著名投資家はどうみているのか?
英EU離脱やトランプ大統領の誕生など“想定外”のイベントが発生した2016年。2016年の予想は“ほとんどが外れた”とは言え、専門家の見方は気になるところであり、中でも著名投資家の発言となれば尚更だ。著名投資家は2017年をどう見ているのか、見解をまとめてみた。
“投資の神様”ウォーレン・バフェット氏は、大統領選挙中は民主党のヒラリー・クリントン候補を支持し、共和党のドナルド・トランプ候補を厳しく批判していたが、選挙後に「トランプ氏勝利でも株式相場の見通しはなお明るい」と述べており、2017年の株式市場を楽観視している模様だ。
ただし、トランプ次期大統領の通商政策には懸念を表明しており、中国やメキシコに関税を課すことにつては「良からぬ考えだ」と眉をひそめている。とはいえ、「選挙戦中の公約が選挙後に実施されないことは多々ある」とも述べており、「景気の後退を引き起こすような政策が実施されることはない」としていることから、トランプ次期政権が“現実路線”に転じることに期待を寄せている様子がうかがえる。
“ヘッジファンドの帝王”ジョージ・ソロス氏はどうか。ヒラリー・クリントン候補を熱烈に支持していたこともあり、最近のメディアでの発言はもっぱらトランプ氏やロシアのプーチン大統領への批判が多いのだが、直近の投資先から同氏の見通しを垣間見ることにしよう。
9月末のポートフォリオでは、6月末に比べてエネルギーと新興国への投資を積み増している。その一方で、保有していた金ETF(上場投資信託)をすべて売却している。新興国のなかでも特に中国に力を入れている。
ポートフォリオの動きから推測すると、金から新興国への資金シフトはリスクオフからリスクオンへの切り替えと考えられるので、景気見通しは明るいと考えている模様だ。また、原油価格も回復を見込んでいるとみられる。
“ヘッジファンドの先駆者”ジム・ロジャース氏は、トランプ次期大統領の誕生は短期的には景気にプラスだが、長期的には懸念が多いと見ている。
減税やインフラ投資は米景気を押し上げることから当面はドル高や商品高が続く見通しだ。一方、ドル高は新興国からの資金流出を招くほか、次期政権の保護主義的な貿易政策は世界経済にとってネガティブだ。
ただし、政治家は状況に応じて考えを変えるので、極端な保護主義には走らず、貿易戦争は回避されるとみており、この辺りは“神様”と似た見解だ。とはいえ、中期的には米財政赤字の問題が浮上し、2017年後半には株価が下落、2~3年以内に世界経済は厳しい状況に陥るのではないかと危惧している。
“債券王”ビル・グロス氏はトランプ政権の経済政策の“負の側面”に警鐘を鳴らしている。
次期政権の減税やインフラ投資は短期的には株価を押し上げ債券価格を下落させることは疑う余地がないとする一方で、長期的にみれば反グローバリズムは企業収益を圧迫することになると懸念している。また、ドル高は多国籍企業、中でもテクノロジー企業に打撃を与えるとしている。対処法として、現金の比率を引き上げ、債券のデュレーションを短くし、リスク資産を減らすことを勧めている。
“新債券王”のジェフリー・ガンドラック氏は、米大統領選挙でのトランプ氏の勝利をかなり早い段階から予想し、失笑を買っていたが、結果は周知の通りだ。選挙前からトランプ氏の勝利で債券価格の下落(金利上昇)と株価の上昇を予想していた。
「トランプラリー」はまさにガンドラック氏の予想が的中した訳だが、同氏はこのラリーは長くは続かないと考えており、遅くとも大統領就任式(1月20日)までには株価は下落に転じると述べている。金利の上昇が、ハイ・イールド債や株式、住宅市場に悪影響を及ぼすからだ。ただし、これはあくまで短期的な見通しであり、米長期金利は今後4、5年のうちに6.0%まで上昇するとの見通しを維持している。
最後に、世界最大のヘッジファンドを運用するレイ・ダリオ氏の見解を紹介しよう。同氏はトランプ次期政権をかなり前向きの評価しており、注目点として次期政権の“ビジネス経験”を挙げている点が非常にユニークである。
オバマ政権では122人のスタッフのなかでビジネス経験者はわずか5人に過ぎず、ほとんどを政治家が占めていた。一方、トランプ次期政権では138人のスタッフ中、83人をビジネス経験者が占める予定となっている。
このように、圧倒的に豊富なビジネス経験が“アニマル・スピリット”に火をつけ、減税やインフラ投資で測れるよりもはるかに大きな影響を米経済にもたらし、「信じがたいほどに興味深い4年間が訪れる」と述べている。
利益を生む人たちは、今のような「力が制限された悪役」ではなく「著しい力を持つヒーロー」となり、現金をリスク資産へとシフトさせる動きが顕著になるだろうと予想している。(ZUU online 編集部)
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