北野天満宮(京都市)

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 『全国「一の宮」徹底ガイド』著者の恵美嘉樹です。もう初詣には行かれましたか。基本的にはご近所の神社でいいのですが、どうしても実現したい願いがある!という人が、どの神社、まつられている神様を選べばいいのかについて、歴史的な背景から御利益を分析して、まとめました。(神様の優越ではありませんのであくまでご参考にしてください)

◆日本の神様別神社数ランキング

 まずは国学院大の日本の神社の信仰分布調査による神様別神社数ランキングをどうぞ。きっとみなさんの近所にもあるでしょう。

・八幡信仰(応神天皇)…7817社 代表的な神社 宇佐神宮
・伊勢信仰(アマテラス大神)…4425社 伊勢神宮
・天神信仰(菅原道真公)…3953社 北野天満宮
・稲荷信仰(倉稲魂神)…2970社 伏見稲荷大社
・熊野信仰(世界遺産の熊野三山)…2693社 熊野三社
・諏訪信仰(タケミナカタ)…2616社 諏訪大社
・祇園信仰(牛頭天王=スサノオ)…2299社 八坂神社
・白山信仰(石川・岐阜県境の日本三大霊峰白山)…1893社 白山比め神社
・日吉信仰(比叡山延暦寺の守り神)…1724社 日吉大社
・春日信仰(藤原氏の氏神)…1072社 春日大社
(参照)岡田莊司, 加瀬直弥編「現代・神社の信仰分布 : その歴史的経緯を考えるために」国学院大「神道と日本文化の国学的研究発信の拠点形成」( 2007年)

◆受験と言えば! 天神さまでしょ!

 知恵と学問の神様といえば、平安時代の貴族・菅原道真公。

 地位の低い貴族でありながら、知恵と学問により大出世を果たした道真ですが、延喜3年(903年)2月25日に、政争に敗れて左遷された九州の大宰府で亡くなります。

 死後に都で疫病などが発生したことで、道真が怨霊となったと受け止められ、鎮魂するためにまつりあげ(神格化)られました。

 呪いをもたらす力を持っている怨霊を神さまにしてしまえば、その強力な力で我々を守ってくれるのではないかという逆転の発想で創設されたのが、京都の北野天満宮です。

 天神さまというのは、神格化に伴って神様としてつけられた「北野天満大自在天神」の名前からです。

 なぜ、学問の神かというと、前述したとおり、知恵と学問により大出世したからです。

◆道真公の復帰までの長い道のり

 怨霊になったからさらっと一位の神様になってしまったように思われていますが、実際には、一位になるまでには色々なステップがありました。

903年 死去
923年 まず元の官職である右大臣に復帰させてみます。さらに正二位という位を贈る。左遷の命令書を焼却
947年 孫の菅原平忠を安楽寺別当(現在の太宰府天満宮のトップ)に任命し、おじいちゃんの魂を慰めてもらう
981年 ひ孫を神社寺院の役職ではなく太宰府そのもののナンバー2(大宰大弐)して、ひいおじいちゃんに喜んでもらう
993年 左大臣、正一位にランクアップ。同じ年のうちに、さらに太政大臣という最高位を贈る

 という具合でした。やっぱり神様が出世するのも努力努力努力、なのでしょうか。

◆北野天満宮(京都市)

 創建については、『北野天満自在天神宮創建山城国葛野郡上林郷縁起』というめっちゃ長い資料が残っています。

 そこには面白いことが書かれています。北野天満宮ができたのは、幼女の巫女のおつげというのです。

 942年に、京都にすんでいた巫女性質の童女の奇子さんという人にとりつき、「北野に社殿をつくってまつってくれ」と要求。しかし、怪しい身分の巫女だったので、ほんまかいなと実現しなかったのですが、いつまでたっても天変地異や疫病などがとまらないので、やってみようかと5年後の947年に、現在の北野の地に移ってきたということになっています。

◆太宰府天満宮(福岡県太宰府市)

⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1263025

 太宰府天満宮は、『帝王編年記』などの資料では、道真が亡くなり、墓を築こうと遺体を牛車で運んだところ、途中で牛が止まってしまって動かなくなった。仕方がないので、そこを廟所としたとされています。

 「安楽寺」という寺院として建物が造られるなどしたのはその2年後、正式に国が認めたのは919年のことで、天皇の命令で社殿を造っています。

◆湯島神社(東京都文京区)

 湯島天神で知られる東京の天満宮系の代表格。

 天之手力雄命というおそらく地元の神様をまつる神社でしたが、1355年に地元民が夢をみて「天神様をまつるべ」となって、菅原公もまつること(勧請)になり、その後、衰退しましたが、元祖江戸城をつくった太田道灌が1478年に再興しました。

文/恵美嘉樹(歴史作家)

<コンテンツ提供/BUSHOO!JAPAN(武将ジャパン)>

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