穀物の生産は余りがちになっていると言われていますが、それでもまだ世界中に十分な食物が行き渡っていないのは事実。肉食のせいだ、システムのせいだと言われていますが、やはり単純に生産量が足りていないという面もあるようです。そこでオックスフォード大学の研究チームが簡単に作物を増収できる手段を開発しました。
収量を劇的に向上させる?!
現在、世界中で7億9500万人の人が飢餓や栄養不足で苦しんでいると言われている。
また気候変動による干ばつが懸念される地域もあり、いかに限られた面積で作物の収量を向上させるのかというのは重要な課題となっている。
その問題に立ち向かうため、オックスフォード大学の研究チームは、小麦の収量を20%向上させる化学的手法を開発した。
その手法はこれまでの肥料のような手法ではなく、これまでに類を見ない手法であるという。
T6P: Trehalose 6-Phosphate
彼らが用いたのはTrehalose 6-phosphate前駆体と呼ばれる物質である。
Trehalose(トレハロース)は糖の一種である。
この物質を溶かした溶液を開花した植物に散布すると、T6Pが刺激となり、でんぷんを合成するように促すのだ。
その結果、実験室レベルでは小麦の粒の大きさが20%向上させることができた。
そしてこの実験が示すものは、単に特定の物質を植物に散布することで、簡単に収量を伸ばせることを示唆しているのである。
さらにはT6Pは小麦のみならず、他の植物にも存在しており、同様の機能をもっていると考えられる。
すなわち同じようにT6P前駆体を散布することにより、様々な作物の収量を向上させることができるかもしれないのだ。
緑の革命
1940年代から1960年代にかけて、農業は大きく変化した。
品種改良から、化学肥料の大量投入により、穀物の生産性が飛躍的に伸びたのだ。
このことを緑の革命というが、これにより10億人の命が救われたと言われている。
今回の研究は、植物の生化学的な理解が深まったことから、植物内でどのような物質変換がされているのかという知見をベースに成し得たものである。
緑の革命により増強できた食物生産量をさらに20%増収できるとなると、さらに多くの人が救われるとともに、干ばつなどの気候変動に対しても十分な作物量を確保できるようになるのかもしれない。
多くの研究が行われてきた農業ですが、それに加えてさらに20%も増収できる可能性があるというのは単純にすごいですよね。しかも作物の開花時期に合わせて、糖の一種を散布するだけ。とても手軽だし、植物体内に存在する物質なので、安全性も問題ないように見えます。
これまで植物を交配したり、遺伝子操作したり、はたまた化学肥料の開発を行なったりと、色々行われてきたわけですが、もっと本質に戻り、植物が一体どうやって生きているのかということを調べることが、意外と重要なのかもしれません。
現在、穀物は十分に足りているという説もありますが、今後、地球の人口はまだまだ増加して行くと考えられます。もちろん人口が増加すると、必要となる食物の量も増加します。未来予測をしっかりと行い、今すぐではなくとも将来必要となる技術の開発というのは重要であり、進めて行くべきであるでしょう。今回の技術も、そのような技術ではないでしょうか。
元記事はこちら(Study shows wheat crop yield can be increased by up to 20% using new chemical technology)