【社説】THAAD配備、中国が韓国の軍事政策を変える前例を作るな

 韓国の野党、共に民主党の国会議員8人が主に韓半島(朝鮮半島)への終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備問題を協議するため、4日から中国を訪問する。孫永吉(ソン・ヨンギル)議員らは北京で王毅外相や閣僚級の傅瑩・全国人民代表大会外事委員会主任、中国共産党対外連絡部、商務省幹部らと会談する予定だ。

 中国外務省は昨年7月、韓米両国のTHAAD配備決定後、韓国の金章洙(キム・ジャンス)駐中大使による接触要請に一切応じていない。外務省だけでなく、他の官庁の幹部も全面的に面会を拒否している。そんな中国が野党議員には会うというのは、政権を獲得する可能性が高いとされる民主党を通じ、THAAD配備を撤回させる計算があるはずだ。先月中国でTHAAD問題を担当する副局長クラスが韓国を訪問し、野党指導部や大企業代表らに「THAAD撤回」圧力をかけたのも同様だ。

 民主党議員は中国政府が民間レベルで報復を行うことは問題だと指摘する計画だという。それは必要なことかもしれない。しかし、現在の状況では訪中が効果を上げず、中国に利用され、韓国国内の分裂のみを招くことを懸念せざるを得ない。民主党議員が中国に行くというならば、党の路線がTHAADに否定的であっても、外国の圧力で韓国の安全保障・軍事政策を曲げることはできないという事実を明示すべきだ。そうすることで中国の誤解や無駄な期待をなくすことが最も急がれる。

 北朝鮮の核・ミサイルによる脅威がなければ、元々THAADは必要ない。金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長は1日、新年のあいさつでも「核武力による先制攻撃能力の強化」のほか、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射が仕上げ段階にある」などと言及し、今後の挑発を予告した。中国が北朝鮮の核による火遊びにはっきりと対処していれば、THAADが必要な段階には至らなかったはずだ。今後北朝鮮の核による脅威がなくなれば、THAADはいつでも国外に撤収可能だ。

 主権国家間でも交渉を通じて政策を変更することはあり得ることだ。しかし、国家の生き残りのための安全保障政策、特に軍事政策は次元が異なる問題だ。一度決定した軍事政策や戦略を外国の干渉と圧力で変えるならば、もはや主権国家とは言えない。中国という国は覇権を追求してきた歴史を持つ。そうした国の圧力で軍事政策を変える前例をつくり、中国に韓国を手なずけられると思わせることになれば、災難が起きるはずだ。政治家の慎重かつ賢明な対応を求めたい。

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