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【社会】

ベストセラー「日本会議の研究」 異例の出版差し止め決定

扶桑社が昨年春、出版した新書「日本会議の研究」

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 ベストセラーの新書「日本会議の研究」によって名誉を傷つけられたとして、書籍内に登場する千葉県の七十代男性が、出版元の扶桑社に出版差し止めを求めた仮処分で、東京地裁(関述之(のぶゆき)裁判長)は六日、「真実でない部分があり損害も著しい」と判断し、差し止めを命じる決定をした。

 扶桑社によると、昨年春からの発行部数は約十五万三千部。裁判所がベストセラーの出版を差し止めるのは異例だ。

 書籍では、保守系団体の日本会議と宗教法人「生長の家」の関係を記載。生長の家幹部だった男性は、六カ所について真実ではないとして仮処分を申し立てていた。

 決定は、男性の布教活動に関する一カ所の記述が真実とは言えず、著者の菅野完(すがのたもつ)さんは男性に取材していなかったと指摘した。その上で、販売が続くと男性の社会的評価が低下して回復困難な損害を受けるとし、この部分を削除しなければ出版は認められないと結論付けた。その他の記述は、うそとは言えないなどと判断した。

 扶桑社は「当社の主張がほぼ認められた決定ではあるが、一部削除を求められたことは誠に遺憾だ」とコメントした。自社にある在庫は出荷しないが、既に書店や出版取次会社に配送された本は回収しない方針。

 この決定によりただちに差し止めの効力が生じるが、扶桑社は異議と執行停止を地裁に申し立てることができる。男性の弁護士は「裁判所の公正な決定を歓迎する」とコメントした。

 関裁判長は二〇一四年には、インターネットの検索結果削除を求めた仮処分申し立てで、国内で初とみられる削除命令の決定をしている。

 書籍は日本会議の成り立ちを探った上で、安倍政権による改憲に向けた動きを批判する内容。各書店でベストセラーランキングの上位に入った。

 日本会議の広報担当者の話 日本会議として仮処分申し立てに関与していないので、コメントできない。

◆著者「言論弾圧」

 「日本会議の研究」著者の菅野完さんは六日の東京地裁決定後、取材に「一カ所だけ削除修正を求められていることは極めて遺憾。本件は言論弾圧の一環と言わざるを得ない」とコメントした。

 菅野さんは、削除修正が求められていた大部分について地裁が請求を退けた点を挙げ「こちら側の主張の通り、請求がほぼ全面的に却下され、言論の自由の観点からも安堵(あんど)している」と説明。今後の対応については扶桑社と相談するとした上で「これまでも嫌がらせは絶えなかったが、誰からの弾圧であれ、自分の言論活動に引き続きまい進していきたい」と述べた。

<日本会議> 保守系団体の「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」を統合し、1997年5月に設立された民間団体。「皇室崇敬」や「新憲法の創造」を掲げ、近年は夫婦別姓反対や外国人参政権反対などを訴える。政府や政党に対して政策提言や要望書を提出することもある。全都道府県に下部組織があり、会員は約3万8000人。名誉会長は元最高裁長官の三好達(とおる)氏、会長は元時事通信社外信部長の田久保忠衛(ただえ)氏。

 

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