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量子コンピューター実現に不可欠な技術開発 東大

量子コンピューター実現に不可欠な技術開発 東大
現代のスーパーコンピューターでは何千年もかかると言われる極めて複雑な計算を、わずか数時間で解くという、夢の超高速コンピューター「量子コンピューター」の実現に向けて、東京大学のグループが世界的に注目されている「量子テレポーテーション」と呼ばれる現象をめぐり、重要な成果を得たことがわかりました。超高速コンピューターの実現に欠かせない、情報の瞬間移動を無制限に繰り返せるようにする新たな技術の開発の成功で、グループではことしから大規模な計算を精度高く行うための研究を本格化させることにしています。
量子コンピューターの実現に向けて重要な技術の開発に成功したのは、東京大学の古澤明教授のグループです。

量子とは、物質のもとになる原子や光子などのことで、古澤教授はカリフォルニア工科大学の客員研究員だった1998年に、離れている二つの量子の間で情報を瞬時に伝える量子テレポーテーションと呼ばれる現象を起こすことに世界で初めて成功し、注目を集めました。

この量子テレポーテーションについて、古澤教授のグループが実験装置の一部に特殊な工夫を加えることで、情報を瞬時に伝え合う関係にある量子を、無制限に作り出す技術の開発に新たに成功したことがわかりました。

これまで量子テレポーテーションをめぐっては、情報を瞬時に伝え合う関係にある量子を連続して作り出せる数に限度があることが課題になっていましたが、今回の重要な成果によって、量子コンピューターの実現に向けた大きな壁の一つが取り払われたことになります。

例えば、100億とおりの組み合わせがある問題を解く場合、現代のコンピューターは少なくとも100億回の計算を繰り返す必要がありますが、量子テレポーテーションの技術を使えば、同時並行で100億とおりの計算を行える可能性があるということです。

グループでは実験に成功した新たな技術を使って、ことしから大規模な計算を精度高く行うための研究を本格化させることにしています。

古澤教授は「将来の量子コンピューターの基盤となる技術に、めどをつけることができたと言えるくらいの大きなブレークスルーだと手応えを感じている。まだまだ乗り越える壁は多いが、20年後には実用化できるよう、さらに研究を推し進めていきたい」と話しています。

量子テレポーテーション応用の道開ける

離れた量子と量子の間で情報を瞬時に伝える量子テレポーテーションは、量子どうしが、兄弟のような関係にある場合に人工的に起こせる現象です。

一つの量子を特殊な装置で複数に分けた場合、量子どうしが離れていても、お互いに影響し合う兄弟のような不思議な関係が生まれます。

古澤教授が1998年に世界で初めて、この現象を起こしたときには、二つの量子の間で情報を伝えただけでした。その後、兄弟のような関係にある量子を少しずつ、増やすことに成功しましたが、その数は最大でも、およそ1万6000個にとどまり、増やせる量子の数に限度があることが、量子コンピューターへの応用に向けて大きな壁となっていました。

それが今回の研究成果によって、兄弟のような関係にある量子を無制限に作り出すことができるようになり、量子コンピューターへの応用の道が大きく開けることになりました。

量子コンピューター 何に使う?

量子コンピューターは、膨大な組み合わせがある計算を同時並行で素早く解くことができることから、新たな医薬品の開発や、高度な画像診断による病気の早期発見、家庭の電化製品などから集まるビッグデータの活用などに応用できると期待されています。

例えば、新しいがん治療薬を開発する場合、現在は考えられる物質の組み合わせについて、1000兆回の10倍である1京回の、さらに100万倍くらいという天文学的な回数の計算を長い時間をかけて行っていますが、量子コンピューターが実現すれば、こうした計算が短時間でできる可能性があります。

また、体の建康状態を画像診断で調べる場合も、人工知能に量子コンピューターが導入されれば、画像の認識の精度が飛躍的に高まり、病気などの兆候をより早く見つけられるようになる可能性があります。

さらに今後、家庭にある冷蔵庫やエアコン、テレビなどさまざまな電化製品がインターネットにつながる時代になると、膨大に集まるビッグデータを使って、市場予測や一人一人の健康管理などに活用できる可能性があります。

一方で、現在のコンピューターによる暗号が量子コンピューターでは簡単に解けてしまう可能性があり、より複雑な暗号技術の開発も必要になると考えられています。

企業も実用化へ期待

量子コンピューターの実現に向けては、離れている量子と量子の間で情報を瞬時に伝える量子テレポーテーションと呼ばれる現象を、小型の装置の中で実現することが必要で、古澤教授の研究にはNTTが参加し、小型の装置の開発を進めています。

古澤教授による量子テレポーテーションの実験は幅4.2メートル、奥行き1.5メートルの台の上に、鏡やレンズ500枚余り設置した大がかりな装置を使って行われています。

量子コンピューターの実現に向けては、量子テレポーテーションを小型の装置の中で実現することが必要で、古澤教授の研究にNTTが参加し、装置の開発を進めています。

これまでに、NTTでは微細な加工技術によって、実験装置の一部を大きさ2.6センチほどの小さなチップ上に再現し、量子テレポーテーションを単発で発生させることに成功しています。

NTTでは今後、量子テレポーテーションを繰り返すことができる小型の装置の開発に取り組み、量子コンピューターの実現につなげたいとしています。

NTT先端集積デバイス研究所の橋本俊和主幹研究員は「これまで量子テレポーテーションは、その現象を起こせる回数に限度があり、量子コンピューターへの応用に向けて大きな足かせになっていましたが、今回の古澤教授の研究によってその限度がなくなり、量子コンピューターの実現に向けた土台ができたと思っています。私たちが長年培ってきた超小型の半導体を開発する技術の強みを生かし、量子コンピューターの実現に貢献したい」と話しています。

量子コンピューター実現に不可欠な技術開発 東大

量子コンピューター実現に不可欠な技術開発 東大
現代のスーパーコンピューターでは何千年もかかると言われる極めて複雑な計算を、わずか数時間で解くという、夢の超高速コンピューター「量子コンピューター」の実現に向けて、東京大学のグループが世界的に注目されている「量子テレポーテーション」と呼ばれる現象をめぐり、重要な成果を得たことがわかりました。超高速コンピューターの実現に欠かせない、情報の瞬間移動を無制限に繰り返せるようにする新たな技術の開発の成功で、グループではことしから大規模な計算を精度高く行うための研究を本格化させることにしています。
量子コンピューターの実現に向けて重要な技術の開発に成功したのは、東京大学の古澤明教授のグループです。

量子とは、物質のもとになる原子や光子などのことで、古澤教授はカリフォルニア工科大学の客員研究員だった1998年に、離れている二つの量子の間で情報を瞬時に伝える量子テレポーテーションと呼ばれる現象を起こすことに世界で初めて成功し、注目を集めました。

この量子テレポーテーションについて、古澤教授のグループが実験装置の一部に特殊な工夫を加えることで、情報を瞬時に伝え合う関係にある量子を、無制限に作り出す技術の開発に新たに成功したことがわかりました。

これまで量子テレポーテーションをめぐっては、情報を瞬時に伝え合う関係にある量子を連続して作り出せる数に限度があることが課題になっていましたが、今回の重要な成果によって、量子コンピューターの実現に向けた大きな壁の一つが取り払われたことになります。

例えば、100億とおりの組み合わせがある問題を解く場合、現代のコンピューターは少なくとも100億回の計算を繰り返す必要がありますが、量子テレポーテーションの技術を使えば、同時並行で100億とおりの計算を行える可能性があるということです。

グループでは実験に成功した新たな技術を使って、ことしから大規模な計算を精度高く行うための研究を本格化させることにしています。

古澤教授は「将来の量子コンピューターの基盤となる技術に、めどをつけることができたと言えるくらいの大きなブレークスルーだと手応えを感じている。まだまだ乗り越える壁は多いが、20年後には実用化できるよう、さらに研究を推し進めていきたい」と話しています。

量子テレポーテーション応用の道開ける

量子テレポーテーション応用の道開ける
離れた量子と量子の間で情報を瞬時に伝える量子テレポーテーションは、量子どうしが、兄弟のような関係にある場合に人工的に起こせる現象です。

一つの量子を特殊な装置で複数に分けた場合、量子どうしが離れていても、お互いに影響し合う兄弟のような不思議な関係が生まれます。

古澤教授が1998年に世界で初めて、この現象を起こしたときには、二つの量子の間で情報を伝えただけでした。その後、兄弟のような関係にある量子を少しずつ、増やすことに成功しましたが、その数は最大でも、およそ1万6000個にとどまり、増やせる量子の数に限度があることが、量子コンピューターへの応用に向けて大きな壁となっていました。

それが今回の研究成果によって、兄弟のような関係にある量子を無制限に作り出すことができるようになり、量子コンピューターへの応用の道が大きく開けることになりました。

量子コンピューター 何に使う?

量子コンピューターは、膨大な組み合わせがある計算を同時並行で素早く解くことができることから、新たな医薬品の開発や、高度な画像診断による病気の早期発見、家庭の電化製品などから集まるビッグデータの活用などに応用できると期待されています。

例えば、新しいがん治療薬を開発する場合、現在は考えられる物質の組み合わせについて、1000兆回の10倍である1京回の、さらに100万倍くらいという天文学的な回数の計算を長い時間をかけて行っていますが、量子コンピューターが実現すれば、こうした計算が短時間でできる可能性があります。

また、体の建康状態を画像診断で調べる場合も、人工知能に量子コンピューターが導入されれば、画像の認識の精度が飛躍的に高まり、病気などの兆候をより早く見つけられるようになる可能性があります。

さらに今後、家庭にある冷蔵庫やエアコン、テレビなどさまざまな電化製品がインターネットにつながる時代になると、膨大に集まるビッグデータを使って、市場予測や一人一人の健康管理などに活用できる可能性があります。

一方で、現在のコンピューターによる暗号が量子コンピューターでは簡単に解けてしまう可能性があり、より複雑な暗号技術の開発も必要になると考えられています。

企業も実用化へ期待

企業も実用化へ期待
量子コンピューターの実現に向けては、離れている量子と量子の間で情報を瞬時に伝える量子テレポーテーションと呼ばれる現象を、小型の装置の中で実現することが必要で、古澤教授の研究にはNTTが参加し、小型の装置の開発を進めています。

古澤教授による量子テレポーテーションの実験は幅4.2メートル、奥行き1.5メートルの台の上に、鏡やレンズ500枚余り設置した大がかりな装置を使って行われています。

量子コンピューターの実現に向けては、量子テレポーテーションを小型の装置の中で実現することが必要で、古澤教授の研究にNTTが参加し、装置の開発を進めています。

これまでに、NTTでは微細な加工技術によって、実験装置の一部を大きさ2.6センチほどの小さなチップ上に再現し、量子テレポーテーションを単発で発生させることに成功しています。

NTTでは今後、量子テレポーテーションを繰り返すことができる小型の装置の開発に取り組み、量子コンピューターの実現につなげたいとしています。

NTT先端集積デバイス研究所の橋本俊和主幹研究員は「これまで量子テレポーテーションは、その現象を起こせる回数に限度があり、量子コンピューターへの応用に向けて大きな足かせになっていましたが、今回の古澤教授の研究によってその限度がなくなり、量子コンピューターの実現に向けた土台ができたと思っています。私たちが長年培ってきた超小型の半導体を開発する技術の強みを生かし、量子コンピューターの実現に貢献したい」と話しています。
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