中国で活動する外国企業の事業環境は厳しく、ごく普通の、あるいは、気楽な時間を過ごすこともできない。しかし、中国で取引する韓国企業の置かれた状況は突然、一層、困難になった。韓国企業は中国でビジネスを続ける条件として、自国政府の安全保障政策を変える任務を負わされたようだ。
これが、先週、韓国企業を訪問した中国の陳海・外務省アジア局副局長が与えた印象だ。フィナンシャル・タイムズ紙が伝えたとおり、陳氏は韓国企業に対し、北朝鮮の核・ミサイルをけん制する地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を在韓米軍が導入した場合、中国での商業活動は苦しくなるだろうと警告した。
たとえ、この脅迫の効果があったとしても、このままこの路線を進めば、中国は自国経済と地域の安定を損なうだろう。ドナルド・トランプ氏の米大統領就任を間近に控え、これ以上国際貿易が政治問題化することを世界は最も望まない。
経済政策と戦略目標を一体にすることは、とりわけ中国に関しては、目新しくはない。中国政府関係者は数十年間、発展途上国各国に対し、そうした国々が国連の場で台湾の承認を取り消すことと引き換えに、インフラ建設の支援を行ってきた。一方、米国は、政治的な同盟国との貿易を徐々に拡大してきた。
だが、外国政府に圧力をかけるために、対象国の企業を直接脅すやり方はひときわ衝撃的に見える。これは経済制裁を科すこととほぼ等しい行為だ。THAADが関わる今回の場合などはまさにそうだ。中国政府はTHAADについて、中国の核抑止能力への脅威であり、米国による中国内の秘密情報入手を可能にするものだとして、強い懸念を示している。だが、それは韓国企業の活動とは、ほぼ全くといえるほど関係がない。
正式に決定された(韓国の)政策を別の切り口から間接的に覆そうとするこの中国の試みの効果は不明だ。影響力を持つ韓国企業もあろうが、政府そのものではない。何を目的にどんな手段を用いるかにより、この行為は、国際商取引を定める法違反にあたる可能性がある。だが、そうなった場合、韓国は毅然と、法的是正策を求めることで、政治的な議論を高めるだろう。