福島・広野の火災、遺体は高野院長 病院存続へ町が支援 

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緊急会見で高野病院への支援を訴える(左から)尾崎医師、遠藤町長、坪倉医師=3日午後、広野町役場

 福島県広野町にある高野病院の院長高野英男さん(81)方で昨年12月30日に起きた火災で、焼け跡から見つかった男性の遺体は、連絡が取れなくなっていた高野さんで、死因は焼死だったことが3日、双葉署への取材で分かった。DNA鑑定などの結果、判明した。遺体は燃え方の激しいベッド付近で見つかっていた。

 高野病院は常勤医が高野さん1人で、死去により院長と常勤医が不在の非常事態となった。

 広野町の遠藤智町長は同日、町役場で会見し、哀悼の意を示した上で「入院患者や地域住民の生命を守り、双葉地方の医療体制の崩壊を防ぐため、短期的なボランティア医師の受け入れ態勢を整えていく」と述べ、高野病院を応援する医師の交通費と宿泊費を町が負担する方針を明らかにした。

 医師派遣で協力する南相馬市立総合病院の医師有志らによる「高野病院を支援する会」の呼び掛けで、いわき市の常磐病院が新たに医師派遣を決めたほか、長野、静岡両県など全国の医師も名乗り出ており、支援の輪が広がっている。

 会見には南相馬市立総合病院の尾崎章彦医師(31)、坪倉正治医師(34)が同席した。尾崎医師によると、延べ20~30人が協力し、1月中は診療を続けられる見通しが立ったという。

 「高野さんの遺志に報いるためにもボランティア医師は無償で協力する」としており、町が最低限の必要経費を支援する形となる。  医療法で病院には常勤医が必要と定められている。ボランティア医師で急場はしのげるが、高野病院の存続には常勤医の確保が喫緊の課題となる。

 支援する会の会長に就いた遠藤町長は「高野病院の思いを受け止め、行政として応えていかなければならない。中長期的な医療体制の維持について国や県に特段の支援を求める」と述べ、病院の存続に全力を挙げる考えを強調した。

◆「地域医療守る」 高野院長の次女己保さん

 高野病院を運営する医療法人社団養高会理事長で、高野さんの次女己保(みお)さん(49)は3日、病院のホームページ上に声明を発表し「『どんな時でも自分のできることを粛々と行う』。高野院長が遺(のこ)したこの言葉を忘れず、院長の意志を引き継ぎ、職員一丸でこれからも地域医療を守っていく」と決意を示した。

 原発事故後の高野英男さんの生きざまについて「身を削るように地域医療の火を消してはいけないと日々奮闘してきた」と振り返った。

 声明では「本人の強い希望により葬儀などは執り行わない」としている。