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創業者の「もったいない」で誕生

できたてのベビースターラーメンが香ばしい香りと共に機械から出てくる=三重県津市のおやつカンパニー久居工場で、山本萌撮影

 菓子の祭典「第27回全国菓子大博覧会・三重」(お伊勢さん菓子博2017)が4~5月、三重県伊勢市の県営サンアリーナを主会場に開かれる。日本書紀に心満たされる地との意味も込めて「美(うま)し国」と残る三重は、伊勢参宮街道の茶店から菓子文化も発展してきた。県内初、東海地方でも40年ぶりの開催となる菓子博を前に、三重が生んだ「美し菓子」と菓子作りに情熱を注いできた人たちのドラマを紹介する。

 年間約2億袋を売り上げる、「おやつカンパニー」(津市)の看板商品「ベビースターラーメン」は「もったいない精神」から生まれた。即席麺製造を主力事業とした前身の松田産業の創業者が、加工時に出る麺の「かけら」に注目したことがきっかけだった。

 1948年に創業した松田産業は、翌年から即席麺の製造を始めた。蒸した麺を工場屋上の竹網に並べ、天日干し後に箱詰めして出荷する。戦後まもない時代。創業者の松田由雄氏は、乾燥時にどうしても出る麺のかけらがもったいなかった。

 松田氏は、かき集めて味を付けてみた。油で揚げると何とも言えないうまみが口に広がった。休憩時や残業中の従業員に差し出した。誰もが目を見開いた。商品化を決め、59年、「ベビーラーメン」として世に出た。

 価格は1袋30グラムで10円。まだ空腹の時代。たくさん食べたいという子どもたちをターゲットにした。ただ当時、麺スナックは世になく、手で直接食べるという発想も珍しかった。「インスタントラーメンのかけらを集めただけでは」「どうやって食べるの? お湯をかけるの?」。食品問屋からは戸惑いの声も上がり、取り扱う店は増えなかった。

 社長自ら動いた。県内外、営業に出向いた。「手に取ってもらえば、おいしさがわかる」。確信を持って靴底をすり減らした。努力は実る。口にした名古屋の問屋から評判は全国に伝わった。

 師走の津市森町。丘に建つ同社久居工場には香ばしい香りが漂っていた。小麦粉を練って麺にし、蒸した後にスープで味をつける。油で揚げ、短く切断。大量生産が順調な売り上げを物語っていた。

 開発本部長などを務める稲垣庄平さん(59)によると、味と食感も時代の要請に応え、工夫を重ねている。健康志向から塩分は発売当初の3分の1。ソフトな食感が好まれ、硬さは3分の2。太さも変えながら、ヒット商品であり続けている。

 年末には2代目キャラクターの「ベイちゃん」「ビーちゃん」兄妹の引退と、新キャラクターも発表した。2代目兄妹は「文字の読めない子どもでも種類が分かるように、味によって服装を変えた」と開発本部の坂本茂樹課長(44)。商品展開の案内人となり、商品の年間売り上げを88年のベイちゃん誕生前から約4倍に押し上げた。名前を公募中の3代目キャラクターを迎え、伝統の味は、また次の時代へと向かう。【山本萌】

ことば【おやつカンパニー】

 1948年、松田産業として創業。社名を80年に松田食品と改め、93年におやつカンパニーへ変更された。資本金64億2500万円、従業員380人。「たっぷり、たのしい」をおやつ作りの理念に掲げ、黄色を基調としたイメージカラーを制服や工場外観などに使用している。三重県津市一志町田尻に本社を置く。

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