トランプ新政権始動へ 新大統領の政策に世界が注目

トランプ新政権始動へ 新大統領の政策に世界が注目
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アメリカのトランプ次期大統領は今月20日に就任します。国益を最優先にするアメリカ第一主義を掲げるトランプ氏は、TPP=環太平洋パートナーシップ協定からの離脱を明言するなど、オバマ政権とは異なる方針を打ち出していて、新たな大統領の政策に世界が注目しています。
トランプ氏は、今月20日、第45代の大統領に就任し、首都ワシントンの連邦議会の議事堂前で行われる就任式に臨みます。

トランプ氏は就任から100日以内に取り組む課題として、国益を最優先にするアメリカ第一主義に基づく政策を掲げていて、就任初日にTPPからの離脱を正式に表明するとしています。

また、エネルギー分野の規制緩和や不法移民対策の強化なども掲げていて、具体的な政策が注目されます。

このほか、外交の分野では、「台湾は中国の一部」という中国政府の主張を認識するとした、アメリカの「1つの中国」政策を堅持するかは、中国の対応しだいだと述べるなど、これまでのアメリカ政府の外交方針を転換する可能性にも言及しています。

新政権の閣僚の人選はほぼ固まり、今月3日から招集される新しい議会で公聴会が開かれ、閣僚の承認について審議が行われます。ただ、国務長官に指名されたティラーソン氏はロシアとの関係の深さが指摘されるなど、承認手続きが難航することも予想されます。

一方、先月中旬に発表された調査会社、ギャラップの世論調査によりますと、トランプ氏の政権移行を評価した人は回答者の48%で、これはオバマ大統領のときの75%、ブッシュ前大統領のときの65%、クリントン元大統領のときの67%を下回り、民主党の支持者を中心にトランプ氏への反発が根強いことも浮き彫りとなっています。

超大国アメリカの新たな指導者として、トランプ氏が国内を結束に導き、国際社会の課題とどう向き合うのか、世界が注目しています。

トランプ氏のアメリカ第一主義とは

トランプ氏の上級アドバイザーを務めたジャック・キングストン前下院議員は、先月、NHKのインタビューに対し、トランプ氏が掲げる「アメリカ第一主義」について、「アメリカの利益を促進することを、もっと現実的に追求するということだ。例えば、アメリカは世界最大の食糧ドナー国だが、アメリカへの敬意を払わない国にはあげたくないということだ。われわれは世界の警察官ではないし、ましてや世界のサンタクロースでもないのだ」と述べました。

そして、トランプ新政権が目指す大きな柱は「国内経済の復活と強い安全保障政策」だと説明しています。

このうち、経済については「トランプ氏は、アメリカに再び多くの製造業を復活させたいと考えている。彼の意図は、国際経済からの撤退ではない」としています。

そのうえで、NAFTA=北米自由貿易協定については、「トランプ氏は、以前はNAFTAを破棄すると主張したが、今ではその主張は変え、アメリカの雇用を有利にするためNAFTAを修正したいと考えている」とする一方で、TPP=環太平洋パートナーシップ協定については、「TPPは、今回の大統領選では民主党も共和党も反対した。私は、TPPは現在の形では死んでいると思う。トランプ氏は2国間の貿易協定に乗り出すかもしれない」と指摘しました。

そして、外交・安全保障については「中東をさらに安定化させるためには、過激派組織IS=イスラミックステートを打倒するために協力する国が必要だ。その意味ではロシアとも協力できるだろう」と述べました。

また、対中政策について、トランプ氏が正式な外交関係のない台湾の蔡英文総統と電話で直接会談したことを指摘し、「オバマ大統領がアメリカのキューバ政策を見直したように、トランプ氏も台湾に対する政策を変える権利がある。あの電話会談は、トランプ氏が台湾との関係をいくらか変えようとする現れだろう」と説明しました。

そのうえで、「トランプ次期政権は、中国の海洋進出や為替の違法操作、サイバー攻撃などを懸念している。日本はわれわれの重要な同盟国であり、その重要な役割はさらに増すことになるだろう。トランプ氏と安倍総理大臣がすでに会談を行い、このあとも2人が会談する予定があるということだが、日本にとって非常に良好なサインだ」と述べ、トランプ新政権は日米関係を重視すると強調しました。

一方、トランプ氏に対して、アメリカの分断がさらに深まりかねないと懸念の声が上がっていることについて、「トランプ氏は、批判の声はある意味、無視している。われわれは、批判への最善の答えはいい経済状況を作ることであり、仕事さえ得られれば、抗議活動はなくなると考えている。トランプ氏は、もう選挙戦の候補者ではなく、大統領としてアメリカを統治せねばならず、それに向けて取りかかっていく」と述べました。

専門家「スマホをやめるよう進言すべき」

アメリカの大統領制度とその歴史に詳しいワシントンのシンクタンク、CATO研究所のジーン・ヒーリー氏は「政策がどのような方向に向かっていくのか、見通すことは難しい。トランプ氏のツイッターを日々、見ていくしかない」と述べました。

そして、「政策について、ツイッターで知らされるのは混乱の元になる」と述べ、トランプ氏が選挙で勝利してから、ツイッターで、核政策をめぐる考え方をつぶやいたり、南シナ海での中国の対応を非難したりした手法には問題があるという考えを示しました。

そのうえで、「周辺にいる人がスマートフォンをやめるようトランプ氏に進言すべきだ。トランプ氏のツイッター上の気まぐれな発言で、外国との緊張を高めたり、長年維持してきた政策を変えたりすることは、誰も望んでいない」と述べました。

さらに、メディアとの関係について、「トランプ氏は、大統領に対する批判には断固とした対応を取ると述べてきた。自由な民主主義の国として、大統領に対する批判や調査は許されるべきだ」と述べ、懸念を示し、大統領就任後の対応を注意深く見ていくべきだとしています。

一方、ヒーリー氏は、トランプ氏がどのような大統領になるのかについては、これまでの言動から推測すると、20世紀の初めのセオドア・ルーズベルト大統領に似ているとしたうえで、「ルーズベルトは、大統領は憲法を超えることができると信じ、国内外の政策を激しく変えた。衝動的で、声が大きい指導者だった。トランプ氏はこのタイプだ」と述べました。

オバマ大統領 8年間の実績を強調

今月、任期を終えるアメリカのオバマ大統領は、1日、みずからのツイッターに新年のメッセージを投稿し、8年間の実績を強調しました。

この中で、オバマ大統領は「将来のことを考えるとともに、目覚ましい進展があった、この8年間についても少し考えてほしい」と呼びかけています。

そのうえで、大統領を務めた2期8年の間に、リーマンショックから経済を立て直したことや、全米のすべての州で同性婚が認められるようになったことなどを挙げています。

また、みずからが導入した医療保険制度改革、いわゆる「オバマケア」についても「医療保険費は何十年も高騰してきたが、今ではほとんどのアメリカ人が経済的に安全な医療保険制度に加入できるようになった」として意義を強調しています。

オバマケアについて、トランプ次期大統領が廃止も含めて見直す考えを示している中、アメリカのメディアによりますと、オバマ大統領は今月4日、民主党の上下両院の議員とともに、オバマケアの存続に向けて協議する予定です。

トランプ次期大統領によって、オバマ政権の政治的な遺産=レガシーが覆される可能性もある中、オバマ大統領としては8年間の実績を改めて強調したい狙いと見られます。