大手仲介会社による囲い込みを無くす取り組みが本格化

kakoikomitoiukaori

国土交通省は今年2016年1月より、東日本不動産流通機構、中部圏不動産流通機構、近畿圏不動産流通機構、西日本不動産流通機構が運営しているレインズで囲い込みを無くすべく取引状況の登録、売主がレインズの登録状況を確認できる「売却依頼主専用確認画面」の導入を開始しました。
レインズは不動産業者間で日本全国の売り物件のほとんどが閲覧できるサイトで、不動産会社1社とのみ契約をした場合(専任媒介契約・専属専任媒介契約)には登録することが法律で定められています。
これにより業者はレインズで現在の取引状況を確認することができ、売主も自分の売却希望不動産が現在どのように登録されているかを確認できるようになりました。

 

 

このような機能が導入された裏には、悪質な「囲い込み」を無くすという目的があります。

ここで、「囲い込み」とは何かを説明します。
不動産を売買する場合、買主、売主、不動産会社が1~2社がかかわる事になります。
もちろん売主は不動産を売却する人物、買主は不動産を購入する人物、不動産会社はその売買を仲介する会社ですが、不動産会社1~2社に疑問を感じた方もいると思います。
不動産会社が1社の時は売主から依頼を受けた不動産会社①が買主を見つけ契約をする場合をいい、これを両手仲介といいます。
このとき不動産会社①は売主、買主双方から手数料を受け取ることができます。
これに対して不動産会社が2社の時は売主から依頼を受け不動産会社①が登録をしたレインズの情報を見た不動産会社②が買主を見つけ契約を行った場合をいい、これを片手仲介といいます。
この場合不動産会社①は売主から、不動産会社②は買主から手数料を受け取ります。
このとき受け取れる手数料は買主、売主からそれぞれ3%となります。
このように両手媒介は片手媒介の手数料である3%の2倍である6%の手数料収入になる為不動産会社は両手媒介を目指して売主から依頼を受け、買主を探し出そうとします。
この両手媒介自体は努力をして買主を探し出した不動産仲介会社①の当然の権利であり、なんら違法性はありませんが、この両手媒介狙い行われる悪質な手段が「囲い込み」です。
囲い込みはレインズの登録を閲覧し問い合わせてきた業者に対して「既に契約進行中である」と虚偽の報告をして、自社のみで買主を探す行為をいいます。
レインズの登録が法律で義務付けられているのは売却希望物件の情報を全国の不動産会社と共有し「早く」「適正な価格」で売却する為なのですが、囲い込みが行われてしまうと他の業者がもって来る買主との契約のチャンスが失われ、その為に時間が掛かってしまうことで売値を下げてしまい、適正な価格での売買ができなくなってしまいます。
これで一番利益を得るのは囲い込みをして両手仲介を行う「不動産会社」で、一番被害を受けるのは不動産会社でも買主でもなく「売主」です。

ここまで読んで
「このような悪質な行動をするのは儲けが少しでも欲しい小さい業者でしょ?」
「私はCMで観るような大手不動産会社に依頼しているから大丈夫」
と思う方もいるかもしれません。

そのような方も、そうは思っていない方にも驚愕の情報が流出しました。
それはこの囲い込みによる不正行為の実態です。
この情報は調査主が物件をピックアップし、「業者」と「一般客」の両方として調査対象企業に物件の空き情報を確認したものです。
この時に
調査主(業者装い):レインズを見ているのですが、A(物件名)はございますか?
調査対象企業:申し訳ありません。Aは先日申し込みが入っております
その後
調査主(買主装い):HPを見ているのですが、Aはまだ募集していますか?
調査対象企業:Aはまだ募集しております。内覧可能ですがいかがいたしますか?
となった場合は囲い込みという事になります。

この調査結果がこちらになります。

 

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この調査では476件中上記に記したやり取りが起こった、つまり囲い込みをされている可能性が非常に高い物件は50件あり、それら全てが大手企業のものでした。

中でも群を抜いているのが三井不動産リアルティ(三井のリハウス)であり、1/5以上の対象物件が囲い込みとなっていました。

このデータの信憑性を上げているのが主要各社の平均手数料率を表にしたこちらのデータです。

 

主要各社の平均手数料率(2013年度)
社名 取扱件数 平均手数料率(%)
三井不動産リアルティ 42,550 5.32%
住友不動産販売 35,455 5.33%
東急リバブル 19,435 4.39%
野村不動産グループ 7,437 3.64%
三井住友トラスト不動産 7,043 3.69%
大京グループ 6,840 4.87%
三菱UFJ不動産販売 5,949 3.40%
大成有楽不動産販売グループ 4,269 4.39%
みずほ信不動産販売 4,062 4.08%
住友林業ホームサービス 4,007 4.50%

 

こちらをみると囲い込みをしていたとされる企業の内2社が5.3%を超えています。

この平均手数料率5.3%という数字は、仲介の90%近くが両手仲介であることを示しています。

このような囲い込みの実態から、自民党は「中古住宅市場活性化に向けた提言-中古市場に流通革命を-」という提言を取りまとめに「「囲い込み」の解消に向けたレインズルールの抜本的改善」と盛り込み、今年1月よりレインズに取引状況の登録、売却依頼主専用確認画面を導入しました。
とはいえ政府が取り組みをしていたとしても、売主側が囲い込みをする業者に遭わない為の行動をおろそかにする事はできません。
その為のひとつの手段として、不動産一括査定サイトで複数の不動産会社にまとめて依頼する方法があります。
このようなサイトに登録されている店舗は実績を積んでいる事と、囲い込みの物件の特徴として、相場よりも高く設定されているというものがあるので、複数の査定価格からその物件の相場を算出し、その相場よりも高額に設定されすぎている不動産会社は警戒するということもできます。(囲い込み被害を受けない保証ではありません)
(参考記事:①住宅新報第3447号第1部第2部 ②週刊ダイヤモンド「大手不動産が不正行為か流出する“爆弾データ”の衝撃」)

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