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2016年6月11日(土)

知ってほしい“子ども用車いす”

小郷
「近田さん、なんだか分かりますか?」

近田
「一見ベビーカーに見えますが、にしては作りがしっかりしていますよね。」

小郷
「実はこれ『バギー型車いす』と呼ばれる、子ども用の車いすなんです。

一般の子ども用の車いすは、こちらのようなものでして、主に足の不自由な子どもが利用します。
これに対して、『バギー型車いす』は足の障害だけではなく、病気などで長時間姿勢を保てない子どもが利用します。

 

腰などをこのようなベルトでしっかり固定出来まして、1人1人の身体の状態に合わせて、背もたれですとか、足を乗せる部分の角度を調整することも出来るんです。」

近田
「これ、押すのはスムーズに出来るんですけれども、段差などで、例えば、抱えようとしたりすると、結構な重さがありますね。」

小郷
「車体は15キロほど重さがありまして、さらに人工呼吸器などの医療機器を乗せますと、重さは数十キロにもなります。
こうした『バギー型車いす』。
一般には、その存在をほとんど知られていないため、親たちが苦労を強いられています。」

ご存じですか? 子ども用車いす

リポート:村山かおる(おはよう日本)

大阪市に住む、本田香織さんと娘の萌々花ちゃん、3歳です。




 

脳に障害がある萌々花ちゃんは、自分で立ったり歩いたりできません。




 

外出に欠かせないのが、「バギー型車いす」です。
ベビーカーでは、障害のある体をしっかり固定することができないといいます。


 

本田香織さん
「(ベビーカーに)普通に乗せると座れないので、乗せてもずるずると落ちてきちゃう。
骨盤固定とここの補強で、下からベルトをしたり。
これがないとお出かけできない。」
 

病院に通うのは、週2回。
いつも電車を利用します。
萌々花ちゃんと荷物を合わせると40キロ近くになる、車いす。
ちょっとした段差を乗り越えるのも大変です。
本田さんが何より苦労しているのは、バギー型車いすの存在をほとんどの人が知らないことです。
 

ホームとの間に段差や隙間がある場合、車いすはスロープを使って介助を受けることができます。



 

しかしバギー型車いすは、一般に知られていないため、多くの駅でスロープの利用を断られてしまうということです。



 

電車に乗っても、車いす用のスペースを譲ってもらえないばかりか、乗客にベビーカーと勘違いされて「折りたたんでください」と言われることもたびたびです。

本田香織さん
「(バギー型車いすを)知らない方は全くご存じないので、電車に乗るのも、混んでいたら気が引けて乗れないことも。」

バギー型車いすの存在を知ってもらいたいと考えた本田さん。
去年(2015年)9月、啓発を目的とする社団法人を立ち上げました。



 

今、取り組んでいるのが、子ども用車いすの「マーク」の制作。
シンボルマークを通して、理解を広めたいと考えました。
出来上がったばかりのサンプルをもとに、デザイナーと相談をしました。


 

デザインの担当者
「文字なしでも海外の方でもお子さんでも、なんとなくわかるように。」



 

ひと目で子ども用の車いすとわかってもらえるよう、デザインを検討します。

この日は、同じ立場の母親たちに集まってもらい、悩みを話し合いました。




 

母親
「今後も絶対バギーは必要なので、1人でも多くの方に理解していただきたい。」

母親
「見た感じはわからない、病気っていうのが。
わからない部分が多いので、そこをあたたかい目で見てもらえたら。」

今週、本田さんは大阪市内の商店街を訪れました。
以前、他の商業施設で、バギー型車いすを折りたたんでくださいと言われた本田さん。
地元の商店街から働きかけを始めたいと考えました。

 

対応したのは、商店街の世話役たちです。




 

本田香織さん
「全部車いす。
ご覧になったことあります?」

天神橋三丁目商店街振興組合 築部健二理事長
「あったとしても(車いすと)気がついていなかったかも。」
 

本田香織さん
「こういった、いろんな方が出入りする場所で、車いすなんですよっていうポスターをたくさん目に触れるよう貼りたい。
将来的に、子ども用車いすで来ても、支障なく買い物できるお店の入り口にマークをかかげてもらったり。」

天神橋三丁目商店街振興組合 築部健二理事長
「初めて聞いた話だし、初めて見せてもらった画像。
世の中にはいろんなことで苦労されている方々がいるとわかった。」


 

商店街の加盟店に、バギー型車いすの存在を伝えるだけでなく、周知活動にも協力してもらえることになりました。

本田香織さん
「すごく協力的でびっくりした。
外側から見ても事情がわからない方って、子ども用車いす以外にもたくさんいる。
自分と違うものを知ってもらうような機会のたくさんある社会にしていって、お互い譲りあっていけるのが、いちばんいいのかなと思う。」

 

小郷
「バギー型車いすを広く周知していこうという活動に取り組んでいる人は他にもいらっしゃって、実はこれまでにも、シンボルマークが作られてきました。 それでも、バギー型車いすや利用者の方々の悩みや思いというのは、一般にはなかなか知られていないんですね。」

近田
「恥ずかしながら、私も知りませんでした。
でも、私のような人間が知って、それから街中で気付くという、そういう動きが広がっていってくれるといいですよね。」