日本に住むひとたちは欧米型の暮らしに憧れてきた。服装や食生活や立ち居振る舞いなど彼らの文化を学び採り入れてきた。ひるがえって住まいはどうだろう。日本に暮らす外国人たちの住み方から、よりよい暮らしのスタイルが見えてくる。(文=牧野容子 写真=山下亮一)
日本ではじめて知った
和室のイメージでリビングルームを仕上げた
~グエナエル・ニコラ&玲子夫婦(総面積約187㎡)~
住んでいた賃貸マンションが、分譲になったのを機に購入し、大改装を試みたニコラさん。
「個別の部屋をなくし、できるだけ広いワンルームを作りたかった」
既存の部屋の壁や柱を取り払い、リビングルームに約70平米を確保。さらに広く感じられるように、天井の照明器具を外し、隣接する子供部屋やトイレの出入り口をすべて引き戸にして凹凸のないフラットな空間に。壁面と床の柔らかなグレー色がシームレスで広がりのある印象を高めている。
「リビングルームは家族が集まる場所。私のフランスの実家は大家族で、暖炉のある部屋にいつもみんなが揃っていました。末っ子の私はソファよりも床でゴロゴロしていた。20代で初めて日本に来て和室に入った時に衝撃を受けました。広い部屋に畳だけ。家具はほとんどなくて、清々しくて気持ち良かった。そのイメージでリビングルームを作りたいと思いました」
中央に設けた「プールソファ」は家族のくつろぎの場所。週に1、2度は食事もここでとる。
「家で一番大事なのは家族のコミュニケーション。このソファではみんなで一緒にゴロゴロします。お行儀悪くても、何でもOK」
出張が多いニコラさん。外国のホテルの部屋はものや情報が多すぎて疲れてしまう。だから家では家族の触れ合いとリラックスが最優先。あとは何もいらないという。
ソファの他にリビングルームにあるのは、ダイニングテーブルとベンチ、料理などを運ぶワゴンだけ。ものがなくて不安に感じることはないかと玲子夫人に尋ねてみたが、夫人もミニマム志向で、夫婦の考えは一致している。そういえば家族の写真も見当たらない。
「子供は目の前にいるから、写真いらないでしょ」とニコラさん。なるほど。確かにものはないけれど、その分はいつも賑やかな家族の時間が溢れている。
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