やっぱり音楽って凄いんですよ。一曲一曲聴くだけで、そこの場面に戻れるわけじゃないですか。『ラブライブ!』ではこんなにたくさんの曲を作ってきたし、一曲一曲が戻れる手がかりとして残ってるから、いつでもまた会えるよっていう気持ちもあって。
作詞家・畑亜貴インタビュー 「Cut 2015年 08 月号」
ラブライブ!楽曲の歌詞を100曲以上書いてきた生けるレジェンド、畑先生がCutで語っていた言葉が印象に残っています。曲を聴くと記憶に刻まれた光景が浮かび上がって来る感覚。ラブライブ!を好きな人なら、誰しも味わったことのあるものじゃないでしょうか。ライブ中に物語のあるワンシーンを思い出したり、日常でふとライブのことを思い出して楽しくなったり、涙が出てきそうになる感覚。
ラブライブ!の楽曲が聴く人のエモーショナルを喚起するのは、音楽がいつも物語と寄り添ってきたから。これに尽きると思います。そして、それは『ラブライブ!サンシャイン!!』も例外ではないと思っています。
事実、サンシャイン楽曲でも物語のコンテキストが無数に散りばめられてますし、アニメーションにおけるドラマで段取りを整えた上で自分たちの気持ちを歌にして伝えるという構成は、そのまま無印を引き継いだものになっています。
2期第9話の「Snow halation」で、μ'sは全国大会への切符を手にしますが、言葉で結果が語られてなくても勝ったことって伝わるんですね。それは歌が必殺技だからですよ。そこに向かって段取ってあげれば、あとは歌の力で解決する。歌にすべて乗せろというのが、暗黙の了解としてありました。
無印からシリーズ構成、脚本、そして京極監督の思いを引き継いでいる花田十輝氏の語る通り、歌は物語を締めくくるための必殺技なのです。それは逆に言えば、物語が無ければ歌の説得力は無くなるということ。ラブライブの物語と歌は、常に強い依存関係にあるということです。
いよいよ本題ですが、私はこの記事にて、サンシャインの楽曲を通じてAqoursの物語を振り返ろうと思います。そうしようと思ったきっかけは、大きく2つあります。ひとつは、大好きなサンシャインという作品について理解を深めたいから。
本作は、世間的に「キャラアニメ」と見られることが少なくないですが、やはりラブライブはドラマが秀逸な作品でありますし、何回も見られることに耐えられる作りになっています。むしろ、何回もアニメーションを見て、キャラクターの感情の機微に注目しないと、作品のことを理解できない作りにすらなっているとも思っています。今回は歌という切り口で作品に対する理解を深めていきたいと思ったのが、ひとつ記事を書こうとしたきっかけとしてあります。
そして、もうひとつのきっかけは、Aqoursのファーストライブを最高に楽しみたいから。先ほどから繰り返しになってしまいますが、サンシャインの楽曲は物語と密接に絡んでいます。ライブを楽しむためには、Aqoursの歌の歌詞を噛み砕いて物語のコンテキストを読み解きながら聴くことが、Aqoursの曲を最大限に楽しむことに繋がるんじゃないかと私個人は思っています。
- 青空Jumping Heart
- 決めたよ Hand in Hand
- ダイスキだったらダイジョウブ!
- 夢で夜空を照らしたい
- 未熟DREAMER
- 想いよひとつになれ
- MIRAI TICKET
- 君のこころは輝いてるかい?
- ユメ語るよりユメ歌おう
- Step! ZERO to ONE
- 総括
青空Jumping Heart
『ラブライブ!サンシャイン!!』の始まりを告げる爽やかで前向きなオープニングタイトル。Aqoursの楽曲は、μ'sに比べて話し言葉に近い歌詞が多いような気がします。それは、サンシャインが伝説のスクールアイドルμ'sに憧れた少女視点で展開していくストーリーだからでしょうか。無印でも、μ'sの物語に共感を覚えたことは多数ありますが、サンシャインを見ているとグッと私たちに近づいた物語になったように思えます。
見たことない夢の軌道 追いかけて
この曲には、とにかくAqoursが詰まっているように感じます。出だしの「見たことない夢の軌道」という歌詞。それは、千歌が憧れてずっと目標に掲げ続けてきた「μ's」とは違う道を歩むということに他なりません。
それでは、彼女たちが思い描く「夢の軌道」とは具体的には何なのか。それは、「まだ、はっきりと答えが出ていない」が正解だと思います。彼女たちが選んだ道は夢へと続く「階段」であり、サンシャインの1期(2期を仮定し)では「ゼロからイチへ」という目の前の壁を越えたばかり。
しかし、TVアニメの13話では、Aqoursなりの夢の軌道の追いかけ方を我々に示してくれました。
これからも、いろんなことがあると思う。嬉しいことばかりじゃなくて、辛くて大変なことだっていっぱいあると思う。でも私、それを楽しみたい!全部を楽しんで、皆と進んでいきたい!!それがきっと、輝くっていうことだと思う!
高海千歌 13話「サンシャイン!!」
辛いことも大変なことも全て受け入れ、ありのままにみんなと一緒に走り続けること。それが、Aqoursが歌う「見たことない夢の軌道」の追いかけ方であり、彼女たちが言う「輝き」にも繋がる訳です。
夢をつかまえに行くよ どんなことが
起こるのか分からないのも 楽しみさ!
こちらの歌詞にも、夢を楽しみながら追いかけたいという彼女たちの姿勢がよく表れています。
そして、この曲にはもうひとつ。千歌がスクールアイドルを始めるきっかけも言及されていることは忘れてはなりません。千歌が抱くμ'sへの憧れ。UTXで見たμ'sのパフォーマンスを見た瞬間に彼女の「輝きたい!!」という気持ちは呼び起こされ、1期13話の「みんなと一緒に輝きたい!!」という思いにまで繋がります。
はじまったときの
ときめきずっと 大事にね
「憧れ」から始まったAqoursが「自分たちなりの輝き方」を見つけるまでの物語。TVアニメ1期の物語の核となるコンテキストが、「青空Jumping Heart 」には集約されているように感じました。
決めたよ Hand in Hand
第1話で、梨子が転校して来る奇跡のシーンから始まる「決めたよ Hand in Hand」。幼馴染の曜はもちろんのこと、転校してきた梨子とも「一緒にスクールアイドルを始めたい!」という千歌の思いがこの曲には詰まっているように感じました。
学校の制服で闊歩しながら歌い踊る千歌たちの姿はμ'sの「ススメ→トゥモロウ」にも重なりますが、μ'sと大きく異なるのは梨子がスクールアイドルを始めていない点。映像を見ても、梨子だけ最初はキョトンとした表情を浮かべながらダンスしています。スクールアイドルを始めていない梨子も千歌たちと一緒になって踊るのは、ある意味でラブライブらしさとも言えます。
何を探してる?
まだ分からないけど 入り口はここかも
歌い出しの千歌パートからは、「夢中になれることに出会ったかもしれない」という漠然としたワクワク感、これまで夢中になれることが無かった千歌がスクールアイドルに出会い、脇目も振らずに今まさに走り出しそうとしている心持ちが伝わってきます。
それと対になる歌詞を、2番の歌詞で梨子が歌っています。
だれとめぐり逢う?
いまがその時と ピンときてないのかな?
10話で千歌に対して「大好きだよ」と自分の気持ちを伝えた梨子ですが、この歌を歌っている時点ではピアノに向き合えない自分を救ってくれる唯一無二の存在になるとは夢にも思わなかったでしょう。何かここの歌詞は、未来の梨子が昔の自分を見て歌っているように聞こえました。
かわれかわれって今日から 新しい世界へと
かわれかわれって元気に 背中押してみよう
「かわれかわれ」と繰り返し語りかけているのは一緒に何かを始めたい誰かに対してであり、また自分自身に対して。次の歌詞と歌唱しているメンバーを考えるとそれが推測できます。
じゃあためらわないで(曜)
もう諦めたくない(梨子)
曜が「じゃあためらわないで」と言っている相手は「千歌」でしょう。「千歌は飽きっぽいのではなく中途半端が嫌いなだけ」と3話で志満に語った曜ですが、今日に至るまで千歌と一緒に夢中になれることを模索し続けて来たもののそれが中々見つからなかっただけに、スクールアイドルを千歌が本気で始めようとしていた時には誰よりも千歌の背中を押したかったと思います。
そして、梨子が歌う「もう諦めたくない」という歌詞は、梨子自身の想いのように感じました。ピアノと向き合うことを避けて来た梨子の決意が歌詞に表れています。
おいでおいでって無茶は 承知で誘っちゃうよ
おいでおいでって勇気を だせばできるかも
一緒にどっかへ飛びたいよ
じゃあその手 ほら貸して ね 行くんだよ!
最後は、千歌の気持ちに戻ってきます。転校して間もない梨子に対して「スクールアイドル始めませんか?」といきなり誘った千歌ですが、「無茶は承知で誘っちゃうよ」という歌詞がそのまま千歌の行動を表しています。
全体を通して聴くと、はじまりの気持ちをストレートに表現した曲だなとあらためて思いました。
ダイスキだったらダイジョウブ!
第3話で初めてライブをする3人のAqoursが歌った「ダイスキだったらダイジョウブ!」。「好きという気持ちがあれば壁を乗り越えられる」という、無印からブレないテーマを体現しているようなタイトルです。それはある意味μ'sに憧れるAqoursの歌であるとも言え、憧れの力が前向きなパワーになっていることをストレートに表現している曲であるとも言えます。
一曲目の「決めたよ Hand in Hand」では千歌のスクールアイドルに対する気持ちが先行していましたが、「ダイスキだったらダイジョウブ!」にてようやくAqours3人のスクールアイドルに対する気持ちが同じになった印象を受けました。
知らないことばかり なにもかもが(どうしたらいいの?)
それでも期待で足が軽いよ(ジャンプだ!)
温度差なんていつか消しちゃえってね
元気だよ 元気をだしていくよ
「知らないことだらけでどうしたらいいか分からないけど、それでも3人の心をひとつにして不安を吹き飛ばしていきたい」というストレートな気持ちが歌詞に表現されています。劇中での停電の演出も相まって、サビに近づくにつれ歌詞が前向きになっていくのも高揚感を味わえるポイントなんじゃないでしょうか。
キラリ! ときめきが生まれたんだと
気がついたときに 目のまえに キミがいた
サビに至る高揚感は、サビの「キラリ!」という一点で頂点まで高まります。「青空Jumping Heart 」の「青春ぴっかり」という歌詞もそうですが、サンシャイン楽曲になってから「輝き」を別の表現で言い換えることが増えたことで、ラブライブがμ'sだけに特化した輝きの物語ではないことを強く感じられるようになりました。「輝きは自分たちだけのものではなく、みんなのもの」だということを拡めたμ'sですが、それを受けて「自分たちなりのひとつの輝き方」を模索しようとしているのが、この物語が「新しい輝きの物語」たる由縁なのかもしれません。
夢で夜空を照らしたい
Aqoursメンバーに1年生が加入して、6人になって初めて歌った「夢で夜空を照らしたい」。内浦を想う人のあたたかさがそのまま滲み出ているようなゆったりとしたテンポなのがこの曲の特徴です。そして、μ'sに憧れる千歌たちの気持ちも曲の随所に散りばめられています。
波が映した 星の輝き 遠いあこがれの色
いつか叶うことを 信じれば
明日への道が多分 分かるんだ
「星の輝き」「遠いあこがれ」。これはμ'sのことを指しているのでしょう。千歌が1話でμ'sとの出逢いを梨子に話す時には、夕暮れの空にひときわ輝く星が煌きました。
消えない 消えない 消えないのは
今まで自分を 育てた景色
消さない 消さない 消さないように
ここから始まろう 次は飛びだそう
自分を育ててくれた内浦の景色。千歌たちはPVを撮る時、最初は表面的な「景色」を映していましたが、内浦の本当の魅力は内浦の人たちが内浦のことを大好きだと想う気持ちまでもが一緒に溶け込んだ景色ということに気がついてからは、それが伝わるような映像に変わりました。
学校や街のみんなが作ったスカイランタンが「Aqours」という文字を作り上げます。今の彼女たちを育てたのは内浦であり、内浦のことを大切に思う人たちの気持ちだということが強く感じられます。そして、みんなでスカイランタンを作り上げる過程まで描かれていたのは、このPVがAqoursだけでは作り上げることができなかったことを表しており、「みんなで叶える物語」であることが印象づけられます。
空を目指して小さな光 昇る想いをのせて
いつか叶うことを信じるよ
明日への道がいま ひらけたよ
内浦の人たちの気持ちを乗せて、星(μ's)が浮かぶ夜空をAqoursは目指します。大好きな地元に住むみんなの想いが、夢へと向かう彼女たちの原動力になっています。
これは約束 それとも祈り
夢はこれから 大きくなるんだろう
そして繋がる みんな繋がる
夜空を照らすためには
自分たちにとって大切な人たちとの「約束」、そして、自分たちの憧れへと向けられた「祈り」。その両方が今ひとつに繋がり、自分たちが夢を追いかける理由になりました。
「夢で夜空を照らしたい」というタイトルには、「星(μ's)が浮かぶ夜空を、夢へと向かうチカラ(ひとつに繋がった「みんなとの約束」と「自分たちの祈り」)で照らしたい(輝かせたい)」というAqoursの願いが込められているように感じました。
それは階段なのか?それとも扉か?
確かめたい夢に出会えて
良かったねって 呟いたよ
自分たちが目指す夢は「階段」なのか、それとも「扉」なのか。今はまだ分からないけど、それを確かめたいという夢に出会えたことを愛おしく思える気持ち。夢中になれることをずっと模索し続けて来た千歌の心情が反映されているように思えました。
未熟DREAMER
3年生が加入してAqours9人全員が初めて揃って歌った「未熟DREAMER」。お互いを想う気持ちが強過ぎるあまり気持ちがすれ違ってしまっていた3年生の思いと、Aqours9人でまたリスタートしようという気持ちが詰まった楽曲になっています。9話のストーリーがそのまま歌になったような歌詞は、聴いているだけで物語の感動が呼び起こされるます。
いつもそばにいても 伝えきれない思いで
こころ迷子になる ナミダ
忘れてしまおう 歌ってみよう
いっしょにね
スクールアイドルが続かなくなれば鞠莉が自分の将来のことを考えてくれる。鞠莉のことを思った果南は、「鞠莉とスクールアイドルを続けたい」という本心を隠して、「スクールアイドルをやめる」という言葉を自ら口にします。大会で鞠莉が怪我をした時に自らが犠牲になってパフォーマンスを中断したのも、「このまま続けていたら大きな事故になってしまう」という果南の鞠莉を思った気持ちから生まれたものでした。それが、大きな綻びへと発展していきます。
言葉だけじゃ足りない そう言葉すら足りない
故にすれ違って 離れて
しまったことが悲しかったの ずっと
気になってた
言葉が足りずに鞠莉の意思を無下にして留学させてしまったダイヤたち。彼女自身もずっと果南と鞠莉がすれ違ってしまったことを気にかけていました。ダイヤは二人のことが大好きだったからこそ二人の気持ちをよく理解していましたし、それゆえに二人が離れ離れになってしまった時の悲しみも大きかった。ゆえに、一時はあれほど大好きだったスクールアイドルさえも嫌いになったのです。
わかってほしいと願う キモチがとまらなくて
きっと傷つけたね それでも
あきらめきれない自分のワガママ 今は
隠さないから
「今自分が本当に大切な人と大好きなことをやりたい」という気持ち。それに加えて、果南が怪我をしてしまったのが気がかりで、「自分の将来なんてどうでもいい」と考えた鞠莉。留学から戻ってきた鞠莉は、「負けられない」や「リベンジ」という言葉で自分の本当の気持ちを包み隠し、彼女も果南に自分の気持ちを伝えられませんでした。
そんな彼女たちのすれ違いは、素直に気持ちを曝け出し合うことで解消します。
ハグ…しよ?
松浦果南 9話「未熟DREAMER]
これまでの自分たちの誤ちと失われた2年間が精算されます。お互いを想う気持ちが元に戻った彼女たちは、今日からまた新しい一歩を歩きだす決心を抱きます。
力をあわせて
夢の海を泳いで行こうよ
きょうの海を…!
「きょうの海」というフレーズからは、「今日からまたやり直そう」という3年生の想いが感じられます。また、海はそのまま「Aqours」と読み換えてもいいかもしれません。3年生がかつてAqoursという名前で活動していたことを考えても「きょうの海」というフレーズがしっくり来ます。
どんな未来かは 誰もまだ知らない
でも楽しくなるはずだよ
みんなとなら 乗りこえられる
これからなんだね お互い頑張ろうよ
3年生の再起と9人全員が揃ったAqoursの旅立ちの気持ち。
成長したいな まだまだ未熟DREAMER
「未熟DREAMER」というタイトルには、2つの意味が込められているように感じます。どんな未来かは誰もまだ知らないからこそ、これから夢を追いかける楽しみが待ち受けているという想い。そして、お互いの気持ちがすれ違って分かり合えなかった自分たちの未熟さ。いずれにせよ、過去ではなく今日からまた未来へと手を繋いで向かおうという3年生の決意が「未熟DREAMER」では歌われているように思います。
想いよひとつになれ
Aqoursが予備予選で歌った「想いよひとつになれ」。東京で一人で別の夢に向き合う梨子のため、Aqoursは8人でステージに立ちました。別々の場所にいても想いは繋がっている。そんな彼女たちの場所さえ超える強い絆を感じられる歌詞と、11話で紡がれた千歌と曜の歩幅が合う物語も詰まっている楽曲になっています。
やってみて笑顔になれたら、変われたら、また弾けばいい。諦めることないよ。
高海千歌 2話「転校生をつかまえろ!」
周りからの大きな期待で大好きなピアノに向き合えなくなった梨子に対して、千歌は「スクールアイドルをやって笑顔になれたらまたピアノを弾けばいい」と声をかけてあげました。そして、その時はやってきます。
この街や学校や、皆が大切なのは分かるよでもね、梨子ちゃんにとってピアノは、同じくらい大切なものだったんじゃないの?その気持ちに、答えを出してあげて
高海千歌 10話「シャイ煮はじめました」
千歌は梨子の背中を迷いなく押してあげます。ラブライブの予備予選がかぶっていても、梨子にとってはスクールアイドルと同じくらい大切なピアノのコンクールに出て欲しい。千歌の気持ちに心を動かされた梨子は、東京に行く決心を固めます。ラブライブでは常に自分が「やりたいこと」を問われ続けてきましたが、「やりたいこと」が2つ同時にあった時の答えの出し方をサンシャインでは提示してくれました。
そして、梨子が立つステージとは場所を違くしてAqoursの予備予選のステージが始まります。
想いよひとつになれ
このときを 待っていた
梨子の音楽は、常に「輝き」で表現されて来ましたが、その輝きは今では千歌の掌の中にありました。梨子が同じ場所にいなくても、梨子の想いが詰まった音楽は場所も時間も飛び超えて千歌たちの側にありました。遠くで頑張る梨子へとエールを送るようにピアノを弾く振り付けも登場します。
すれ違ったあとで 同時に振り向いた
ほらね 本当は
一緒だったよ気持ちはね
「想いよひとつになれ」では、千歌と曜のすれ違いの物語も表現されていました。親友の千歌と夢中になれることを一緒にするため、ずっと誘い続けてきた曜。梨子を始めとしたAqoursのメンバーの加入で千歌との距離を感じ始めた曜は「器用さのせいで自分が嫌われてるんじゃないか」とさえ思い始めます。
しかし、それは彼女の思い過ごしに過ぎませんでした。誘って断られ続けた曜だけでなく、その誘いを断り続けてきた千歌の方もずっと心苦しさを抱えていたのです。お互い思いが交錯していた彼女たちは、自分たちの気持ちがずっと一緒だということに気づきました。
そのことを気づかせてくれたのは、いつも二人のことを側で見続けていた親友の梨子。千歌と曜だけでなく、梨子がいてくれたからこそ風向きが変わった二人の友情。
そして、友情ヨーソロー(全速前進)の先に、曜と梨子は「なぜ千歌がスクールアイドルじゃなきゃダメだったのか」という、千歌がスクールアイドルを続ける理由にまで辿り着きます。
私や曜ちゃんや、普通の皆が集まってひとりじゃとても作れない大きな輝きを作る。その輝きが学校や聞いてる人に拡がっていく。繋がっていく…それが、千歌ちゃんがやりたかったこと。スクールアイドルの中に見つけた、輝きなんだ。
桜内梨子・渡辺曜 第11話「友情ヨーソロー」
お互いのことを本当に理解し合えた彼女たちは、別々のステージに立っていても想いを同じくして、それぞれがやるべきことに向かい合うことができます。
なにかをつかむことで (夢にもいろいろあるから)
なにかをあきらめない (そうでしょ?)
「なにかをつかむことで なにかをあきらめない」。これは、違う夢に真剣に向き合う梨子の姿勢を最大限賛美した言葉だと思っています。なにか(ピアノ)をつかむことで、なにか(スクールアイドル)を諦めない。今は違うフィールドにいても本当にやりたいことに全力で挑戦し続けることで、もうひとつの未来の可能性までも捨て切らない。無印でμ'sは「それぞれが好きなことで頑張れるなら新しい(場所が)ゴールだね」と歌いましたが、それをより強固なドラマで我々に示してくれたのがサンシャインでした。
少し話がそれますが、ここの歌詞は違うフィールドで活躍してきたキャストたちにも当てはめることが出来ると思っています。真剣にそれぞれの夢に向かいあった結果が、今のAqoursというグループに繋がっている訳です。
だいじな夢追うとき だいじなひとがわかる
二番の歌詞も物語そのまま。本当に自分の大事な夢を追いかける時になって初めて自分にとって大切な人が分かる。自分が思い悩んでいた時、ピアノにまた向き合うきっかけを与えてくれた千歌。梨子にとって本当に大切だと思える人が他でもない千歌であり、Aqoursの8人だったのです。
最初に「8人でステージに立った」と書きましたが、想いをひとつにして梨子を含めてAqours9人で立ったとも言えます。それは、東京で1人頑張ってピアノを弾く梨子も然り。梨子も、9人の想いでピアノを弾き切った。「想いよひとつになれ」というタイトルの通り、違う場所にいても想いを同じくして夢に向き合う少女たちの姿が描かれました。
MIRAI TICKET
ラブライブ!サンシャイン!!1期の最終話となる13話で、Aqoursが地区大会のステージに挑んで披露したのが「MIRAI TICKET」。彼女たちがこれまで歩んできた物語とこれからの未来への旅立ちの決意、そして、輝きたいと願う全ての人たちへの招待がこの曲のテーマだと思いました。
「MIRAI TICKET」について触れる時は、歌唱前に地区予選のステージで披露された「劇」についても触れておく必要があります。
今日は皆さんに、伝えたいことがあります!それは、私たちの学校のこと!街の事です!
高海千歌 13話「サンシャイン!!」
Aqoursは大事な地区予選の舞台で、自分たちが自分たち自身を演じる劇を披露します。なぜ彼女たちはそんな大事な舞台で劇を披露しようと思ったのか。それは、自分たちの学校のこと、街のことを多くの人に伝えるため。彼女たちには目標がありました。それは、「ゼロをイチにする」こと。学校説明会の希望者数すなわち自分たちの学校に入学したいと思う人が誰もいないこと。街や学校のみんながこの街も学校も大好きだと知った千歌は、自分たちの街や学校が素敵な場所だということを多くの人に知ってもらう必要があると考えるようになりました。
ここにいる人は皆ここが大好きなんだよ街や学校も人も大好きなんだよ。それって、ここが素敵な場所ってことでしょ。なのにゼロってことは、それが伝わってないってことだよねラブライブがどうでもいいって訳じゃないけど…ここが素敵な場所だってきちんと伝えたい!そして、0を1にしたい!
高海千歌 13話「サンシャイン!!」
そこには、「勝つため」にラブライブに出場するという目的は存在していませんでした。A-RISE、μ'sの活躍により奇しくも競争主義に陥ったスクールアイドル界において、再び「スクールアイドルが好き」という純粋な気持ちを持って、自由に、そして自分たちなりの輝き方で光をもたらしてくれる希望を有したスクールアイドルAqoursがここに誕生しました。
私達を応援してくれた人は、ゼロ。スクールアイドルは、厳しい世界…そんな簡単ではなかったのです。
Aqours 13話「サンシャイン!!」
千歌たちは、これまで自分たちに起こった全てのことをありのままにステージで披露します。楽しいことばかりじゃなくて辛いことも大変なことも全てを受け入れて楽しんでいくこと。それがこそが本当に輝くことだと知った千歌たちなりの表現の仕方でした。
そして、自分たちのこれまでの出会いや挫折の物語を見る人に伝えるということは、Aqoursの物語を観客に追体験してもらえるということ。視聴者である我々は自ずと知っていましたが、この会場に来ている観客にとっては彼女たちのバックボーンとなる物語については一切知り得なかったといっても過言ではありません。その点において、千歌たちのパフォーマンスは大きな意味があった。見る人がAqoursのメンバーと気持ちを共有することで、まるで自分たちもAqoursの一員であるように思える。劇を通して物語を伝えることで、自分たちの街と学校とAqoursが奇跡の物語で繋がっていることを知ってもらえる機会になったと私は思っています。
そして、決めました。私達は、この街と、この学校と、この仲間と一緒に!私たちだけの道を歩こうと。起きること全てを受け止めて、全てを楽しもうと。それが…輝くことだから!…輝くって、楽しむこと。あの日、0だったものを1にするために!
Aqours 13話「サンシャイン!!」
全てのものが奇跡で繋がって、自分たちの輝き方で歩き出そうと決意したAqours。学校や街のこと、そして自分たちの物語を劇という形で伝えた今、あとは自分たちの想いを歌に乗せて伝えるだけ。
ゼロからイチへ!Aqours!サンシャイーン!!
Aqours 13話「サンシャイン!!」
そして、Aqoursの物語を、未来を、輝きを告げるステージが始まります。彼女たちがこれまで歩んできた物語、これからの未来への旅立ち、そして、みんなと輝きたいという気持ちの全てが歌としてステージの上から伝えられます。
夢が生まれ 夢の為に泣いたときでも
あきらめないことで つながった
みんなみんな 悩みながら
ここへ辿り着いたね
これからだよ今はもう迷わない
Aqoursの物語―夢が生まれたあの日、夢の為に泣いたあの時、楽しいことだけじゃなく辛いことも大変なことも諦めないことで全てが繋がってきました。だから今この場所に彼女たちは立つことが出来ている。ゼロからイチへ。本当の旅立ちはこの場所から始まるのです。
あこがれ抱きしめて次へ進むんだ
僕たちだけの新世界が(きっとある)
We say "ヨーソロー!!"
自分たちの歩き方で夢を追いかけようと決意したAqours。それでも、最初の憧れは胸に抱いたまま。憧れを意味する「ひまわり」に似た「太陽」のステージは、それを象徴しているかのようです。そしてAqoursは、自分たちにしか行けない新世界があると信じて未来へと舵を取ります。
みんな一緒に輝こう!!
高海千歌 13話「サンシャイン!!」
「みんな一緒に輝こう!!」。千歌は、見ている全ての人たちに輝こうと声を上げました。「想いよひとつになれ」が歌われる前にも語られましたが、千歌にとって輝くことは一人では決してなし得ないこと。学校や街の人、そして会場に来てくれた全ての人たちみんなで輝くことで、その輝きは完成されるのです。
10!
浦女の生徒たち 13話「サンシャイン!!」
「10!」という掛け声に象徴される通り、Aqoursの9人だけでは作れない輝き。千歌は、その光景を本当は見たかったのではないでしょうか。「みんな一緒に輝こう!!」。それは、「10!」と叫ぶ浦女の仲間たちに対してであり、会場に来てくれた街の人や観客全員に対してであり、ひいてはこの物語を見ている我々に対して輝きへと招待しようとする言葉。輝きたいと願う人たち全てが10人目のAqoursなのです。
船が往くよ ミライへ旅立とう
青い空 笑ってる (何がしたい?)
ヒカリになろう ミライを照らしたい
「ミライへ旅立とう」「ヒカリになろう」。言葉だけじゃなくて歌でも「みんな一緒に輝こう!!」というメッセージが表現されています。衣装が船上に招待するホストのような格好であることも相まって、「MIRAI TICKET」は輝きたいと願う全ての人に差し出される未来行のチケットだということが分かります。
輝きは 心から あふれ出して
もっと先の景色 望むんだ
そして、歌のフィナーレ。「輝きは 心から あふれ出して」という歌詞の通り、自然と観客がステージに駈け出します。ルールや決まりごとでは縛れない感情や行動。それが、ラブライブでもサンシャインでも何回も表現され続けてきた「輝き」なのです。
13話の冒頭で、自分たちの学校のために必死に頑張る千歌たちの姿を見て「私達も一緒に何か出来ることあるんじゃないか」と声を掛けてくれた友人に、「やろう!みんな一緒に!」と言った千歌。全員がステージには立つことは叶いませんでしたが、あの時ステージに駆け出して歌った全員がAqoursの一員となったことに変わりはないでしょう。
そして、彼女たちの「ゼロからイチへ」という夢は現実のものとなります。
彼女たちが追いかけ続けて成し遂げた最初の夢。みんなで輝いたステージのその先には、新しい未来の景色が広がっていました。
君のこころは輝いてるかい?
君の心は輝いてるかい?
高海千歌 13話「サンシャイン!!」
Aqoursの1stシングルにして、TVアニメ1期13話を締めくくる最後の台詞にもなった「君のこころは輝いてるかい?」。TVアニメ13話を終えてようやく「君のこころは輝いてるかい?」という始まりの場所に立った印象を受けました。
タイトルの「君」というフレーズが印象的ですが、これはμ'sの「僕」の対になっているように思えます。「君」は、穂乃果がラブライブ!2期13話で言った「叶え私たちの夢、叶えあなたの夢、叶えみんなの夢!」の"あなた"であり、劇場版の「SUNNY DAY SONG」で「輝きになろう」と語りかけた"あなた"でもある。僕たち(μ's)の物語が一区切りを迎えた今、その輝きを受け取った少女たちが叶える君(Aqours)の物語。それがラブライブ!サンシャイン!!であり、「君」というフレーズが1stシングルのタイトルに使われた理由だと。
また、「君」という言葉は、Aqoursに限らず、サンシャインの物語に参加する全ての人を表した言葉だと思いました。1期13話のラスト「MIRAI TICKET」で「みんな一緒に輝こう!!」と千歌がAqoursの10人目である観客(メタ的に視聴者である我々だと思っています)に対して歌ったこと、そして「君のこころは輝いてるかい?」と千歌が画面のこちら側に対して言ったこと。
「君のこころは」と聞いているのは、裏を返せば「私のこころは輝いているよ」ということ。13話を通して千歌が自分たちの輝き方を見つけたからこそ私たちに対して伝えることができた言葉であり、今度は視聴者だった我々が輝く番だと語りかけるメッセージのようにも聞こえました。その点では、輝きはサンシャインになって更に拡がったとも言えます。
そして、「君のこころは輝いてるかい?」という曲自体には、「これからが始まりなんだ」という気持ちと「みんな一緒に輝こう!!」と我々に語りかけてくれるようなメッセージが込められている印象を受けました。
きっかけはなんでもいいから
いっしょにときめきを探そうよ
「きっかけはなんでもいいから」。千歌にとってスクールアイドルになりたいと夢に見たきっかけはμ'sでしたが、夢中になれることなら何でもいいんだと我々に語りかけてくれているようです。「いっしょにときめきを探そうよ」というフレーズも、千歌の「みんな一緒に輝こう!!」という言葉に重なります。
ちっぽけな自分がどこへ飛び出せるかな
わからない わからないままで(なんとかなるさと)
Ah はじめよう!
どこへ向かうか分からないけれど夢中になれることを始めてみようという歌詞。サンシャインのキャッチフレーズ「輝きたい!!」がある意味漠然としたものであるように、とにかく今の気持ちが大事なんだとシンプルに言っているようです。
胸に聞いたら"Yes!!"と答えるさ
この出会いがみんなを変えるかな
今日も太陽は照らしてる 僕らの夢
「君の心は輝いてるかい?」に対する答えはもちろん「Yes!!」。2話にも登場したμ'sの「ユメノトビラ」には「Yes!」というフレーズがありますが、何かμ's好きの千歌がリスペクトを込めて歌詞に引用したようにも聞こえます。「この出会いがみんなを変えるかな」。梨子との奇跡の出会いを始め、全ての人たちとの出会いで新たな「みんなで叶える物語」が紡がれようとしています。「今日も太陽は照らしてる 僕らの夢」。太陽はμ'sを初めとしたこれまでのスクールアイドルの輝きを象徴しているのでしょうか。その輝きに照らされて、僕ら(Aqours・みんな)の夢は成長していくのです。
胸に聞いたら"Yes!!"と答えるさ
千歌と梨子のダブルセンター。「想いよひとつになれ」の千歌と曜のダブルセンターもそうですが、これがサンシャインの物語の特性をよく表していると思います。サンシャインは、梨子と千歌、花丸とルビィ、果南と鞠莉とダイヤ、曜と千歌、というように、誰かと誰かの関係性の中から生まれる物語が多かったように思います。想い合いの物語と表現すればいいのでしょうか。その特性が、このダブルセンターにはよく表れているような気がします。「君の心は輝いてるかい?」で言えば、千歌と梨子の奇跡の出会いが落ちサビのフォーメーションでは表現されているように思いました。
今、みらい、変わりはじめたかも!
そうだ僕たちは まだ夢に気づいたばかり
PVには表れていませんが「今、みらい、変わりはじめたかも!」のところで、Aqoursが円陣からひとりひとり振り向く振り付けがあります。これは、Aqoursのひとりひとりが「輝きたい!!」という想いを持って飛び出そうという振り付けなのかなと思いました。「そうだ僕たちは まだ夢に気づいたばかり」。13話を見た後でこのフレーズを聴くと、沢山の挫折を乗り越えた後でようやくスタート地点に立ったなという新たまった気持ちになります。
ユメ語るよりユメ歌おう
サンシャインのEDを飾る「ユメ語るよりユメ歌おう」。冒頭にも引用しましたが、ラブライブの「言葉で語られなくても」「歌にすべてを乗せろ」という暗黙の了解を地で行くようなタイトルだと思いました。「ユメ語るよりユメ歌おう」では、夢へと向かう歌のチカラが歌われています。
ユメを語るコトバより
ユメを語る歌にしよう
それならば今を伝えられる気がするから
「言葉よりも歌で今の想いを伝えることが大切」だというテーマは無印から健在。私はここの歌詞を聞いて、前作で穂乃果が卒業式で述べた送辞を思い出しました。
子供のころから言葉より先に行動しちゃう方で、時々周りに迷惑をかけたりして、自分をうまく表現することが本当に苦手で、不器用で。でもそんな時、私は歌に出会いました。歌は気持ちを素直に伝えられます。歌うことでみんなと同じ気持ちになれます。歌うことで心が通じ合えます。私はそんな歌が好きです。歌うことが大好きです。
多くを語らずとも歌で想いを伝えるのは、歌で自分たちを表現するスクールアイドルであればこそ。言葉では上手く伝えられない気持ちでも歌にすればその気持ちを伝えることができるのです。
ユメを語る言葉から
ユメを語る歌が生まれるんだね
それでも、歌が言葉から生まれることもまた真実です。劇中では言葉で彼女たちの気持ちは伝えられてきましたし、その言葉からAqoursの物語と歌は生まれました。
ミライ望む言葉から
ミライ望む歌になるよ
2番の歌詞を見てもそれは変わりません。長い物語を経て紡ぎ出された「MIRAI TICKET」を初めとして、「ミライ望む歌」をAqoursは言葉から紡ぎ出してきました。
感じたいな ときめきたいな
君が 願う ことを 僕も
ねがってた 心は 近づいてる
それが嬉しいね
ここは3年生が歌っていることもあり「未熟DREAMER」を思い出させるような歌詞ではありますが、彼女たちに限らず、すれ違いながらも想いを共有するに至った全ての登場人物のことを歌っているようにも聞こえます。
おいでよ…おいでよ!
画面のこちら側にいる我々に対して、語りかけてくれている言葉のように聞こえます。劇中で「君のこころは輝いてるかい?」と千歌が語りかけてくれたように、我々も「みんなで叶える物語」の中の「みんな」であることを強く印象づけてくれるフレーズです。
Singing my song for my dream!
Singing my song for my dream!
「私の夢のために私の歌を歌う」。これまでμ'sに憧れて歌を歌い続けてきたAqours。いつしか彼女たちは、自分たちなりの夢への歩き方を見つけて、自分たちの歌を歌うようになりました。楽しいことばかりじゃなくて辛いことや大変なことも全て受け入れて、言葉から物語を、歌を紡ぎ出すようになりました。「ゼロからイチへ」という最初の夢が叶ったAqoursが次に願う夢は、次に紡ぎ出す歌はどんなものになるのか。まだ、「ラブライブ!サンシャイン!!」は新しい夢へと向かう大きな物語の旅路の途中。これからも、彼女たちが紡ぎ出す新たな夢のために歌う歌を追いかけ続けたいと思います。
Step! ZERO to ONE
冒険に出るんだ
最初はひとり
やがてみんなとめぐり会えるかも
ゼロから一歩は勇気が必要
変わりたいStep! All Right!!
2017年2月25日、26日にはAqoursキャストによる初のワンマンライブ「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours First LoveLive! ~Step! ZERO to ONE~」が開催されます。そのタイトルが「Step! ZERO to ONE」であること。「ゼロからイチへ」がサンシャインの大きなテーマだっただけに、この曲もこのライブにおいて大きな意味を持つ曲になることでしょう。
冒頭の歌詞は、千歌ひとりからスタートしたAqoursが様々な物語を経て9人になったことを強く印象づけるものになっています。そして、サビの歌詞。
変われそうで
変われないときだって
感じてるから こんどこそ こんどこそ
ゼロからイチの扉を開けよう
変わりたいときなんだ
たぶんこの先の未来は謎のままだね
「Step! ZERO to ONE」は元々1stシングルに収録された曲ですが、TVアニメを経て歌詞に大きなコンテキストが付与された曲のひとつだと思っています。「変われそうで 変われないときだって感じてるから こんどこそ こんどこそ ゼロからイチの扉を開けよう」。劇中で二つのゼロに直面して、なかなか変えられない現実にやきもきしていたAqours。それでも、そんな現実をなんとかして変えたいと願う彼女たちの気持ちが歌にはよく表れています。「たぶんこの先の未来は謎のままだね」。劇中で千歌が語った言葉が思い出されます。
ううん、何も見えなかった。でもね、だから思った。続けなきゃって。私、まだ何も見えてないんだって。このまま続けても、0なのか…それとも1になるのか、10になるのか。ここでやめたら、全部わからないままだって…だから私は続けるよ。スクールアイドル。だってまだゼロだもん
高海千歌 8話「くやしくないの?」
スクールアイドルを続けてもゼロのままなのか、イチになるのか分からない。でも、ここで諦めたら全てが分からないままで終わってしまう。たぶんこの先の未来は謎のままだね」という歌詞もまた、彼女たちの気持ちが強く反映されたものになっていました。
ZERO to ONE, ZERO to ONE, ZERO to ONE…STEP!
ZERO to ONE Steppin' my heart!
Aqoursキャストによる初のワンマンライブ。サンシャインがラブライブという大きなコンテンツを引き継ぐ作品であるだけに、その期待やプレッシャーは大きいものだと思います。しかし、作中で「ゼロからイチへ」という目標を成し遂げた千歌たちのように、Aqoursキャストも最初の一歩を踏み出して大きな舞台で輝いて欲しい、というのが一ファンである私の願いでもあります。
総括
「ラブライブ!サンシャイン!!」の楽曲をアニメに登場した曲を中心に振り返って来ましたが、やはりサンシャインでも「音楽がいつも物語と寄り添ってきた」ことが分かっていただけたかと思います。
Aqoursの曲には彼女たちの物語が詰まっています。
μ'sへの憧れ、奇跡の出会い、自分たちが育った街のこと、すれ違った想い、それぞれの夢、未来への航海、みんなで輝くこと―
Aqoursの物語をより深く理解することで、彼女たちの歌に更に気持ちを寄せて聴くことができます。13話で千歌たちが自分たちの物語を伝えることで、自分たちのパフォーマンスを見た人たちに「輝きたい!!」という気持ちを喚起させたように、私たちもまた彼女たちの物語に触れてAqoursの物語と歌のつながりのチカラを意識する必要があるのではないでしょうか。
まだ、「ラブライブ!サンシャイン!!」は走り始めたばかりの輝きの物語。「ゼロからイチへ」。Aqoursが叶えたいと願う次の夢が、物語で、歌で紡がれる瞬間を楽しみにしながら、その日を今かと待ち詫びたいと思います。