昨年末の火災で唯一の常勤医だった高野英男院長(81)が死亡した高野病院(福島県広野町)の今後の医療体制を協議するため、福島県や町、国など関係機関が6日、町内で初の対策会議を開いた。医療継続の意思を表明した病院側に対し、福島県立医大が医師派遣を含めた支援策を検討することになった。
会議は冒頭以外は非公開。県地域医療課によると、病院側は「患者とスタッフを守りたい」と述べ、支援を要請した。入院患者は現在、102人。病院は新規患者の受け入れを停止しており、今月中は県内外のボランティア医師20~30人の協力で乗り切れる見込みだ。だが、長期的な見通しが立っていないため、県と県立医大が医師派遣について検討する。
常勤医の確保については、管理者として病院経営にも参画する立場となるため、人選には一定の時間がかかるとの認識で一致したという。会議は今後も継続して開催する。
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今春には浪江町と富岡町の一部で避難指示が解除される見通しの双葉郡。住民生活に不可欠な医療体制が少しずつ整いつつあるものの、課題は多い。
東京電力福島第一原発の20~30キロ圏内に位置する広野町は2012年3月に町が帰町宣言。郡内で最も早く住民の帰還が始まった。震災前の人口は約5500人。帰還した町民は現在、約2800人で、春以降は4千人を超えると見込まれる。
約3千人の除染や廃炉の作業員も暮らし、健康診断の増加で町内に1軒ある診療所は混雑。今年4月には施設を拡充して広野駅東側の開発地区に移転する。
住民の帰還に伴い、楢葉町には昨年2月、富岡町には10月に診療所がそれぞれ開院した。だが必要な診療科が不足している。震災前は富岡町にあった人工透析を受けられる診療所が今はなく、患者はいわき市内へ40~50分かけて通院しなければならない。
県は18年4月、富岡町に24時間対応で救急医療を担う30床の「ふたば医療センター(仮称)」を新設するが、広野町はこのセンターに人工透析対応も担ってもらえるよう要望している。
郡内で唯一の病院が高野病院だ。118の病床を持ち、入院患者の9割は広野、楢葉、富岡の3町の住民。高齢者を中心に地域医療を支える。「高野病院を支援する会」の坪倉正治医師(35)は「双葉郡の医療では、救急医療の病院よりも、慢性疾患の患者が入院できる病院が求められている」とし、高野病院の重要性を強調する。
病院の存続へ向け、大きな課題となっているのは常勤医の確保。坪倉医師は人材確保の難しさも指摘している。「今まで高野院長のようなスーパーマンがいて成り立っていた病院。代わりの人を見つけるのは簡単ではない」
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