左の写真:公開討論会(参加者は下記スケジュール参照)
右の写真:分科会(内坂庸夫氏、渡邊千春氏、鏑木毅氏)
-----スケジュール(ここから)-----
10時30分〜11時 挨拶・スピーチ
挨拶 山西哲郎(日本トレイルランナーズ協会 代表理事)
スピーチ
1)石川弘樹<日本のトレイルランニングの歩み>
2)鏑木毅<日本のトレイルランニングの現状と課題>
11時〜12時15分 公開討論会
日本トレイルランニングのめざす道〈どうして組織が必要なのか>
鏑木 毅(日本トレイルランナーズ協会 副代表理事)
石川弘樹(日本トレイルランナーズ協会 副代表理事)
杉本憲昭(日本トレイルランニング会議 会長)
宮地由文(日本トレイルランニング会議 理事長)
松本 大(日本スカイランニング協会 代表)
12時15分〜13時30分 昼休み
13時30分〜15時 テーマ別意見交換会
A)<大会のルールって何だろう?>大会ガイドライン委員会
B)<魅力とリスクは紙一重>安全マナー委員会
C)<トレランは地域活性化に役立つのか?>地域コミュニケーション委員会
D)<トレラン報道のための基礎知識>広報・イメージアップ委員会
15時10分〜16時40分 全体会
テーマ別意見交換会報告
大会総括/山西哲郎
-----スケジュール(ここまで)-----
<スピーチと公開討論会>
スピーチでは石川氏がトレイルランニングが発展してきた歴史をまとめたのに対し、鏑木氏は、山のルールを知らないランナーが増えたことや、必要な地域への手続きを踏んでいない大会が増えてきていることをかなり深刻に指摘。ポジティブ現象とネガティブ現象をセットにした感じでした。鏑木氏は行政・自然愛好団体・トレイルランナーへの統一窓口の設立が必要であることを力説していました。
公開討論会は実際は各自の意見表明の時間が長く(全員の分が終わったのが12時過ぎ)、討論というほどではない意見交換がそのあと30分続きました。論点は各自が違っていて、たとえば宮地氏は文部科学省−スポーツ庁−日本体育協会の傘下にトレイルランニング団体を位置づけることを目指し、「山を走る権利をどう守るか」という問題提起をしていました。松本氏はスカイランニングに関しては国際的な組織ががっちりとできあがっているので個人で大会に参戦しようとしてもらちがあかないこと、「スカイランニング」ということばの一人歩きを避けるためには組織が必要で、ゆくゆくはオリンピックを目指したいことを話していました。
多少は討論らしくなったのは、松本氏が「トレイルランニングの定義は何」「トレイルランニングの目指す未来は何」という質問を発してからでした。これに対しては、進行役の三浦努氏が「日本トレイルランナーズ協会のなかでも定義を出したことががない」と爆弾告発をしたうえで、石川氏が「トレイル(未舗装路)であればトレイルランニング」、鏑木氏が「コースの70%以上がトレイルであるべき」、宮地氏が「(ロードでの運動と違い)筋肉収縮運動があるのがトレイルラン」と様々な説を展開。話はこんなに単純ではなかったですが、まさかこのテーマから話が始まるとは。
杉本氏が「小異を捨てて大同につくべきだ」と言われたのはもちろんそのとおりです。しかし、「日本体育協会に加入してオリンピックを目指す」という話がそこに続いたことを考えると、これは大同の部分なのかどうかは疑問です。なんだかみんなで仲良くやろうみたいな雰囲気になり、最後はパネラー全員で握手して終わりました。
宮地氏は日本山岳協会の責任ある立場でもあるのだから、クライマーないしはハイカーとランナー問題については両方の立場に立ったきちんとした見解を出すべきです。ところが、彼はハイカーをこきおろしているのだから始末に追えないです(下記の私のblog参照)。
http://blog.livedoor.jp/sirapyon/archives/52065336.html
鏑木氏に関しては宮地氏の日本山岳協会の方針について雑誌で異を唱えていました(下記の私のblog参照)。この批判の内容は本日の討論会ではまったく出ませんでしたが、これの解決を抜きにしてみんなでがんばろうでは討論の意味がありません。
http://blog.livedoor.jp/sirapyon/archives/52116759.html
公開討論会が終わった時点で、各自質問や意見を書いて事務局に提出して昼休みです。私は日本トレイルランナーズ協会(JTRA)の他に日本トレイルランニング協会(頭文字は同じJTRA)があること、後者に関しては日本トレイルランニング会議と役員がかぶること、それにもかかわらずまったく言及がなかったことを指摘しました。
<トレラン報道のための基礎知識>
昼休みのあとは分科会となりました。どの分科会でも自由選択で良いとのこと。私は「トレラン報道のための基礎知識」を選びました。これは主としてジャーナリスト向けということで、分科会のなかで一番人数が少なく36人でした(実際にはメディア関係者は10人だったらしいです)。
進行は内坂庸夫氏でしたが、捏造報道によってトレイルランが危機に陥っているという強い口調で討論会は始まりました。主として「噂の!東京マガジン」で成木の森トレイルランがゆがめられて報道されたことを指していたようです。鏑木氏もこの分科会に参加でしたが、「変な報道ひとつでいままできづきあげてきたトレイルランが崩壊してしまうこともある」という意見でした。
私はこのスタート時点で違和感を感じました。報道というのは良くも悪くもある程度の主観がはいったり編集がおこなわれるもので、それを「捏造報道」ということばで言い切ってしまう時点ですべてが終わってしまうと思います。トレイルラン関係の雑誌以外での報道を見渡しても、あからさまなトレイルラン批判報道よりも、純粋に紹介したりそのたいへんさを賞賛したりするものの方が多いと思います。読売新聞や産経新聞はトレイルランにかなり批判的な方ですが、Googleのニュース検索でトレイルランで検索すると、地方版の記事ではご当地トレイルランをほほえましいニュースとしてとりあげていることもあります。
日経記者の伴正春氏(だと思います)がトレイルランニングの団体と連絡をとろうとしてネットで「トレイルラン 協会」で検索すると日本トレイルランニング協会がヒットするが、電話番号の記載がない取材のしようがないと指摘しました。団体が統一されるべきかどうかは別として、これがまずいのは自明なことです。
内坂氏が「トレイルランニングの世界は仲良しクラブで知り合い同士。外に向けて発信ができていないのかもしれない」と最後に言ったのがとても本質的なことで、一番重要なことだったと思います。
<全体会>
スケジュールには記載がありませんでしたが、トレイルラン・ジャーナリストの岩佐幸一氏が登場し、ITRA(国際トレイルランニング協会)の意義について説明をしました。「ITRAはポイントでカネを稼ごうとしている」「うちのレースをUTMB/UTMFのポイント稼ぎのレースにしないでほしい」ということを言う人がいるが、どちらもまちがいで、ITRAがやろうとしていることは倫理憲章・安全・反ドーピングとポイントによるレースの客観化だと熱弁。
あのですね、レースの客観化とかが絶対悪だとは言いません。人によっては自分が出走したレース記録がすべてITRAの記録として検索可能になるのがいいと思う人もいるでしょう。ただ、そのために必要以上のお金と労力を払うのは個々の大会であることが問題なのです。すべての大会の主催者が「自分のレースがITRAに加盟するのはUTMB/UTMFのためではなくITRAの理念に賛同しているからです」と言えれば問題ありませんよ。そうはならないと思いますが。日本の発言力を強めるために、団体・個人どちらでもどんどんITRAに加入してくださいと岩佐氏は言っていました。これを読んだみなさん、いかがですか?
次に公開討論会後の質問や意見などのまとめが最初に発表されました。JTRAという団体がふたつあることは私以外にも何人かの質問があったようです。以下のとおり、最初は歯切れが悪かったです。
石川氏:とてもデリケートな問題です。
三浦氏:日本トレイルランニング協会というのは、現在実質的に活動が停止状態で、団体名を譲ってくれと石川氏が交渉中。あとは石川氏が話す。
石川氏:元々は(鎌倉や三浦半島のトレイルランでいろいろと問題になっている)NPO法人野外活動(自然体験)推進事業団の片山成允氏と日本トレイルランニング会議の杉本氏が始めたもの。三浦半島に関してはレースをすべきではないと進言したが、結局は開催されてしまった。もっと強くアドバイスしておくべきだったと後悔している。団体名に関しては譲ってもらうように杉本氏に交渉中である。
というわけでふたつの「JTRA」の真相があきらかになりました。でもこれ、遅すぎですよね。日本トレイルランナーズ協会が発足した時点で、類似の日本語団体名で英字略号は同じ団体があるのならそのことに言及すべきですし、「トレイルラン報道」もこのことこそ指摘すべきだったのではないでしょうか。三団体(日本トレイルランナーズ協会、日本トレイルランニング会議、日本スカイランニング協会)がちからを合わせるべきだとか、合併すべきだとかいう話をしているなか、実はもうひとつ団体があって、三団体のうちの二団体が絡んでいるとはどういうことなんでしょうかね。
このフォーラムを開いたこと自体は良かったと思います。ただ結局は仲間が集まっただけのシャンシャン総会という印象は否定できません。一回で終わりになるものではないので、次も続けるだけ。公開討論会を開催するのであれば、あらかじめ討論のネタとなる項目を洗い出しておいた方が良いのではないかと思います。
【2016/1/12修正】
文中の氏名の訂正をしました。
修正前:NPO法人野外活動(自然体験)推進事業団の千葉氏(だったかな?)
修正後:NPO法人野外活動(自然体験)推進事業団の片山成允氏
申し込んでましたが急遽別予定で行けなかったので参考になりました。
私も報道の分科会に出るつもりでした。報道が悪い、我々が正しい報道の仕方を教えてあげるという書きっぷりに何様のつもりだろうと思いつつ、本当にそういう内容だったようで。まあ、直前に送られてきた最終案内のメールも、社会人としてのメールの書き方のマナーというものを知ってるのかな、という文章でした。
事務局の誰が担当したのかは知りませんが、こういう文章を平然と書ける