「だーかーらー、いま地方は中央資本にケツの毛までむしられるってことだよ!」
下校中の女子高校生が友達に振るう一言が強烈だ。
©こばやしたけし Web4コマ 地方は活性化するか否か
2013年からWEBで連載していた4コマ漫画「地方は活性化するか否か?」(略称・ちかすい)が2016年12月、秋田県大館市で舞台化され、再び注目を集めている。
作者のこばやしたけしさんに「地方創生」への思いの丈を聞いた。
柔らかい絵柄と的確な指摘
作品は、架空の地方都市・みのり市が舞台。
同市のみのり高校の生徒たちが、東京から出戻った転校生をきっかけに社会科教師とともに「地域活性研究部」をつくり、街の衰退にどう対処すべきかを考えていく。
平成の大合併で多発した、なんとなく縁起が良さそうな創作地名やひらがな地名。
「〇〇〇ピア」や「〇〇〇ぷらざ」といった「ハコモノ」が、「にぎわい創出」などのお題目の下で人影が見えない中心街に次々と建つ光景。
みのり市も、そんなありがちな地方自治体の一つと設定される。
©こばやしたけし Web4コマ 地方は活性化するか否か
作中では、現在の地方活性化で頻繁に語られる言葉に次々と斬りかかる。
地域の魅力について「おいしい農産物」という回答には、「東京でお金を払えばいくらでも手に入るモン」。
活性化の内容も「にぎわい」や「イベント開催」と言う生徒に、教師が「カネだよ!カネを得る事っ!」と容赦ない。
衰退する地方の人々が“うすうす勘づいていること”を、柔らかい絵柄と的確な台詞で指摘する。
若い世代に同じ目線で読んで
こばやしさんは現在、秋田市在住。
日頃の生活やニュースで疑問に感じたことを物語に反映している。
よくニュースで見聞きする「地域活性化」「地方創生」という言葉ですが、なかなか一言で言い表せる方って少ないと思います。
実際にはどういう問題なのか知らない、興味もないという方が多いように私自身感じております。
そういった疑問を、架空の地方都市を舞台に高校生キャラで分かりやすく問題提起できないかと書き始めました。
©こばやしたけし Web4コマ 地方は活性化するか否か
「マンガ+女子高生+地方活性化」の設定は、ギャップによるインパクトを狙ったという。
まず読み物として面白くなければ読んでもらえないですし、興味も引けません。
きちんと「興味を引く」という部分を作り、テーマである地方創生、地域活性化とところまで引っ張ることが大事です。
なにより若い世代にも読んで頂きたいと思っていたので、同じ目線で読めるよう高校を舞台にしました。
車ではなく徒歩で移動
説得力のある台詞の数々は、こばやしさんの地道な情報収集が源だ。
全国的な社会情勢だけでなく、地元紙やローカル番組を欠かさずチェック。
地方発信のブログやサイト、SNSを巡り地域の話題に常にアンテナを張っている。
さらに、地方では当たり前の車移動ではなく、徒歩で動くことを意識している。
歩くと、車では見過ごしていた風景を再認識できることが多いのです。
それだけでもずいぶん考え方が変わってきます。
大事なことは問題意識を持って情報に触れることです。
©こばやしたけし Web4コマ 地方は活性化するか否か
また、自ら取材活動に出向くことも少なくない。
リアリティについても、自分なりに取材や調査をかなり綿密に行いました。
マンガというとノンフィクション性が強い部分もありますが、しっかりと現実的に感じてもらえるように実際の現場の声に重点を置いた調査を心がけています。
地方相がブログに、高校教材にも
2015年11月には当時の石破茂・地方創生担当大臣(鳥取県出身)が自身のブログで紹介し、話題になった。
今年4月には岡山県美作市の県立林野高校が書籍版を教材に採用。
「同じ高校生が地域活性化に取り組むというコンセプトは、生徒たちが共感できる」として導入されたという。
こばやしさんによると、授業は来年度も継続される。
地方の高校生の授業の一環として著書を使用してもらえるのは、若い方々に地域の問題について考えてほしい、という私の要望とマッチしており、大変うれしかったです。
©こばやしたけし Web4コマ 地方は活性化するか否か
12月11日には、大館市で地元アイドルグループ「ハチ公まちあわせガールズ」により舞台化された。
実際に地方に住む若者たちが演じたことで、自然な感情移入が光った演技だったという。
「自分ごと」として捉えて
12月3日に公開した142話で、登場人物が問い掛けている。
現状をこのまま先送りすることで、将来負担を背負うのは私たち若者だからね
こばやしさんは、地方に住む若者へ自分の住むどんな地域に住むかを考えるようにしてほしいと言う。
「興味を持つ」「現状を知る」ことが第一歩だと思います。
「これからどう暮らすのか?」を漠然とではなく、自分ごととして考えることがいちばん重要ではないでしょうか。
都会へ出た人はたまに帰省して、自分の故郷が今どうなっているのかを考える時間を持ってほしいです。
※初公開時、教材に採用した岡山県の高校を「美作高校」としましたが、正しくは「美作市の林野高校」でした。お詫びして訂正いたします。(2017年1月3日)
- 出典元:Web4コマ 地方は活性化するか否か(2013年12月9日~2016年12月3日)
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