2016年下半期のよかった本まとめのお時間です。
おかげさまで上半期に引き続き読書熱が継続中だったので、悩みに悩んだ12作&ひとこと感想です。いつもの通り読了順です。ちなみに上半期はこちら


ハルコナ (新潮文庫nex)
◇秋田禎信「ハルコナ」(新潮文庫nex/新潮社)
あの秋田禎信が純愛小説!?というだけで手に取るしかない。花粉症が蔓延する世界で、存在するだけで他者のその症状を和らげる代わりに、本人にとっては猛毒である花粉から身を守るために防護スーツを着て生活せざるを得ないヒロイン・ハルコと、その彼女の介助役を自ら買って出たクラスメイト・遠夜との関係が描かれてゆきます。そう、つまり愛は世界を変える。

魔導書の姫と愛しき眷属 大いなる鍵と虚の書 (ビーズログ文庫)
◇夏野ちより「魔導書の姫と愛しき眷属 大いなる鍵と虚の書」(ビーズログ文庫/KADOKAWA)
力ある魔導書と契約した11人の王たちに支配される世界で、最強の魔導書に選ばれた主人公・シルヴィアの運命を描くファンタジー。魔導書を拒み続けるシルヴィアを「強欲」と称し契約を迫るアルス・ノヴァ、そしてその中でシルヴィアが本当の望みを見出してゆくという流れがたまりません。

バビロン 2 ―死― (講談社タイガ)
◇野崎まど「バビロン2−死−」(講談社タイガ/講談社)
1巻もすごかったが2巻はさらにすごかった。ただひたすらに絶望しか生み出さない展開がなんとも恐ろしい。

子羊寮の夢見る狼と苺姫 (一迅社文庫アイリス)
◇平子雅野「子羊寮の夢見る狼と苺姫」(一迅社文庫アイリス/一迅社)
恋に恋するお年頃ヒロイン・アチカと、そんな彼女になぜかキスを迫る青年・オズマリアとの攻防を描くラブコメファンタジー。アチカに好かれようという下心が見え見えすぎるオズマリアの行動と、わかっているけどついキュンとして、そのあとでがっかりするアチカ、という展開がなんとも可愛らしい。そしてそんな流れの後で思いがけない真相が待ち構えているというギャップも。

スペース金融道
◇宮内悠介「スペース金融道」(河出書房新社)
アンドロイドだろうがなんだろうが返済するなら金を貸し、最終的には宇宙の果てまで追ってゆく――そんな「新星金融」の回収員である「ぼく」(プログラマー)と上司のユーセフ(量子金融工学者)の奮闘(?)を描く、血も涙もないSF連作集。ユーセフのパワハラ極まりない言動および行動に「ぼく」が振り回される様子や、借主であるアンドロイドたちの巧妙な借金逃れぶりがなんとも面白い。

翼の帰る処 5 ―蒼穹の果てへ― 下
◇妹尾ゆふ子「翼の帰る処5−蒼穹の果てへ(下)−」(幻冬舎)
ついにシリーズ完結。世界の存亡がその病弱な肩にかかってしまった主人公・ヤエトの行く末やいかに、ということで。託されたものの重さがいまさらになって理解させられるという展開はつらいものもありましたが、それでも彼が新たな道を選んでくれて本当に良かった。あと生きて戻って皇女に折れてくれて本当に良かった(笑)。

空への助走 福蜂工業高校運動部
◇壁井ユカコ「空への助走 福蜂工業運動部」(集英社)
男子高校バレー小説「2.43」シリーズのスピンオフとなる運動部小説集。スポ根あり、甘酸っぱい青春系恋愛ものもあり、とバリエーション豊かな作品集です。陸上部の後輩との微妙な関係を描く表題作と、「2.43」シリーズにも登場するバレー部メンバーの前日譚が特にいい。

上流階級 富久丸(ふくまる)百貨店外商部 上流階級 富久丸百貨店外商部II
◇高殿円「上流階級 富久丸百貨店外商部 1〜2」(光文社)
(感想:1巻 / 2巻
初の女性外商部員に抜擢された主人公・静緒が、悩みながらも「外商」という仕事に打ち込んでゆく姿を描くお仕事小説。このたび2巻が出たのでまとめ読みです。物語が進むにつれ、仕事面だけでなく、彼女に否応なしに貼られる「バツイチの独身アラフォー女性」というレッテルとの向き合い方についても描かれるように。周囲の旧弊なものの見方にも敢然と立ち向かってゆく姿がまたかっこいい。

青の数学 (新潮文庫nex) 青の数学2: ユークリッド・エクスプローラー (新潮文庫nex)
◇王城夕紀「青の数学 1〜2」(新潮文庫nex/新潮社)
(感想:1巻 /2巻
数学に青春をかける少年少女たちの日々。数学とはなにか、という問いにいつしかまっすぐ向き合っていく主人公、そしてその周囲の人々がもがきながらもそれぞれの答えを見出してゆく姿は、どれもいとおしく感じられます。

ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき婚約コンチェルト (角川ビーンズ文庫)
◇永瀬さらさ「ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき婚約コンチェルト」(ビーンズ文庫/KADOKAWA)
毒舌系天才指揮者と新米ヴァイオリニストが、それぞれが目指す音楽の道を守るために偽装婚約!?という音楽系ラブストーリー。口も態度も悪いけど面倒見のいいヒーロー・アルベルトがなんとも微笑ましいです。

湖城の魔王と異界の少女 睡蓮の花嫁 (コバルト文庫)
◇東堂燦「湖城の魔王と異界の少女 睡蓮の花嫁」(コバルト文庫/集英社)
異世界召喚(?)系ラブストーリー。あまりにも孤独なふたりが惹かれ合うさまが、なんとも繊細に描かれてゆきます。

Bの戦場 さいたま新都心ブライダル課の攻防 (集英社オレンジ文庫)
◇ゆきた志旗「Bの戦場 さいたま新都心ブライダル課の攻防」(集英社オレンジ文庫/集英社)
自他ともに認める「ブス」なブライダルプランナーに求婚してきたのは、「絶世の美男子」なブス専の上司でした……というお仕事ラブコメ。どこまでも意識の高い上司・久世の言動がひどすぎるけど、それを内心でこきおろす主人公・香澄のタフさがなんとも頼もしい。