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【2016現場から(11)】闇に埋もれた〝猟奇〟事件 なぜ犯人特定に7年も? 消えない捜査過程への疑念

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【2016現場から(11)】
闇に埋もれた〝猟奇〟事件 なぜ犯人特定に7年も? 消えない捜査過程への疑念

事故死していた男を書類送検し、記者会見する島根県警の河村英夫刑事部長(左)と広島県警の酒井敏行刑事部長=12月20日午前、島根県警浜田署 事故死していた男を書類送検し、記者会見する島根県警の河村英夫刑事部長(左)と広島県警の酒井敏行刑事部長=12月20日午前、島根県警浜田署

 しかし、矢野容疑者は住宅用ソーラーパネルなどを販売する営業担当の会社員だった。見立てにとらわれるあまり、膨大な情報の中に矢野容疑者が埋もれてしまったのか、と。

 捜査関係者によると、事件が動いたのは今年に入ってから。事件前後の現場周辺での不審車両の走行歴や性犯罪前歴者の洗い出しなどで、夏~秋ごろには矢野容疑者を犯人視する見方が強まったという。だが、その捜査は当初から進めていたはずだ。7年余りも要するものなのか。

 「積み上げた捜査に一切無駄なものはない」「見立てが悪かったとの評価はしていない」。杉原1課長は会見でそう答えるだけで、詳細な説明を避けた。

 犯人性を疑う余地がないレベルにまで高めた地道な捜査を評価しないわけではない。ただ、容疑者死亡で動機や殺害場所は闇に埋もれ、真相に迫れたとは言い難い。その上、捜査過程に疑念を抱かれたままでは、死力を尽くした捜査がくすんでしまう。(矢田幸己)

 【用語解説】島根女子大生殺害

 平成21年10月26日夜、島根県立大1年の平岡都さんが、同県浜田市内のアルバイト先を出た後に行方不明となり、11月6日以降に広島県北広島町の臥竜(がりゅう)山で切断遺体の部位が相次いで見つかった。島根・広島両県警合同捜査本部は延べ31万人の捜査員を投入。今月20日、殺人と死体損壊・遺棄の疑いで、同市と隣接する島根県益田市に当時居住し、遺体発見2日後に交通事故死した会社員、矢野富栄容疑者を書類送検した。

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