〈長編小説のオールタイムベスト8〉
2016年 12月01日 (木) 16:45
以前にも申しました通り、私が愛してやまないものたちのお話をしようと思いまして、しかし何しろ深刻に広大無辺でありますから、まずは分かり易いように長編小説のオールタイムベスト8を作成してみました(8なのは、それが好きな数だからですね)。〈順位を付ける〉というのはあまり得意じゃありませんけれど、やってみたら存外に楽しかったり難しかったり。
私は環境のせいもあって幼いころから独りポッチの読書ッ子でありましたから、読んできた本の数は小説に限りましてもざっと勘定して1000は悠に超えますし、中でもミステリに偏っているので、年齢も考慮すればミステリに関してマニアを自称して良いだろうと思います。
尤も、濃ゆいオタク語りを始めることは自粛しますけれど……何かの参考にして戴ければと思います。
ところでこれらは、作品としてどれほど優れているか、あるいは背景も合わせた歴史的価値なども考慮には入れていますけれど、やはり私の趣味嗜好に依るところを最も大きくして作成いたしました。
好みと評価とは似通るところもありますが異なるところも多い為に、私の中でも「好みではこちらだけど、評価は断然こちらだナ」ということは沢山あって、でありますから『あの名作が入ってないなんて!』とか『これがあれより上だなんて有り得ない!』と云われるところは多分にあるでしょうけれど、しかし、そうでなければ別に私が〈私の〉ベストと銘打つ必要はなくなり、ありふれたそれらと変わらなくなってしまいますから、その辺りご了承くださいませ。
さて、長編小説のオールタイムベスト8。同じ作者が二度以上入らないように、という〈縛り〉のもとです。敬称は略させて戴きます。
1位:夏と冬の奏鳴曲/麻耶雄高
2位:虚無への供物/中井英夫
3位:ディスコ探偵水曜日/舞城王太郎
4位:哲学者の密室/笠井潔
5位:一九八四年/ジョージ・オーウェル
6位:黒死館殺人事件/小栗虫太郎
7位:黒いトランク/鮎川哲也
8位:春にして君を離れ/アガサ・クリスティ
ミステリばかりですね。そうこなくっちゃ。
8位の『春にして君を離れ』はミステリの女王アガサ・クリスティの作品です。クリスティは数々のトリックや舞台設定を開発した、ミステリの歴史を語るに決して欠かせない大人物ではありますが、個々の完成度はあまり高くなく、そして後に名だたるフォロワー達によって彼女が開発したそれらはより良いかたちに昇華されているので、名作は多いですけれど傑作は少ない作家であると私は捉えています。
しかしこの『春にして君を離れ』……これはミステリではなく、正確にはメアリ・ウェストマコット名義で執筆された小説です。ベスト8の他の面子と比べますとボリューム的にも不足している感がありますが、私は是非ともこれを入れたかった。と云いますのも、人間関係というものの内、私が最も恐怖を感じ嫌悪感を抱いている、それでありながらどこまでも有り触れている、各々の腹の中に渦巻いた哀しく醜いある感情と、それにまつわる底なしの猜疑を、完璧に描いているのです。あのラストは、それまで言語化できないでいた人間関係の遣り切れなさを余りにも恐ろしく切なく印象付けた衝撃のそれであり、この小説を私は忘れることが出来ない……日常の端々で、嗚呼これはまさしく『春にして君を離れ』だナと感じ入ってしまう……もしも全人類がこれを正しく読んでくれたのなら、世界はもう少し慎ましく、生きやすくなるかしら?
7位は鮎川哲也の『黒いトランク』。私はちょっと気を抜くとアンチミステリばかり贔屓しますから、ミステリマニアとして純然たる本格も挙げておかなければ……という意識もあったかも知れませんけれど、いずれにしましても本格ミステリの中で私が最も脱帽し評価しているのはこれです。
どちらかと云えば地味であった事件が、いつの間にかありとあらゆるトリックの一大展覧会じみたスケールに変貌している、しかもそれらが非常に端正に精緻に展開されてゆく、これぞ知的遊戯と云わんばかりの楽しさったら今も何ら薄らぐことなく新鮮であり鮮烈であり、ミステリの古典とは斯くあるべきと思います。探偵役が刑事であること、メインで扱われるのが時刻表トリックであること等から社会派の真面目くさったミステリを思わせるのに、蓋を開けて見ればこれ以上ない本格の面白オカシサ満載、痛快、堪らないオモチャ箱。また犯人の動機が、個人的に強く共感を覚えるところであり、ミステリというのはやはり単なる知的遊戯に止まらない力強い文学なのだともシミジミ感じます次第。
ミステリを読み漁り読み漁りすっかり擦れてしまった者をも唸らせる力のある作家というなら、本格の鬼・鮎川哲也を真っ先に挙げて然るべきでしょう。
6位は『黒死館殺人事件』。いわゆる三大奇書の一角でありますが、アー愛おしい!奇書の名に最も相応しいのはこれです。ペダントリーの大洪水。初めて読んだ時はいっそ感動いたしました。凄ォーい、訳分かんないことしか書いてない!嬉しくって嬉しくってタマラなかったです。どの頁を開いてもニヤニヤニヤ。事件そっちのけで探偵・法水が聞いたこともないような奇天烈な知識を喋る喋る喋る。さらに黒死館の住人にも張り合わんばかりに衒学趣味をひけらかしてくるクセ者がいるもので、それが当然であるかのように途方もない妙チクリンな駆け引きが展開されていく。
しかも何より面白いのは、事件そのものは別に特殊の知識がなければ解決できないようなそれではなくシンプルで、犯人も法水も他の者達も揃いも揃って馬鹿ばかりじゃねぇか!と思われて仕方ない程であり……つまり過剰装飾=衒学嗜好が作品のバランスを決定的に破壊するまでに究極に過剰に施され、類を見ない歪な物語となったのが今作であるのです。ミステリとペダントリーとは相性が良いですけれど、これは未だ誰も追い付けない、その果てにある終着点。本作に書かれている諸々がどのくらい正しいのか検証しようとした人が何人かおられますが、どの方も序盤で脱落したようですね。
5位はディストピア文学の傑作『一九八四年』。ベスト8中、唯一ミステリとは畑の違うSF小説で御座いますが、これは説明不要でしょう。少なくとも本好きを名乗る方でこれを読んでいない方がおりましたらチョットどうかと思うくらいですし、小説媒体だけでなくあらゆる映画・漫画の元ネタとなっています。それこそジャンルは関係なく、優れた文学とは往々にして未来を予見するものですが、1948年に書かれた本作はつくづく凄まじい。ビッグ・ブラザー、二重思考、ニュースピーク、真理省、二分間憎悪、永久戦争……強烈で魅力的な数々の設定や用語に彩られ、しかし語られているのは私達が生きている現代社会、その行く末と変わらないんじゃないかしら、と空恐ろしくなる真実味と説得力に満ちております。戦争は平和、自由は隷従、無知は力。この小説は余りにも刺激的でありますし、SFの中でも最も好きな一作なので、これだけは外せないなーと思い、入れさせて戴きました。
4位。嗚呼、此処から上は本当の本当に特別な小説ばかりです。笠井潔の『哲学者の密室』。矢吹駆シリーズの四作目に当たり、そもそも私は矢吹駆シリーズが好きで好きで色んな小説の色んなシリーズの中でいっちゃん大好きなのでありますが、これが現時点でシリーズ最高傑作であると思います。
笠井潔はご自身で仰られている通りロシアの文豪・ドストエフスキーを小説の一つの手本としていることもあってか、矢吹駆シリーズはミステリに思想対決を絡めておりまして、前三作まではしかし事件やそのトリックそのものと思想対決は云うほど密接に結び付いてはいなかった(とは云いましても、前三作はそれが魅力でもあって、本格ミステリと哲学思想との一種のギャップが堪らなく気持ち良く、即ちそれぞれの真犯人の動機あるいは事件の背景が吃驚するくらい巨大で深遠なスケールを持っていたという落差が殆ど〈どんでん返し〉的でさえあり鮮烈な感覚を呼び起こすところが好き好き大好き)のですが、三作目からおよそ10年の間をおいて発表された本作では、両者が完璧に融和していて、相互作用によって限りなく豊かな奥行きを生み出しているのです。故にこれが本格ミステリとして書かれている必然性をも強め、いっそミステリ讃歌的に感じられる程であるのです。
そして矢吹駆が駆使する現象学的な本質直感を用いた推理法は本作でこそ抜群の効果を発揮しており、多重解決的に広がってしまう解釈の中から真実を決定する鮮やかさは、その〈逆転の発想〉も相まって声が出るくらい素晴らしい――本作のメイントリックである三重密室の解法は、名探偵の推理というものを体系付けた本シリーズだからこそ意味を持つものでしょう。前三作まではトリック自体にはあまり真新しさがないという弱点があるにはありましたけれど、本作では凡て解消され、理想的なかたちに結実しています。
思想対決も抜群に知的好奇心を刺激するものであり、なんと痛快なハイデガー批判だろうと感嘆いたします。本作がハイデガーを取り上げているのも前三作の集大成という感を強め、特に一作目『バイバイ、エンジェル』の答えを出しているのは、非常に誠実であって素晴らしいのです。笠井潔の〈大量死論〉は批判する方もいますけれど――大量死が特権的な死の夢想を生み戦後のミステリの隆盛に繋がったとするその因果関係には慎重な検討が必要ではあるでしょうが――ミステリの一つの側面として間違いないものであると私は思いますし、これが『虚無への供物』へのアンサーになっている点はやっぱり個人的に特別な意味を持っています。
嗚呼、私はこの小説に最大の敬意を表する。このような大作が出来上がるまでに、一体どれだけの苦悩や思索があっただろうか……私がミステリに惹かれる意味や理由を、本作ひいては矢吹駆シリーズの中には非常に多く発見できます。それが嬉しくて嬉しくて。
ところで、シリーズ最高傑作は『哲学者の密室』であってベスト8に入れるのはこれで決まりとは思うのですが、私は一作目『バイバイ、エンジェル』の名前もベスト8中に連ねたくて堪りませんでした……。何故なら私は『バイバイ、エンジェル』に登場するマチルドという少女が、他のどんな小説のどんな人物と比べましてもズバ抜けて一番好きであって、後のシリーズ中でもマチルドの名前が出るだけで踊り出してしまうくらいなのです。本当に本当に本当に凄ェんだマチルドは。マチルドを信じろ。『バイバイ、エンジェル』は青春ですねェー……。
3位。舞城作品には小説の力強さや読書の歓びを殊更に感じられます。暴力的なまでの文章の洪水の中でハッとするような表現がキラキラ輝いており、雑多な要素の中から普遍の真実みたようなものを抉り出そうとする、まさに現代文学。しかし舞城はメフィスト賞の出身であってミステリオタクであって、そして抜群にセンスが良いというのが私が手放しで賞賛する所以なのです。そんな舞城の趣味が炸裂しているのが、清涼院流水の世界を借りたJDCトリビュート作『九十九十九』と、そしてこの『ディスコ探偵水曜日』。
この大長編はもう全部載せの舞城であると云え、眩暈がするような夥しい数の要素や事件が収集が付かないくらい展開する中を猛スピードで目まぐるしく駆け抜けていき、物語世界は幾度となく変貌を遂げ変貌を遂げ、興奮、興奮、大興奮の内に、終盤に差し掛かるとナント見事に凡てがグングングングン収束し、最後には極上の感動をズシイインと残す、格好良すぎる、面白すぎる、凄すぎる。小説ってのはこんなことが出来るんだ!という魂揺さぶる感激は私に希望を与えてくれます。
そして本作のミステリオタクぶりは〈やり過ぎ〉と云われるラインなんてとっくにブチ破っており、手掛かりの提示や論理性なんてものは知らんこっちゃねぇとばかり、伏線をばら撒いてはそれらを奇想天外に構築し破壊し構築し破壊し……のドライブ感を貪るように味わい尽す贅沢さと愉しみは比類ない程であります。名探偵を何だと思ってるんだか知れない奇天烈な名探偵達が披露しまくる雑な推理にウキウキしないなんて無理。数々の奇想が入り乱れ氾濫している様はフラフラするくらい最高。ミステリとして語られることの少ない今作でありますが、狭義のそれから外れているとはいえ、このパロディ的あるいはサンプリング的感覚はミステリマニアならば大いに頷ける――どころか、ミステリマニアでないと〈ついていけない〉だろうそれであり、ミステリの系譜に位置付けられて然るべき、三大奇書以降の奇書筆頭であるとさえ思っております。
2位の『虚無への供物』はミステリの解答であり、これ以降のミステリ小説は凡てが、意識していなくともこの小説の呪縛を受けていると私は云い切ります。幾重にも意味付けされ特権化されていく死、しかしその果てに行き着く虚無。凡てはそこに奉仕し続ける供物でしかあり得ない。ミステリは突き詰めていきますと、この作品が顕現させた大虚無へと引き込まれて対消滅するしかないのであります。これは永遠のアンチミステリ。ただしその本当の凄みは、ミステリを読み続け、ミステリについて思考し続ける者の内にそれぞれ悍ましいかたちで育ってゆくものなのであって、そうでなければ大したことのない小説という評価で終わってしまうことも多々あるでしょう。そんなところも、つくづくゾッとするのです。この魅力に憑かれている人間同士でさえ、きっと別々の『虚無への供物』を抱いているに違いありません。そしてまだ、それらは完成形ではないのです。
1位は『夏と冬の奏鳴曲』。一切迷いません。私のオールタイムベスト1。この小説ほどの衝撃は二度と味わえないに違いないのです。この読書体験が私の生涯の中で一つのピークだったと、死ぬ時にも考えていることでしょう。初めて読んだあの二日間の日付も覚えている。
麻耶雄高は、その著作を余さず読んでいる(無論、今では絶版になっているものも凡て含めて)作家の内の一人であって、早い話が私は彼のファンなのですが、今作だけは特別中の特別。あんまり特別なもんだから、もう誰にも解って欲しくない。中途半端に話して、私が一体どれくらいこの小説が好きかということについて下手な想像をして欲しくない。この小説の魅力や素晴らしさを語るには――尤も特に四位以上のものはどれもそうだけれど、原稿用紙の百枚や二百枚じゃ全然足りないのです。申し訳ないのですが、しかし説明なんて無粋でしょう。こんな小説は他にないということ。万人に好まれるようなそれとは無縁の、まるで天涯孤独みたいな一冊です。ただ、人によってはその人生を変え、決定付けてしまう力を持った一冊なのであります。
それぞれ簡単なコメントを付けてみましたが、いくつかお見苦しいところもあったかも知れません。ご容赦を。とはいえ、これじゃあまったく何も語っていないようなものですし、この八冊の他にも私が好きで好きで仕様がない小説がいくつあることか! 尤も始めるとキリがありませんから、今回はこれで我慢しようと。『この人は小説が好きなんだなァ』くらいに思って戴けましたなら幸いで御座います。
凛野 冥
コメント
舞城作品は,ノリがいまいちついていけません。どうも辛い,ごめんなさい。
本編マイス・メガロマニアックは込み入りすぎというかギミックが入りすぎで,もうちょっとシンプルな方が読みやすいと思うんですが…まあゴスロリミステリーというか過剰さ歪さが味で,サービス精神の表れだとも思いますが,過剰さをスムースに飲み込ませる導入がうまくないと辛い気がします。
読めば面白いのはわかっていて読みたいんですが,なかなか心技体充実していないと読み進んでいきにくいです。すみません。
私が一番愛している本は…SFですが,眉村卓「消滅の光輪」かなあ。「不定期エスパー」やペンクラブの<ttp://bungeikan.jp/domestic/list/1/4/>の「蒼穹の手」も好きです。ホラー?ですが貴志祐介「天使の囀り」。ミステリーでは…江戸川乱歩「二銭銅貨」ですね。麻耶雄高「神様ゲーム」も。
中高生のころ引き込まれて読んだのは
クリスティ「そして誰も居なくなった」
ポー「ナンタケット島のゴードンピムの物語」「メエルシュトレエムに呑まれて」
ラヴクラフト「狂気の山脈を超えて」
なんですが,今読み直しても当時のように引き込まれないのがちょっと悲しいです。
恥ずかしながら、戸川昌子サンですと当時『虚無への供物』の前半部を下して(そんな彼女が『虚無への供物』において重要な要素の一つであるシャンソン歌手でもあったというのは、何だか偶然とは面白いですね)乱歩賞を獲りました『大いなる幻影』を読んだのみなのですが、幾らか煮え切らない部分はあるものの決して色物なんかでない確かな力ある方だと感心いたしました。そもそも良い時代でありましたねー……とても趣味良いと思います。私も近い内にもう何作か読んでみます。
他の何物にも似ていない小説を書くというのが私の夢でありますけれど、成程、まだまだ未熟であって研究が足りない。頑張っていきたいところです。
ありがとうございます。嬉しいです。
ただ、数なんてあまり大事じゃありませんし、私はまだまだ不勉強であって読んでいる人はモット数えきれないほど読んでいるものです。
趣味……それも些か特殊な趣味のラインアップですので、オススメと云いますとまた別になりますけれど、その時だけ楽しいばかりのエンタメ小説とは異なり何かしら残るものがあるそれらですので、損はないだろうと思います。
三大奇書と云えばここには『ドグラ・マグラ』がありませんが、しかし夢野久作は私が最も敬愛する作家であって、と云いますのも久作は短編にこそ妙味があるのです。『氷の涯』『少女地獄』『死後の恋』等、ウットリ溜息が出るくらい美しく面白い。また、どれも読み易いので、この辺りは強く推したいところです。ご参考までに。
ところで私の考えですけれど、理解なんて出来なくとも良いのです。理解できないのに無性に面白い……という体験もまた格別に素晴らしい。難しく構えずに身を任せてみるのも一興かと。
そんなお方の書評ですからしっかり読ませていただきました。
舞城王太郎さんの文章の巧みさとテンポについては、前々から感心して少し読んでいましたが、紹介された『ディスコ探偵水曜日』は未読なので手に取ってみようと思います。
と、言いますか愛が溢れ出る書評を読んでいますと、どれも面白く見えてしまいます。ちょっとずつ読破していこうか画策してしまいます。
あ、三大奇書の二つは……どうでしょうね。きちんと理解できるか不安ですが、挑戦しようと思います。
いえ、レビューだなんて云えた内容ではないです、恐縮です……。
そうですね、笠井潔サンは良くも悪くも話題を呼ぶことが多いですけれど、それは(特にミステリに対する)姿勢が余りに真剣かつ真摯であるが故だろうと思います。作品を読みますと、また印象が変わるかも知れません。
舞城王太郎サンは〈ゼロ年代的〉の最たるもので非常にクセが強いですから、たしかに人を選びますね。文壇でも評価は真っ二つに割れていますし。しかし毒にも薬にもならない小説というのが一番詰まらないのですから、そのくらい物議を醸して丁度良いくらいだとは思います。
まさしく仰る通りで御座います。『マイス・メガロマニアック』はめちゃくちゃ面倒臭いです。親切さの欠片もありませんから、商業作品的尺度に照らせば言語道断の落第点でしょう。
でも読者に対して優しい小説というのはそれだけ読者を馬鹿にしているわけですし、私自身読者としてそういう小説こそ嫌いなのと、面倒臭ければ面倒臭いほど「やったぁ!」と諸手を挙げる人間ですから、これだけは、これだけはと思い、『マイス・メガロマニアック』では個人的な〈小説の理想形〉を実現させたという経緯であります……。いつかもし、また気になるようなことがありましたら、その時にでも覗いていただければ幸いであります……。
SFは日本のものになりますと今のところ全然読んでいません、スミマセン。
貴志祐介サンは上手いですよね。角川ホラー文庫から出ている作品群では日本ならではのモダン・ホラー、そこに大衆ミステリのテイストを絡めて、エンターテインメント性の高い良質な作品を書いていらっしゃるなぁと思いましたし、個人的には『新世界より』がとても好きでした(ガジェットの一つ一つは定番のものばかりですしオチは簡単に読めてしまいますけど、どこか郷愁を覚える日本的な物語世界は何とも云えず素晴らしく、SFもホラーもミステリもクロスオーバーした贅沢な内容からは物凄い筆力が窺えましたね)。
『二銭銅貨』とは渋いですね。日本で本格推理をやるんだ!という乱歩の意気込みが感じられます。名作です。
『神様ゲーム』とんでもなく大好きです。講談社ミステリーランドから出た作品ですから麻耶雄高サンの特色が抑えられていますけれど、それ故に終盤、牙を剥いた時、いつも以上に抜群のキレ味を発揮して悪意が噴出するゾクゾクな恐ろしさ。麻耶作品の中でも指折りの傑作と思います。
『そして誰もいなくなった』は私あんまり評価してないですけれど、でも同様の舞台設定の小説ばかり書いてますし、意識してるんだろうなぁと。近い内に短めのオマージュ作をなろうさんに載せる予定ですので、よかったら是非覗いてみて欲しいです……。
ポーはそりゃあ良いですよね。と云いながら、お恥ずかしながらその二作品は未読でした。いずれ読みます。
あッ、ラヴクラフトもまだ読んでいないんです! クトゥルフ神話を攻める時にがっつり読もうと思ってまして温存中。まだ先になるかもですけど、楽しみです。
コメントお寄せ下さり、ありがとうございました。