今年もやります、毎年恒例のまとめ記事。例年通り「おとなもこどももおねーさんも」を念頭に、2015年に完結を迎えた作品をピックアップしています。今年はとにかく迷いに迷ってチョイスしました。泣く泣く外した作品もあり……。一応順位付けしていますが、あくまで目安として見て頂ければ……。
ではではどうぞ……
1.鈴木ジュリエッタ「神様はじめました」(全25巻)
……アニメ化もされた本作が、ついに完結を迎えました。2016年に発売された2巻はクライマックスにかかってはいたものの、分量的にはその後の物語を締めにかかる部分が多め。そのため今年だけで言えば、比較的落ち着いた、けれどもとても幸せに満ちたシチュエーションを楽しむことが出来る内容となっていました。好きな相手のために、時には自分の命を賭すことすら厭わない、頑張り屋のヒロイン・奈々生が最後まで素晴らしく、彼女の頑張りが報われて本当によかった。もちろん巴衛や脇役たちも魅力的なのですが、どうしたって中心は彼女であり、彼女無しにはどのキャラも語れないわけですよ。それって何気に凄いことなんじゃないかと思ったり。面白い作品とか、凄い作品とか、色々と簡単に形容する言葉はあるわけですが、本作は言うなれば「大事にしたい作品」というのが自分の中でしっくりくる。最後まで追いかけて本当によかったと思える作品でした。ありがとうございました!
2.雲田はるこ「昭和元禄落語心中」(全10巻)
……こちらもアニメ化された作品ですね。創刊されたばかりのITANを支えた本作も、2016年で完結を迎えました。昭和落語界を舞台に描く、人情落とし噺。1巻が登場したときは衝撃的で、「このマンガがすごい!」もこれが1位だろうなぁ…なんて思いながら自らも票を投じたわけですが、まさかの全裸男と女子高生の同居ラブコメに1位を掻っ攫われるとは(こっちにも票入れたんですけどね)。時に軽妙に小気味よく、時に重くシリアスに……全編に渡ってとにかく濃密。落語をつなぐことは、人と人のつながりなくしてありえないもので、落語と人間その二つを、落語に魅せられ囚われた八雲という人物を中心に、見事描ききってくれました。この作品の魅力を語ろうとしても、自分の乏しい語彙力では上滑りするばかりで、きっちり伝えきれる自信がありません。是非とも手に取って、そのすごさを目の当たりにしてもらいたいところです。
3.天乃忍「ラストゲーム」(全11巻)
……ずっとニヤニヤを届け続けてくれた本作も、11巻にしてゲームセット。ニヤニヤ納めとなりました。最後もね、もうびっくりするぐらい予想通りの展開なんですよ。お約束であり、王道であり。最終巻の表紙とか、もう読む前から「はいはい、そうですね。ありがとうございます。」となるぐらいで。でもそれこそが、我々が待ち望んでいた展開であって、最高な結末なわけです。途中からはもうただ幸せな時間が流れるだけだから、もうニヤニヤを通り越して笑えてくるほどでした。とにかくニヤニヤしたい人にオススメのラブコメでございます。
4.子鬼36°C「あの日、世界の真ん中で」(全1巻)
……1巻完結作の中ではこれが一番印象に残りました。田舎町で育った少年と、その幼馴染を描いた青春モノ。閉塞感のある町で、そのエネルギーを持て余しながらくすぶる主人公と、そんな彼を尻目に陸上でどんどんと先へ行ってしまう幼馴染の少女。幼馴染との恋愛に、部活にバンドにセックスに、10代ならではの溢れる衝動に……ともすれば”一昔前”と言えなくもない雰囲気の青春ものモチーフを、これでもかと詰め込んだような作品。実在するめちゃめちゃマイナーな曲をモチーフにしちゃうあたり、登場する少年少女も尖っていますが、作品自体がめちゃめちゃ尖っていて、とにかくエモい。「10代のあの頃抱いていた感情」をグワッと掻き立てられるような、エネルギー溢れる物語です。好きな人はドハマリしそうな、独特の雰囲気溢れる一作。あまり話題にならないレーベルだけに、是非ともサルベージしておきたいところです。
◆抑えきれない衝動…青春が、胸を刺す。 -小鬼36°C「あの日、世界の真ん中で」
5.小西明日翔「春の呪い」(全2巻)
……「このマンガがすごい!2017」で2位に輝いた本作は、12月末に全2巻で完結しました。絵柄は日本橋ヨヲコ先生を彷彿とさせ、ストーリーはレーベルのゼロサムとは全く相容れないような、現実ベースの暗く重苦しいもの。最愛の妹をガンで亡くした姉・夏美は、妹の婚約相手であった男性に好意を抱き、相手もまた同じように夏美に好意を……という、亡き妹を交えた禁断の三角関係を描き出します。とにかく最初から最後まで重い、重い、重い。悩み、苦しみ、潰されそうになりながら、幸せな瞬間なんて本当に少しだけ。けれどもひとたび読みだしたら、全然するっと読めてしまうし、ぐいぐい物語に引き込まれてしまうのだから不思議。決して明るい作品ではありませんが、2016年の女性向けマンガシーンを象徴する一作でもあると思うので、ぜひ一読することをオススメします。
◆遺されたのは、わたしと、妹の恋人だった男。 -小西明日翔「春の呪い」1巻
6.鳥飼茜「おんなのいえ」(全8巻)
……これも「このマンガがすごい!」で1位投票したことのある、思い入れのある作品です。独身アラサー女子が、彼氏と別れて(捨てられ)再出発を期す、再生物語。再出発と言っても、全然ポジティブなものじゃありません。予定していなかったことで、どうしてよいか分からないし、気持ちは落ちる落ちる。そんな中、母や妹、出会った男性たちとの触れ合いを通し、”おんな”として生きていく上で、どうしたって考えなくてはならない、家族、結婚、恋愛、そして人生のひとつのあり方を描き出していきます。その過程は不格好で、時にしんどさも伴います。けれどそれゆえのリアルさがあるし、良い味わいとなって、共感につながっていく。タイトルからもまさに女性向けという感じがあり、きっと男性では感じることの出来ない魅力も当然あるかと思うのですが、それ無しでもめちゃめちゃおもしろい物語なんですよ。またヒロインたちが使う大阪弁が妙に染み入るというのも、おススメしたいポイント。
7.アサダニッキ「星上くんはどうかしている」(全5巻)
……こちらは5巻で完結しました。密やかな片想いではじまったはずの物語も、気がつけばイケメン双子がヒロインを奪い合うという、少女マンガの王道のような状況に。片や意識的にドキッとさせる言動を仕掛ける戦略的な弟、片やナチュラルにヒロインの心奪う天然系の兄と、どちらもアプローチは異なれど、何度もドキドキさせてくれました。昨年も書いたのですが、個人的には星上兄の噛ませ犬っぷりが最高でして。最終巻でも「あー噛ませ犬してんなぁ(しみじみ…)」というシーンが度々描かれたのは嬉しい限り。中途半端は嫌で、きちんと全部片付けてから先に進みたいというヒロイン・いさりの行動に、救われつつも追い打ちかけられている感があるところとか、良いですよね。それから開き直って、取り繕うことなくダークでいるようになるあたりとかもう本当に(以下略
◆この恋、あたしの方がどうかしそうだ -アサダニッキ「星上くんはどうかしている」2巻
8.オザキアキラ「ハル×キヨ」(全9巻)
……こちらも9巻で完結。ちっちゃくて強気なの男の子と、でっかくて内気な女の子の凸凹コンビによるラブコメ。名前をカタカナ表記にして臨んだお陰か、これまでヒットに恵まれなかったオザキアキラ先生の代表作と相成りました。メインの二人はいつだって想い合っており、その関係は盤石。けれども周囲がそうさせてくれません。ライバルに友達に、果ては家族までが障壁となり、二人の恋路を邪魔します。個性的すぎるキャラクターたちに囲まれて、1巻から9巻、最初から最後までバタバタと物語は転がっていきました。この落ち着きの無さこそが二人らしく、また面白いところでもあります。まさに”ドタバタラブコメ”を絵に描いたような一作で、一度読み出せばあっという間に読み切ってしまえるような勢いの良さが魅力の一作。
9.須藤佑実「ミッドナイトブルー」(全1巻)
……内輪ネタで「意識高い/低い」ってのがあるんですけど、今回挙げている中で一番意識高いの恐らくこの作品じゃないかと思います。新世代の叙情派ストーリーテラー・須藤佑実先生が贈る傑作短編集。読み始める前にまず驚くのが、その装丁のこだわりっぷり。表紙の色使いに、本体の紙質、色使い、そのどれもにこだわりが感じられると共に、作品の雰囲気に絶妙にマッチしていて、読んでいてとにかく心地よい。ドラマチックではないけれど、気の利いたおもしろいオチに、少しの切なさを添えて、しっとりと。夜が更けたとき、一人じっくりゆっくりと読み味わいたい一冊。今年読んだ短編集の中では群を抜いて面白かったです。購入するならば、電子でなく現物の方をおススメします。
◆ノスタルジー溢れる珠玉の短編集 -須藤佑実「ミッドナイトブルー」
10. D・キッサン「千歳ヲチコチ」(全8巻)
……こちらも2016年で完結。シリアスとギャグコメディを使い分けるD・キッサン先生ですが、こちらはギャグ・コメディ側に倒したまったり平安絵巻となっていました。平安時代を舞台に、少々風変りなセンスを持った貴族の女子と、若いわりには世を悟ったような貴族の男子の日々を描きます。これまで互いに意識し探しつつも、なかなか出会うことの出来なかった二人が、様々なめぐり合わせが重なり、ついに再会。広義ではラブストーリーになるのでしょうが、あまりに独特すぎる二人ゆえに、トキメキやドキドキ感とは無縁で、ただひたすらほのぼの感動させられるラストでした。平安時代の設定なのに、カタカナ語がバリバリ飛び交う、ゆるっゆるな世界観が妙にクセになる一作。
+α 餡蜜「カンナとでっち」(全7巻)
……工務店を営む父のもとに、見習い大工としてやってきた勝仁は、住み込みで修行をすることに。知らない男子と一緒に住むなんてと、最初は抵抗していたカンナですが、彼の人柄にだんだんと惹かれていきます。しかしもちろん、同居にあたっては恋愛厳禁。娘LOVEな父が、いつも目を光らせており…という同居モノ。もうこれでもかというぐらいに同居モノの「お約束」を詰め込んでおり、このシチュエーションが好きな人は楽しめないハズがありません。内容的にはザ・少女マンガという感じですが、相手役の勝仁は大工仕事をしており、「きちんと仕事をしている」からより魅力的に映るし、またこれでもかと父が登場するため、ファミリーものとしての面白さがあると同時に、勝仁が親との関係構築もきちんと出来ているという安心感もありと、既存の別フレ作品にありがちなラブコメにプラスアルファする魅力があったのも事実。とにかく同居モノの王道を行き、最後ももちろんお約束で。少女マンガと言ったら恋愛でしょうというあなたに、是非ともおすすめしたい一作です。
以上、10作品+1作品でした。
このマンガがすごい!オンナ編で1位だった「金の国 水の国」は私が天邪鬼なので入れず。Webの月間の方では投票していたのですが、そこまで強烈な印象が残ったかというと、周囲の反応ほどではなかったかな、と。もちろん名作であることに変わりはないのですけれど。その他迷った作品としては、「星屑ドロップ」「夕暮れライト」「あたたかな針」「ラブリラン」「まとめグロッキーヘヴン」などなど。。。今年は追いかけていた作品の完結が相次いだので、本当に迷いました。巻数の多い作品もありますが、冬休みや週末などで、一気読みしてみてはいかがでしょうか?
例年通り、継続作編も後日アップ予定です。こちらも是非ともよろしくお願いします。
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