前回修理方法を紹介したDENON DRR-M10EとKENWOOD X-7PROだが、ある理由があって普段使いはDRR-M10Eになって、X-7PROは予備機となった。
それは、KENWOOD X-7PROのオートリバースのモード選択が、ワンウェイとエンドレスの2つしかなく、リターンして停止するモードがなかったからだ。
BGMとして音楽を流すにしても延々エンドレスで回しっぱなしにするのでなく、ちゃんと区切りをつけて終わってくれないと、時間の経過を忘れてしまい気持ちが悪いのである。
45分なり60分なりで区切りをつけないと、ダラダラと無駄に時間を浪費しがちな生活になりやすい。
そんなわけで、リターンして停止するモードがあるDENON DRR-M10Eを常用機として採用したが、困ったことに音質がいまいちだった。
音質についてはKENWOOD X-7PROの方が締りがあって解像度の高い感じだったが、DENON DRR-M10Eの方はモッサリとした音質だった。よく言えばファットな音質だが、もこもこするばかりで、細かな音が聞こえてこない。
使い勝手の面でDRR-M10を選んだものの、これは嬉しくない。
実は試聴以前に、修理する時点でX-7PROの方が作りが良いと感じるところがあった。
これはX-7PROのボンネットカバーの内側だが、鉄板で出来たカバーの上に何か四角い板の様なものが貼られている。
材質は不明だが、これが防振材として効いていて、カバーを叩くと鈍い音がする。
普通、ただの鉄板のカバーは叩くと、ガンガン高い音で響くが、その響きが抑えられているのだ。
オーディオ的には、安っぽく響く付帯振動は音を悪くすると信じられていて、それゆえオーディオマニアは、単なる電気回路の設計の良し悪しにとどまらず、重くしっかりした作りの、コストのかかった筐体で出来た高級オーディオに大金を投じるのである。
同じくX-7PROの回路基板だが、左端をシャシーの切れ込みで固定して、二枚の基板の上にウレタンスポンジの様な物を貼り付けて橋渡しにしている。
後でDRR-M10の写真も貼るが、そちらの回路基板にはそのような配慮はなくブラブラの状態だ。回路基板と物理的な振動は無関係と考えるのが普通の人だが、回路自体の振動も電子部品の定数に変化を与える*1要素と考え、出来るだけ避ける配慮をするのがオーディオだ。
一つ一つの部品に生じる変化は極小で、それらを人間の感覚でとらえるのは無理だから影響ないと考えるのが普通の人だが、オーディオではそれらを加算あるいは乗算と考え、最終的には影響が現れる物と見なすのである。
また基板の横のシャシーだが、赤く見えているのはテーブルの色が写っているのではなく、銅メッキされているためだ。理由はあまり分からないが、高級オーディオで良く用いられる手法である。自分の経験でも、鉄板の上に薄い銅板を被せたら音質が良くなったことがあるので、効果があるのだろう。オーディオでよく言われるのは、磁性体を回路に近づけるのは良くないというが、メッキでは磁石が付いてしまうので別の効果と思われる。
これらをオカルトと考えて笑うのは勝手だが、実際KENWOOD X-7PROの方が高音質と感じるのだから仕方がない。
前置きが長くなってしまったが、音質をせめてX-7PROと同等と感じられるようにするため、DENON DRR-M10Eに手を施す。
ボンネットカバーの内側に防振材の一種であるブチルテープを貼る。茶色いガムテープのように見えるが、両面テープでべた付くので剥離紙の半分は残したままにする。
ブチルテープは、音響用の防振材としてポピュラーな材料で、一巻持っていると重宝する。こうした防振材で振動対策をすることを、デッドニングという。
貼り方は適当だが、固有の周波数で振動しないように左右非対称にするとか、一応ノウハウもあるが適当だ。カバーをたたいて、ある程度音が静かになればOKである。
シャシー側にもブチルテープを貼っている。見えていないが、黒いメカデッキの下にも貼ってある。
縦になってT字型にクロスした基板の上にもブチルテープを貼っている。これは種類の違うテープで片面が布になっている。
貼り方としては徹底していなくて手ぬるいが、究極を目指すわけでなく、あくまでX-7PROと同等で良いので適当である。
デッドニングはこれ位にして、回路にも手を加える。
といっても、半田ゴテで部品を変えるような本格的なものではなくて、お手軽だ。
一部の部品の頭に銅箔テープを被せるだけだ。
写真左側のコンデンサーとオペアンプの上に銅箔テープが貼られている。右側に写っている部品は手付かずだ。
この処理を施すと解像度が上がったように感じられる。つまり、音が締まってクッキリするのだ。
これも全部に貼るわけにもいかず適当だが、注意点がある。
部品番号が基板に印刷されているので、よく見るとC104LとかC104Rなどと書かれている。末尾がLとかRとかになっている場合は、同じ番号のLとR両方に銅箔を貼る。そうでないと、ステレオの右と左の音質が違ってきてしまう。信号ラインの部品は組になっているという事だ。電源ライン用の部品は一つなので単独で良い。
また、当然だが剝がれてしまうとショートの危険があるので、しっかり押し付ける。
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銅箔テープも応用範囲が広く使える便利な材料だ。
側面の基板の裏側にある、機能制御用のマイコンと思われるLSIと、オペアンプにも銅箔テープを貼る。
シャシーにもメッキの代わりに銅箔テープを貼ってもよいが、そこまではやらない。
なぜなら、そこまでしなくてもKENWOOD X-7PROと同等の音質になったからだ。
というわけで、いまいちハッキリしないモッサリしたサウンドのオーディオ機器に、以上の様な改造を加えるのは、音質チューニングとして有効である。
なお以下の記事も音質チューニングとして参考にして欲しい。
とかく、オーディオというとすぐにオカルトと言い出す人がいるが、彼らは何も手を動かしていない。高級オーディオのように何万円も分捕ろうという考えはないのだが。
単に貼るだけだから、剥がせば元通りにもなる。
新品に手を加えるのは勇気がいるが、何年も経っているならやらない理由はないと思う。
また、十万円以上の高級オーディオでは少々いじっても案外変化を感じられないものである。十万と百万の違いはほんの僅かで、本当に違いを感じられる人はベテランでも少ないという。そのような事実がオカルト伝説になっているともいえるだろう。
しかし、せいぜい数万円の安物オーディオはコストをケチるために未完成の部分が多く、わずかな改造が大きな効果をもたらす事が多いのである。
多少でも興味があるなら、手を動かすことをお勧めする。
*1:例えばコイルはただの導線を巻いただけだが、巻き線の間隔が変わると容量が変化する。またコンデンサも対向する電極板に絶縁物を挟んだだけの部品だが、電極の間隔が容量に影響する。機械振動はそれらの間隔に変化をもたらす不安定要素と見なすことができる