物価上昇率の予測 日銀と民間でかい離

物価上昇率の予測 日銀と民間でかい離
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日銀は、新年度(平成29年度)の物価上昇率について、原油価格の上昇や世界経済の回復を背景に目標とする2%に近づくと見ていますが、民間の予測では1%以下にとどまるという見方が多く、デフレ脱却を目指す日銀が思い描くように物価が上昇していくかが注目されます。
日銀は、2%の物価上昇率を目指して大規模な金融緩和策を続けていますが、全国の消費者物価は、去年11月まで9か月連続でマイナスの水準となっていて、目標の2%にはほど遠い状況が続いています。

しかし、日銀は、原油価格の下落が物価を押し下げる影響が和らぐほか、アメリカのトランプ次期大統領の政策に対する期待感などを背景に、世界経済が上向くとの見方などから、今後、物価は上昇に転じ、新年度(平成29年度)の物価上昇率は、1.5%程度に高まると見込んでいます。

日銀の黒田総裁は先月の講演で、「世界経済は全体として上向きつつあり、新しい年は、日本経済がデフレ脱却に向けて大きく歩みを進める年になる」と述べ、物価の上昇に自信を示しました。

これに対して、民間の調査会社などの予測では、トランプ次期大統領の政策が不透明なうえ、国内では消費者の節約志向が根強く企業も値上げに慎重だとして、平成29年度の物価上昇率は0%台半ばから1%にとどまるという見方が多くなっています。

日銀はこれまで2%の物価目標を達成する時期の見通しを5回にわたって先延ばししているだけに、デフレ脱却を目指す日銀の思い描くように物価が上昇に向かうかが注目されます。

日銀の物価上昇のシナリオとは

消費者物価指数は去年11月まで9か月連続でマイナスとなっていますが、日銀は今後、物価が上昇に転じると見ています。

その理由は2つあります。

1つは、原油価格が上昇傾向にあることです。原油の先物価格は、去年1月、1バレル=29ドル台まで下落しました。

しかし先月、OPEC=石油輸出国機構の加盟国とロシアなど非加盟の産油国が原油価格を押し上げるために協調して減産に踏み切ることで15年ぶりに合意し、原油の供給過剰の状態が改善に向かうという見方が強まったこともあって原油の先物価格は現在、1バレル=50ドルを超える水準まで上昇しています。

原油価格が上昇するとガソリンや石油製品の価格が値上がりし物価上昇率も高まると日銀は見ているのです。

日銀が物価が上昇すると見るもう1つの根拠は、アメリカのトランプ次期大統領の経済政策に対する期待から世界経済が上向くという見方が広がっていることです。

当初、金融市場では、保護主義的な発言を繰り返してきたトランプ氏が大統領になれば世界経済が混乱すると懸念されていました。

しかし、トランプ氏の当選が決まってからはインフラ投資や大規模な減税が実現すればアメリカ経済が活性化されるとして、ビジネスマンとしてのトランプ氏の手腕に期待する声も出ています。

日銀は、アメリカ経済が主導する形で世界経済が上向けば、日本でも企業の生産や投資、それに個人消費も活発になり賃金も上がるという好循環が生まれ、物価を押し上げることになると見ています。