見通せない。大統領弾劾問題だけの話ではない。次に政権を握る可能性が最も高いとされるのは最大野党の「共に民主党」と同党の文在寅(ムンジェイン)前代表だが、彼らが今の状況にどう対処するつもりなのか、その戦略も考え方も全く見えてこないからであり、ある意味このことの方が弾劾問題よりもはるかに深刻だ。文氏は先月、釜山市の東区庁が日本領事館前から少女像を撤去した際「親日行為だ」と批判した。今の時代、大韓民国に親日派が存在するという考え方を大統領候補である文氏が持っていること自体が何よりも衝撃的だ。これは30-40年前の運動圏(左翼系の学生運動グループ)学生たちと同じレベルの認識であり、このレベルの考え方で今の複雑かつ多面的なグローバル時代にどうやってこの国を導こうとするのか全くもって理解できない。
われわれ大韓民国と日本は同じ自由民主主義の価値を共有し、また経済分野では深い関係を結んでいるだけでなく、民間分野での交流も活発だ。ところがその一方で歴史問題で今なお根深い対立が続く非常に複雑な関係でもある。ところがこの日本との複雑な関係を「親日か反日か」といった単細胞的な観点からしか考えられないとなれば、冷静かつ常に用意周到に立ち回る日本人と渡り合うことなど到底できない。共に民主党と文氏は「もし政権を握れば直ちに韓日慰安婦合意を破棄する」と豪語しているが、これが本当に可能かどうか疑問であるのはもちろん、もしそれを実行に移せば、国際社会において韓国が置かれるであろう立場や状況についてどう考えているのかまずは説明すべきだ。もしそうなればまず日本よりも米国が「韓国がまたゴールポストを移した」と批判してくるだろう。