★5日の自民党役員会で首相・安倍晋三は「共謀罪」の成立要件を絞り込んだ「テロ等組織犯罪準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を通常国会で提出・成立を目指す考えを示した。突如この法案が出てきた背景には20年の東京五輪・パラリンピック開催がある。しかし同法案は「国民の思想や内心の自由を侵し、監視社会を招く恐れがある」と過去、小泉政権時に3回も廃案に追い込まれている。国民に反対の声が多いカジノ法案も強引に通した政権だけに、慎重論がある公明党や野党が態度を硬化させることは必至だ。

 ★なぜかと言えば犯罪の準備段階でも罪に問えるため、政府に批判的な会合や会議すら処罰の対象になり、監視社会と同時に恐怖社会や密告社会を生みかねないとの懸念が強い。また警察や司法当局など取り締まる側が「謀議をしていた」と認定するだけで犯罪になるため、反対勢力が弾圧を受ける可能性が高い。

 ★この法案議論の際に念頭に置いていただきたいのは、5日付東京新聞の筆洗が指摘する記録の大切さだ。環境省が「汚染土議事録」を削除しただの、防衛省が陸上自衛隊の部隊が南スーダンで国連平和維持活動に参加する日報を廃棄し、現地での大規模な武力衝突の記録を消してしまう、政府や電力業界幹部らの核燃料サイクル事業の今後について話し合った「五者協議会」は議事録すらないというが、いずれも関係者が謀議し削除や破棄を決めたり、議事録を取らないことに決めた謀議の犯罪性は問われないという現実も承知していただきたい。公務員の不作為的謀議をまずただすところから始めるべきではないのか。(K)※敬称略