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セイウチは鳥で遊ぶ、初の報告

ナショナル ジオグラフィック日本版 1/6(金) 7:32配信

北極圏の島で74回観察、殺意はない?

 セイウチが遊び好きな動物だと聞くと、意外に思う人は多いだろう。専門家でさえ、体重が1.5トンもあるセイウチはアシカやアザラシと違って遊び心に欠けると考えていた。ところが、ロシアにあるサンクトペテルブルク大学の動物学者アンドレイ・ギルジョフ氏が共同執筆した論文によると、セイウチはこれまでほとんど研究されてこなかったために、そのような誤解が生まれたのだという。

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 そこで、ギルジョフ氏は同僚の動物学者カリナ・カレーニナ氏とともに2015年、ロシア極東のチュクチ海に浮かぶコリューチン島に1カ月間滞在し、セイウチの大群を観察した。浜に寝そべる数百頭ものセイウチたちの行動を邪魔しないように、寒風吹きすさぶ中、凍てついた崖の上から調査した。結果、2人はセイウチと海鳥が触れ合う場面を74回観察し、遊び方には数通りあることに気付いた。セイウチの遊びを観察したものとしては初めての報告である。

「若いセイウチがこのような行動を取るのは、恐らくほかの動物が遊ぶのと同様、身体的能力と社会性を養うためだと思います」と、ギルジョフ氏は述べている。この研究は動物行動学の専門誌「acta ethologica」に発表された。

どんな鳥でもおかまいなし

 若いオスのセイウチが浜辺で戦いごっこをやることは以前から知られていた。これは、交尾期に恋敵と争うための準備と考えられていた。

 しかし今回の論文で新たにわかったことは、オスもメスも鳥をおもちゃのようにして遊んでいるらしいということだ。

 海面に浮かぶ生きた鳥に忍び寄って脅かしたり、また時には海に潜って無防備な鳥の目の前に突然飛び出し、牙を使って襲ってみたりする。シロカモメ、ミツユビカモメ、エトピリカなど、どんな種でもおかまいなし。とにかく、海に浮かんでいる鳥なら、遊びの対象になる。

 遊んでいるのはほとんどが若いセイウチで、遠目からオスとメスを区別するのは難しい。セイウチは、成長するまで性別による行動の違いは現れず、若いうちはオスであってもメスであっても遊ぶのだろうと、ギルジョフ氏は考えている。また、74回の観察のうち、鳥が死んでしまったケースは1回だけだった。セイウチに、おもちゃを殺す気はないようだ。

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最終更新:1/6(金) 7:32

ナショナル ジオグラフィック日本版

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