Seagateの新ブランド、IronWolf。NAS向けの高い品質もさることながら、10TBモデルで実売約5万円というコストパフォーマンスの高さも特徴の1つだ。1基で10TBということは2ベイNASでは最大20テラ、4ベイでは最大40テラ、RAID 1で冗長化しても20テラ、RAID 5なら30テラという大容量が1ボリュームで実現できる。
これだけの容量があればデータの持ち方、あり方も変わってくるはず。今回は大容量ならではの、生産性の高いストレージ活用方法を考えてみた。
一時期、断捨離という言葉が流行したことがある。日本の伝統的な「もったいない」という考え方に固執しすぎると、モノを捨てられなくなり、自分の生活空間と大量のモノを扱うための労力・気力・時間が奪われてしまう。そこで、入ってくる不要なものを「断」ち、不要なものを「捨」て、モノへの執着から「離」れることで快適な生活を取り戻そうという考えが、この2010年の流行語にもなった「断捨離」だ。
もちろん、それは素晴らしい考え方ではあるのだが、ことデジタルデータに関してはそうとばかりは言い切れない。生活基盤の大きな変化がなければ変わることのない生活空間と異なり、容量密度の増加、容量単価の下落によってストレージ空間はますます広がっている。大量のデータを扱う労力・気力・時間にしても大容量ストレージによって解決できる部分がある。
例えば、データの要・不要の判断を下すとき。容量に余裕があれば「とりあえず取っておく」こともできるし、さらには判断すらせず、すべて保存しておく、ということも可能になる。そして、大量のデータが自動的に分類され、キーワードタグや日付、文字列などで検索可能になっていれば、データの整理に費やす気力も時間も不要だ。
脱・断捨離デジタル生活の基本的な考え方は以下の3つだ。
あるファイルを保存するかどうか、という判断は意外と面倒なものだ。取っておくに越したことはない、と思いつつも、容量の無駄遣いにならないだろうか、今後使うことがあるのだろうか、とためらってしまうのではないだろうか。
ストレージ容量が潤沢にあれば迷う必要はない。とりあえず取っておけばよいのだ。二度と使わない情報であってもかまわない。すでに残りの人生すべて費やしても視聴しきれないビデオや円盤を抱えている人は当たり前のようにいる時代。保有している情報はすべて使うためのものではなく、使う選択肢を与えるためのものであると考えよう。
現在のファイルシステムで一般的な階層型のフォルダ(ディレクトリ)構造は、1969年のMulticsの時代から使われているものであり、データの分類方法としてはいささか古い考えとなりつつある。数万以上のファイルを個人で所有することが珍しくない今となっては、保存場所やファイル名を覚えておく、ということも難しくなってきた。
また、分類の方法も1つではない。写真を例にすると撮影日時やイベント、写っている人、グループ、場所という分類が考えられる。このころ何をやっていたのか知りたいときには撮影日時での分類が便利だし、あるイベントの写真を仲間内で共有したいときはイベントや写っている人・グループでまとめてしまいたいだろう。
整理・閲覧用のアプリケーションを使って、ファイルの場所・名前を意識せずにコンテンツの意味・情報を元に管理しよう。
スマートフォンでの写真・動画撮影、PCでのドキュメント作成、スキャナによる自炊など、デジタルデータの作成元は1つではない。そのような場合にも同じ場所にデータを保存することで「すべてここにある」という状態を作ることが大事だ。
例えば、お金を財布やバッグ、ポケット、雑誌の間など、いろんなところに入れていたら、いざ支払いのときにあたふたとあちこちをひっくり返して探すことになる。一万円札の挟まった雑誌を捨てるようなことにならないよう、デジタルデータも1つの場所に集めておこう。デジタルデータであれば保存する場所は1つでも、それをさまざまなデバイスで、いろんな場所から使うことが可能だ。
さて、ここでは10TBのIronWolfを4台と、Synologyの4ベイNASを組み合わせて40TBの大容量ストレージを構築し、上に挙げた富豪的データ整理術を実践していく。
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