トランプ氏の批判の矛先 なぜトヨタに?

トランプ氏の批判の矛先 なぜトヨタに?
アメリカのトランプ次期大統領は5日、トヨタ自動車が、メキシコに工場を建設する計画を進めていることをめぐり、ツイッターに書き込みを行い、アメリカ国内で生産しなければ、高い関税を払うよう強く求めました。トヨタだけでなく、日本の自動車メーカー全体の海外戦略にも影響が及ぶおそれが出ています。
なぜトランプ氏の批判の矛先が日本メーカーに向けられることになったのでしょうか。
今回、トランプ次期大統領がツイッターを通じて批判したのは、トヨタ自動車が2019年の稼働を目指してメキシコに建設を進めている乗用車の工場です。おととしの4月に計画を発表し、去年11月に起工式を終えたばかりでした。

トヨタを含め日本の自動車メーカー各社は、メキシコの工場を主に世界第2位の自動車市場アメリカ向けの生産拠点と位置づけています。
メキシコは、現地の賃金が安いことに加え、NAFTA=北米自由貿易協定によってアメリカに関税ゼロで輸出することができるからです。

メキシコに工場を持つ日本の大手メーカーのうち、トヨタはメキシコで生産した車の91%、ホンダは54%、日産自動車は43%、マツダは29%をそれぞれアメリカ向けに輸出しています。

生産は年々増えていて、大型バスとトラックを除いたメキシコでの生産台数は、2010年には61万台だったのが2015年には131万台を超え、日本メーカーにとっては日本、アメリカ、中国、インド、タイに次いで、世界で6番目に大きな一大生産拠点となっています。
            

Q:なぜメキシコに工場を?

今回、トランプ次期大統領がツイッターを通じて批判したのは、トヨタ自動車が2019年の稼働を目指してメキシコに建設を進めている乗用車の工場です。おととしの4月に計画を発表し、去年11月に起工式を終えたばかりでした。

トヨタを含め日本の自動車メーカー各社は、メキシコの工場を主に世界第2位の自動車市場アメリカ向けの生産拠点と位置づけています。
メキシコは、現地の賃金が安いことに加え、NAFTA=北米自由貿易協定によってアメリカに関税ゼロで輸出することができるからです。

メキシコに工場を持つ日本の大手メーカーのうち、トヨタはメキシコで生産した車の91%、ホンダは54%、日産自動車は43%、マツダは29%をそれぞれアメリカ向けに輸出しています。

生産は年々増えていて、大型バスとトラックを除いたメキシコでの生産台数は、2010年には61万台だったのが2015年には131万台を超え、日本メーカーにとっては日本、アメリカ、中国、インド、タイに次いで、世界で6番目に大きな一大生産拠点となっています。
            

Q:なぜトヨタに矛先が

トランプ氏の主張の背景には、アメリカの国益を最優先に掲げる「アメリカ第一主義」があります。トランプ氏は、NAFTAについて「アメリカから雇用を奪っている」として協定の見直しを主張。アメリカの企業が国外に移転した工場から輸入する製品に35%の関税をかけると警告しています。

もともとトランプ氏の批判は、アメリカの企業に向いていました。GM=ゼネラルモーターズやフォードに対して、輸入に関税がかからないメキシコで生産する動きを批判。このうちフォードは今月3日、現地の新工場建設の撤回を発表しました。

こうした中、トヨタの豊田章男社長は5日、東京で「工場建設をひとたび決めた以上は、雇用と地域への責任がある」と述べ、現時点で計画を見直す予定はないという考えを示しました。

すると同じ日、トランプ氏は「トヨタ自動車が、アメリカ向けのカローラを生産するためメキシコに新しい工場を作ると言った。とんでもないことだ。アメリカ国内に工場を作らないのならば、高い関税を払うべきだ」とツイッターに書き込んだのです。ついに日本メーカーに批判の矛先が向いた形です。

Q:日本メーカーはどうする

今回のトランプ氏の書き込みに対しトヨタは、「メキシコの工場はアメリカから移転するものではなく、新たに作るものであって、現在のアメリカ国内の生産の規模や雇用が減ることはない。トヨタ自動車は、アメリカに10の工場と13万6000人の従業員を抱えていて、トランプ新政権と協力していくことを楽しみにしている」とコメントしました。
豊田社長は来週、アメリカのデトロイトで開かれるモーターショーに出席し、この中で、メキシコ工場の建設計画について理解を求めるメッセージを発信するなどの対応を検討しています。

マツダの小飼雅道社長は「メキシコからアメリカやヨーロッパなどに供給する戦略に変わりはない」と述べ、引き続きメキシコの工場を重要な戦略拠点として位置づけていく考えを明らかにしています。

ただ、政権発足後にトランプ氏が、NAFTAの見直しなどに踏み切ることになれば、トヨタだけでなく日本の自動車メーカー全体の海外戦略に影響が及ぶことになります。
アメリカのラスベガスで開かれている家電ショーで記者会見した日産自動車のカルロス・ゴーン社長は、ノーコメントだとしたうえで、「大統領に就任する1月20日からどんな新しい政策が出てくるかを注視している。もしNAFTAが変わるのであればわれわれは新しいルールに適応する」と述べました。

Q:NAFTA見直しはどうなる?

アメリカが、NAFTAの加盟国に対し撤廃している自動車の関税を引き上げようとしても一方的にはできません。まず、メキシコ、カナダと協議して協定を見直す必要があります。協議が行われたとしても、メキシコ側が対抗しようと、例えば、アメリカから大量に輸入している穀物や牛肉などの農産物に高い関税をかけると主張する可能性もあり、協議は難航することが予想されます。

一方、NAFTAから脱退することはアメリカだけの判断で可能です。しかし、NAFTAから脱退したあともアメリカが各国から輸入する自動車にかけられる関税は2.5%にとどまります。

アメリカがWTO=世界貿易機関に加盟しているからで、これを超える関税をかけた場合は関係国からWTOに提訴される可能性があります。トランプ氏が自動車に35%の関税をかけるという主張を実現しようとすると、WTOからも脱退する必要があるのです。

アメリカがWTOから脱退すれば各国がアメリカ産の製品に高い関税をかけることも可能になるため、政府関係者の間では「現実的な選択肢ではない」という声も上がっています。