空気はこの地球上のどこにでも存在している。そのため普段は空気の存在を意識することはあまりない。しかしそれがなくなると人間は生きていくことはできない。世界で最も危険な休戦ラインからわずか60キロしか離れていないソウルの光化門広場において、いきなり砲弾が撃ち込まれるようなことを全く心配もせず、デモによって大統領を弾劾訴追できるのは、安全を保障してくれる韓米同盟があるからだ。われわれはそれを空気のように、あるいは水のように「あって当然」と考えているが、その水や空気に感謝する人はあまりいない。
今野党は米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備について再検討を主張している。「中国の利益に反するから」というのがその理由だ。THAADは韓米両国の軍事施設はもちろん、有事の際に米国の増援部隊がやって来る港湾などを守るためのものだ。われわれが同盟国の米国ではなく、中国をより重視するとなれば、米国はこの国をどう考えるだろうか。そのことを想像するのはさほど難しいことではない。
野党は「政権を握ったら開城工業団地も即時再稼働する」と主張している。これは北朝鮮に対する制裁にわれわれ自ら穴を開けることを意味するもので、米国との合意を完全に覆すものだ。政権を取れば米国よりも北朝鮮を先に訪問するという声も聞こえてくる。要するに彼らの外交・安全保障政策は韓米同盟に反対し、これを危うくすることでしかないのだ。彼らは韓米同盟があるおかげでこの国の安全保障について何ら心配せず、キャンドル集会に便乗できているのだが、ところがその彼らが先頭に立って韓米同盟を危険にさらす発言や行動をしている。自分が立っているこの地を自分で崩壊させようとしているのだ。彼らは勇敢なのか、それとも愚かなのだろうか。
われわれは韓米同盟が永遠に存在するものと思い込んでいる。われわれが何を主張し、あるいは何が起こっても「それはある」と考えている。国際関係を自らの観点でしか考えられない習慣は、自分たちを自分の血を流して守ったことのない国ではよくあることだ。