厚労省、遺族らの要望に応えて
厚生労働省は、第二次大戦の戦没者の身元を調べる際、DNA型鑑定に使う遺骨を歯だけから、手足の骨にも広げる方針を固めた。沖縄や東南アジア、南太平洋などの激戦地では歯が残っていない遺骨も多く、遺族らから要望が出ていた。来年度からは鑑定数が増えて戦没者の身元判明が広がる可能性がある。
厚労省によると、沖縄と海外で亡くなった軍人・軍属らは約240万人。このうち127万人分の遺骨が収集されているが、身元が分からず焼却されてしまったものも多い。
遺骨のDNA鑑定は2003年度から始まり、これまで1064人の身元が判明した。ただ、大半が旧ソ連の抑留者で、沖縄や南方地域では12人にとどまる。DNA鑑定の対象を遺留品や埋葬名簿から身元が推定される遺骨に限っている上に、南方地域では戦闘や風雨などで遺骨の傷みが激しく鑑定できる歯がないためだ。15年度に新たに1053人分を収集したが、883人分は歯がないという。
厚労省がこれまで歯だけを鑑定の検体にしていたのは、エナメル質に守られて高い精度でDNAを調べられるからだった。しかし技術の向上で、太く長い骨でもDNA鑑定の精度が上がり、米国と韓国は大腿(だいたい)骨や腕の骨などの「四肢骨」も検体にしている。
このため厚労省は昨夏から米国視察などをして、国内導入に向けた技術面の検討を進めていた。既に歯が採集できなかった55人分の遺骨を焼かずに保管しており、今後専門家の意見も踏まえ、四肢骨で鑑定する方針だ。
菅義偉官房長官は5日の記者会見で「一柱でも遺族に遺骨を返せるように取り組みを加速したい。専門家の意見を参考に(歯以外の鑑定を)検討していきたい」と述べた。【熊谷豪】