野党は「米国がこの国にいるのは米国が必要だからそうしている」と考える。しかし米国は実は韓米同盟など望んでいない。米国はあのつらい6・25戦争(朝鮮戦争)の影響からもう抜け出したいと思っている。米国はあの戦争がいつ再発するか分からないと考えており、それが現実となって再び巻き込まれることに嫌気が差しているのだ。しかも日本やオーストラリアのように韓国は何があっても守るべき価値のある国でもないため、拘束力のある防衛条約の締結を米国自ら考えたことはない。このような現実を韓国の李承晩(イ・スンマン)大統領が時には気が狂ったように、あるいは強情な態度で、あるいはびっくりするような事件を起こすことで変えてしまった。韓米同盟に乗り気でない米国を李承晩大統領が無理やり引き込み、判を押させたのだ。
米国の外交政策は韓国政府の政策に一喜一憂することも、また影響を受けることもない。韓米同盟がこれまで存続できたのは米国にとって利益があるからではなく、いわゆる価値同盟だったからだ。韓国が発展すれば、それは米国にとって自分たちの外交政策が正しかったことの証明になり、あるいは戦争で血を流したことへの見返りにもなる。つまり米国の支援を受け自由民主主義国として発展に成功した韓国との同盟は、単に利益があるから締結したというものではないのだ。しかし米国の次の大統領はトランプ氏だ。彼は全てを取引や交渉、あるいは利益になるかどうかで判断する。
トランプ氏が大統領に就任した後も韓米同盟がこれまで通り存続するか、あるいは危機的状況となるかは今はまだ分からない。しかしはっきりしていることは、彼が「価値」ではなく「利益」を重視する人物であり、そのため韓米同盟は今後「空気」や「水」のようなものではなくなるということだ。空気が「あって当然」でなくなれば、周りの全ての環境が変わってくるだろう。その状況に耐えられる実力や覚悟、あるいは戦略があればよいが、もしないのならわれわれは自重しなければならない。