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ジム・ロジャース来日! 「トランプ後の世界、EUの瓦解、2017年の世界経済」を語る
Interview by Sachin Chowdhery サチン・チョードリー
1973年、ニューデリー生まれ。日本企業のインド事業開発支援、マーケティング支援、M&Aアドバイザリーを業務とするAVS株式会社代表取締役会長、鳥取県の地域活性化をミッションとする株式会社ITTR代表取締役社長。そのほか、経営コンサルティング会社、IT関連会社など、いくつもの会社を経営。著書『頭で考える前に「やってみた」人が、うまくいく』(フォレスト出版)ほか。公式ページhttp://sachin.jp/
ジム・ロジャース(Jim Rogers 写真右、投資家)
1942年米国生まれ。イェール大学卒業、オックスフォード大学ベリオールカレッジ修了。米陸軍に従事した後、ウォール街で働く。ジョージ・ソロスと国際投資会社クォンタム・ファンドを共同で設立。10年間で3365%という驚異のリターンを実現。37歳で引退して世界を旅して回るかたわら、コロンビア大学で教鞭をとる。現在はシンガポールにて、愛する家族と暮らす。
写真左はサチン・チョードリー
ジョージ・ソロス、ウォーレン・バフェットと並んで世界三大投資家に称されるジム・ロジャース。自身の設立したファンドで3400%ものリターンを記録した伝説的な人物である。そんな彼が、旧知のサチン・チョードリーが新刊『頭で考える前に「やってみた」人が、うまくいく』を上梓した機会に来日。チョードリーのインタビューに答えた。
※インタビューの最後にサイン入り書籍プレゼントのお知らせがあります。
「外国人のせい」にする歴史は繰り返す
──ロジャーズさん、ようこそ日本へ。
ここに来れて嬉しいです、またお会いできてよかったです。
──変わらずお元気で私も嬉しいです。
2016年、世界は「英国のEU離脱」「ドナルド・トランプ氏当選」という2大イベントを経験しました。まずはトランプ氏についてうかがいます。人々はヒラリー氏が米国大統領に当選すると期待していたのではないですか。
何人かはそうでしょうね。
──あなたはどのように予想していましたか?
私は何度もトランプ氏が当選すると説明していました。私も時々は正しいのです。
──ですが、日本でもたくさんの人がヒラリー氏の当選を期待していたので、この結果はとても予想外でした。
私自身、トランプ氏には投票しませんでしたが、勝つことは知っていましたよ。私はさらに別の候補に投票したので、クリントン氏にも投票はしませんでした。でも彼が勝つとわかっていました。
──投票はしなかったが、勝つとわかっていたというのは面白いですね。
ですがこの結果は市場にとっても驚きでした。日経平均は1000円も下がり、あの日は最悪でした。2~3日して持ち直しましたが、日本でもとても大きなニュースになっていましたよ。
世界中で大きなニュースになっていました。同じようなことが多くの市場で起こっていましたからね。下がったところも上がったところもあり、それぞれの国で良くも悪くも影響がありました。
──では英国のEU離脱についてはどうでしょう。やはり多くの人がEU離脱派が勝利するとは思ってもいませんでした。
それも以前に起こると説明しました。私も時々は正しいのです。
──ロシアについての予測も当たっていますよね。
たくさん間違えることもあるので、ご心配なさらず。
──EU離脱に加え、移民問題など、さまざまななことが浮き彫りになりましたね。英国に限らず米国も、国や職を取り戻せ、と叫ぶ声が大きいようです。日本にとっての影響はどうでしょう?
問題が起きると、人々は変化を求め、白馬に乗った男や女に投票します。誰かが「心配するな、救ってあげる」とシンプルな答えを言えば、人々もそれを好むものです。
白馬にのった女性はよく見えるのです。それがいま世界中で起きています。
みんな何かに不満や怒りを感じている一方で、何が欲しいのか、何がしたいのかわからないでいる。そんなときに誰かが出てきて「大丈夫、何とかします」と断言すれば、みんないっせいに集まるのです。
これから、こういった動きをヨーロッパではもっと見ることになるでしょう。その動きは大きくなります。人々は国から離れ、国から離れた人々が動き出します。
そういった意味では、「他者に勇気を与えた」という意味で、EU離脱は成功だったでしょう。
勝ち負けの問題ではないのです。混乱はだいたい経済問題につながります。日本人も心配したほうがいいし、準備をしておいたほうがいい。これから問題はヨーロッパだけでなく、日本も含め世界中で起きてくるでしょうから。
──ヨーロッパでは、次にどの国がEU離脱を考えると思いますか?
全部でしょう。ヨーロッパのほとんどの国が動き出しています。
実際には全部とまではいかないでしょうが、たくさんの国がEUの規定に反発し、離脱を考えたり規定を変えようとすると思います。
ベルギー、オランダ、フランス、イタリア、スペイン、みんな不満を抱えています。もちろん、不満というものは歴史のなかで常に生まれてくるものです。そして、人々はいつもその不満を外国人のせいにする。外国人のせいにするのは簡単ですからね。なにしろ、肌の色も、言語も、食べ物も、身なりも違う。だから彼らのせいにする。
こうしたことは世界中の歴史において繰り返されてきました。なにしろ一番簡単ですから。
実際は、外国人の存在は国にとってプラスになるのです。でも、人々にとってそんなことはどうでもいい。とにかく「彼ら」のせいにするのが簡単なのです。
トランプ政権が米国を良くすることはない
──次はトランプ大統領についてうかがいます。彼はTPPに反対していて、オバマ大統領とは違った視点をたくさん持っています。トランプ氏が大統領になることで日本と米国の関係はどうなると思いますか? 「トランプ経済」について、どのように予測しますか?
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