定年後に向けた人脈づくり

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 【定年予備校】定年後もビジネスを継続する場合、これまで培ってきた会社での実績や専門能力があれば十分と思っていたら大間違いだ。会社での実績は、その会社での仕事にしか役に立たない。部長や取締役などの役職も、自分自身の能力ではないからだ。

 筆者はこれまで、経営能力のない元取締役や、管理能力のない元部長にたくさん出会ってきた。いま、50代の多くは部長職か元部長職だ。部長は社内では確かな地位ではあるが、定年後に役立つとはかぎらない。実務能力を問われるからだ。

 とはいえ、50代になってから実務能力を鍛えることは厳しい。だが、50代の管理職なら、多くの人脈を作ることは可能だ。定年退職すると、その会社とのつながりで得た人脈はなくなってしまうから、会社にいるうちにその地位を活用して多くの人脈を確保しておくべきだ。

 会社の取引先、社命で参加する異業種交流会やセミナー、業界団体や組合の会合など、人脈を作る場はいろいろある。この人脈こそが定年後の大きな財産になる。

 定年後、新しいビジネスを始めるなら、営業活動にその人脈を活用できる。いまは不況で物が売れない時代だ。新規顧客開拓には何かと苦労するが、その際、人脈は大いなる助けになる。多くの人脈を持つ人は、それが定年後のビジネスに役立つ可能性が高い。

 では、人脈をどう作るか。名刺やアドレスを闇雲に集めて、ただ保存しておけばいいというものではない。どのジャンルのどんな役職の人なのか、いつ名刺交換をしたかは最低でも明記しておかないと活用できない。

 また、人脈を維持するためには「ギブアンドテイク」より「ギブアンドギブ」が大切。相手からの相談や、役に立つお手伝いを積極的にすることで信頼関係ができる。

 日ごろからコミュニケーションを密にすることでも人間関係を深めることができる。相手の役に立つ情報を定期的に届けることができれば、自分を印象づけることができる。半年に一度くらいは直接会い、情報交換するなどの活動も重要だ。人脈作りには、相手とのコミュニケーション頻度が欠かせない。

 前回も述べたように、筆者は定年前、企画の専門家として書籍出版や講演会を行っていた。そして、その読者や受講者を集めて異業種交流勉強会「企画パーティー」を継続的に開催していた。定年後、その活動は大変役に立った。

 ■富田眞司(とみた・しんじ) 元気シニアを増やし、日本の復活を目指す「(一社)日本元気シニア総研」代表。「定年予備校」校長。名古屋大卒。『A4・1枚究極の企画書』など企画書関連本を多数執筆。「元気シニアビジネス」に関する講演・執筆も多数行っている。