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アップル、中国でNYタイムズのアプリ削除
当局要請受け

2017/1/5 23:18
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 【ラスベガス=兼松雄一郎】米アップルが中国で展開するアプリ販売市場「アップストア」から米紙ニューヨーク・タイムズのニュースアプリが削除されたことが分かった。中国のアップストアから昨年末に突如消えていた。同紙はアップルが中国当局から違法だとの指摘を受け削除に応じたと明らかにするとともに、元に戻すようアップルに求めた。

 中国政府は昨春からアプリを含むネット上のコンテンツへの規制を強化しており、今回の措置もその一環とみられる。国家の安全を脅かしたり社会の秩序を乱したりするコンテンツは違法とされ、販売が差し止められることが多い。

 アップルは昨年4月から、コンテンツのネット販売市場「iTunes」の中国向けサービスにおいて、映画と書籍の販売を差し止められている。

 今回はアップルに対してというより、中国政府から敵視されているニューヨーク・タイムズが狙い撃ちされた可能性が高い。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)や米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのアプリは依然ダウンロードが可能な状態にある。

 ニューヨーク・タイムズは2012年「庶民の味方」のイメージがあった当時の温家宝首相一族の巨額蓄財を報じた。その後は中国本土からの同紙ウェブサイトの閲覧を遮断されている。中国政府は同紙の駐在記者に対し記者向け査証(ビザ)更新をさせないようにした。同紙は報道の後、中国政府が背後にいるとみられるサイバー攻撃を受けたと主張している。

 同紙は対抗策として中国語版のアプリの配信を始めていた。アプリを使えば、接続した場所の情報を隠す特殊なソフトを使わなくても閲覧ができる状態だった。規制当局からみれば、アプリは抜け道の一つになっていた。

 IT(情報技術)産業を厳しく規制する中国では、特にネットに関わる海外企業は検閲への一定の協力なしには事業はできない。企業にとっては現地で違法とされたコンテンツの削除を拒むのは不可能に近い。利用者の利益や企業哲学と対立する検閲への協力にどこまで応じるか、多くの企業はぎりぎりの線を探りながら難しい決断を迫られている。

 米国IT企業と中国との関係を巡っては、グーグルが10年に中国本土の検索サービスから撤退している。プライバシー保護やリベラルな価値観を企業哲学とするアップルにとっても大きな危険をはらんでいる。

 ただ中国はアップルの地域別売上高の約2割を占める重要拠点。ティム・クック最高経営責任者(CEO)は頻繁に訪中し要人と会談をこなしてきた。中国に初の開発拠点を設け、ベンチャーにも投資するなど配慮をみせている。

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