【箱根駅伝】青学大、強さの原動力は素敵なステーキ!
箱根駅伝往路3連覇を果たした青学大陸上競技部のランナーたちが常連として通いつめている店がある。町田寮(東京都町田市)の近くにある地中海料理店「コシード」。部員らの健脚を作り上げているスペシャリテは「スペシャル牛ステーキ ガーリックソース」(昼1000円、夜1050円=いずれも税込み)だ。オーナーの田中勲さん(45)は「往路はハラハラしましたが、復路は逃げ切ってくれると思います」と総合V3を確信している。
常連客たちの力走を、自宅のテレビ中継で見つめた田中さんは「いつも来てくれる子たちが頑張っている姿は本当に感動します」と声を弾ませる。
青学大の選手たちが足繁く通う「コシード」。常勝軍団の健脚を作り上げた不動の定番メニューは「スペシャル牛ステーキ ガーリックソース」だ。脂身の少ない赤身のランプ肉を細切りにし、ガーリックしょうゆで味付けしたもの。通常でもライス、サラダ、スープが付くが、青学のランナーに提供する場合は肉とライス大盛、デザートやコーヒーもサービスしている。「学生さんですからね。正直、利益はほとんどありませんが、喜んでくれれば何よりです」。部員たちの人気ナンバーワンメニューで、復路8区にエントリーしている吉永竜聖(3年)も毎回オーダーする。
店は1986年、町田でオープン。現在地に移転し、町田寮から徒歩約10分になった約20年前から青学陸上部員の憩いの場となった。寮では原監督の妻・美穂さんが腕を振るう料理に支えられている部員たちだが、時々外出し「コシード」に足を運んでいる。「毎日のように昼も夜も誰かしら来てくれますし、地方勤めになったOBの子も上京する度に寄ってくれる。本当にありがたいです」(田中さん)。「3代目山の神」こと神野大地(2016年卒)は今も常連。2度の区間賞を獲得した高橋宗司さん(15年卒)に至っては、店が好きすぎて部の引退から就職までの2か月間、アルバイトとして勤務したほどだ。
昨年の年内最終営業日だった12月29日も、往路優勝に大きく貢献することになる2区・一色恭志と3区の秋山雄飛(ともに4年)らメンバーたちで店を訪れ、舌鼓を打った。
20年近く青学生と接してきた田中さんは、常勝軍団となった2年前から部員たちの変化に気づいている。「以前はバラバラで来ていたのですが、今はみんなで来てくれます。よりメンバー同士の一体感があるように感じるんです」。3日の復路。完全優勝での3冠達成を心待ちにしている。(北野 新太)
家族同然の付き合いをしているからこそ、悲しい別れもあった。田中さんの父で「コシード」創業者の正明さんが昨年10月1日、膵臓(すいぞう)がんのため、80歳で亡くなった。田中さんは「箱根の前の大切な時期に心配を掛けたらいけないと思って、部員のみんなにはちゃんと伝えていないんです」と明かす。
一昨年、体調を崩して入院した正明さんのために、部員たちは寄せ書きを贈って激励。一度は店の厨房(ちゅうぼう)に戻れるまでになったが、再び容体を悪化させた。「家族のように愛されることを目指して創業した父にとって、青学の部員が来てくれることは誇りでした」(田中さん)。母の勝子さん(71)は「子供のようにかわいい子たち。悔いのないように走ってほしいです」と話している。
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