いいものと出会う第六感
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日本では何かと規制があって、ウーバーのサービスが片肺飛行のようなかたちでしか実現できていない。新しいサービスを伸ばそうとするアメリカとやたらと排除しようとする日本との違いが、それぞれの経済発展の差を生んだという説がある。それはそれで正しいのだろうが、もう1つの違いに気づかされた。それはアメリカという国の方が、住んでみると圧倒的に不便だということだ。
ニューヨークでビジネスをしていると、とにかくタクシーを捕まえないと取引先まで行くことができない(なにしろ地下鉄は主に南北にしか走っていないので、東西方向には移動が難しい)。ところがタクシーの台数は太平洋戦争前とほとんど変わっていない(これも事実)ので、とにかく忙しい時期・忙しい時間帯のニューヨークではタクシーを捕まえることが難しい。それをニューヨーカーは我慢して暮らしている。
アマゾンだってそうだ。広いアメリカではアマゾンが出現するまでは書籍はそれほど簡単に手に入らないものだった。ベストセラーならともかく、出版部数が少ない本は、ミネアポリスやデンバー、クリーブランドなどの郊外に住んでいると、一度書店で注文して入荷したという連絡を受け、ようやく受け取るまで、ひたすら待たなければならなかった。
だからアマゾンが登場すると、飛躍的にビジネスが伸びた。同じ時期に紀伊國屋書店もインターネット通販を始めたが、日本ではなかなか思ったようにビジネスは伸びなかった。そのお蔭で日本の書店は先行者利益を確保できずに、遅れて参入したアマゾンに市場を奪われてしまった。
同じたとえで言えば、日本のタクシー会社が協力してウーバー並みの配車インフラを先につくってしまえば、ウーバーは日本で成功できないはずだ。しかし、どうもそうしたアイデアが出てこない。理由は、日本のタクシーは街角で手を上げればすぐに捕まえることができるし、書籍も昔は繁華街を歩いて数店をはしごすれば、探している本はだいたい手に入ったからだ。
つまり、日本は住むのに便利な国なのだ。そしてアメリカは今でも、住んでみると非常に不便なままだ。
「必要は発明の母」という諺がある。それと同じで、不便はイノベーションの父である。日本はそれほど不便ではないという事実こそが、日本企業のイノベーションを妨げているのではないか。スタバのアプリの成功からそんなことを感じたのが、今回アメリカでの休暇中に得た教訓の1つだった。