ベトナムから日本に帰国して数ヶ月経った。精神的にも落ち着いてきたので、ようやくこのブログを再開することにした。

2013年5月末にベトナムに到着し、6月から勤務を開始した。2016年6月末をもって3年間のベトナム現地企業での勤務を終了した。度重なる契約違反、労働法違反は改善される見込みが全く無かったため、この違法企業を退職し日本に帰国した。

契約書にも8時間勤務であることは明記されているにも関わらず、残業を強要された上、残業代を支払う会社ではなかった。これはベトナムの労働法においても明らかな違法行為である。帰国後の当面の生活費と、英語留学の費用を貯めておかなければいけなかったため、本来得られるはずだった賃金が支払われなかった事で、これだけの長期間になってしまった。

本エントリーでは、その労働法違反の詳細を記載する。なお、私がホーチミンで勤務していたのは、日本人が創業した人材紹介会社である。最近ベトナム現地で働くことになった方や、検討している方など、社名、個人名に関して知りたい場合はtwitterなどで聞いてもらえれば回答する。

7名の開発者は全員退職

ホーチミンにいた3年で、私を含め計7名(日本人4名、ベトナム人3名)の開発者がこの違法企業で働いた。そして全員退職した。今年1月に突然いなくなった人が一人だけいたが、パートタイムとして開発に参加し続けているようである。未だに洗脳が解けていないらしい。

未払金

合計9.4か月分の賃金が未払いとなっている。内訳は次の通り。

  • 超過勤務: 6.2か月分
  • 退職金: 1.5か月分
  • 超過勤務代、退職金未払いに対する遅延損害金: 0.5か月分
  • 有給休暇の未消化分: 1.2か月分

退職時の対応

退職を決意した経緯

2015年11月の社員旅行の前日に、CTOから「今日中に全部終わらせろ」と言われ、深夜1時過ぎまで作業を強制された。翌日の早朝には飛行機でホーチミン市からダナンまで移動する予定だと分かっているにも関わらずだ。これが原因で翌日の飛行機に乗り遅れ、自腹で500kドンを支払って航空券を買うはめになった。

そもそも、この年の社員旅行なんて行くつもり全くなかったのに、出欠確認もせず、なぜか強制参加することになっていた。しかし、社長からは「チケットの手配が済んでいるので欠席は許可できない、ベトナム人スタッフが頑張って企画したのに、今更キャンセルできるわけないだろ」という話をされた。日本人スタッフには年間200時間以上のサービス残業を強制している会社である。日本人もベトナム人も奴隷じゃないんだよ。

行き先に関しても、ダナン・ホイアンとしか聞いていなかったが、ダナンではBa Na Hillsと言う山の上の避暑地に泊まるということが現地で判明した。11月の山頂なのでかなり寒い。他の日本人はパーカーなどを用意していたので、全く何も聞かされていなかったのは私だけのようだった。情報を意図的に伝えない、というのはモラルハラスメントの加害者が使う攻撃方法である。

ここまで陰湿な対応をされるのであれば、私としてもこれ以上開発業務に協力することは出来ないし、必要な金額が貯まった時点で退職することにした。

退職時の社長との面談

2016年5月末に、6月末で退職すると社長に伝えてから、正式に退職可能なのは45日後になると言われた。これは労働法 第37条に規定されている「無期限労働契約を解除する場合」の事前通告期間だが、私の労働契約の種類は「有期限労働契約」であり、この契約の場合は、30日あるいは3日が事前通告期間となる。後述するように、契約違反、労働法違反の場合には、3日前に通告すれば、一方的に労働契約を解除できる。

こちら側が勝手に契約を破棄しようとしているようにみせるため、そして法的に問題があるのは私の方であるというように装うため、45日後になると嘘をついたようだ。私は「契約書には期限が書いてあった気がするんですが、違いましたか」と確認しましたが、「どうでしょうかね。それが、2016年6月末になってましたかね?」というような話をされた事から、意図して嘘をついたようである。

翌日、会社側で保管していた契約書をスキャンして送ってもらったので、社長が契約の種類を偽っていた事は明白である。

その後、社長と面談の時間があった。まるで辞める奴が悪いとでも言わんばかりの態度で、「言いたいことあればどーぞ」とぞんざいな話しぶりであった。退職理由として、勤務時間が長すぎることを伝えると、「自分で勤務時間を管理しているんだから、そんなことはありえない」と言われた。社長、CTOからは何度も「終わるまで帰るな」「今日中に終わらせろ」「明日の朝までに修正しろ」といった指示があったわけだから、知らなかったはずはない。彼らの強制により超過勤務していたわけで、24時間勤務可能であることを強制する意図があったことが判明した。

残りの有給休暇日数を教えて欲しいと伝えても、教えてもらえなかった。これは、労働法 第114条の規定の通り、未消化の有給休暇を清算したくないため、有休を消化されると即日退職可能となるためだと考えられる。また、2015年までの未消化分に関しても全く清算されていない。

労働契約違反

労働契約について

労働契約の内容は、おおよそ次の通り。

  • 給与額(月額):〇〇
  • 月曜日から金曜日まで、1日8時間勤務
  • 勤務時間は9:00 - 18:00だが、状況により可変
  • 土曜日、日曜日は休日とする
  • 社長、CTOの指示に従い開発を行うこと
  • 契約書に書かれていない問題事項があれば労働法に従うこと

労働法 第22条 労働契約の種類にて、労働契約の種類は3種類が規定されている。

  • 無期限労働契約
  • 有期限労働契約:12か月〜36か月の期間
  • 季節的な業務

2013年6月-2015年7月までの2年2か月(試用期間2013年6月-7月)、それ以降の2年間については、契約期間が定められた「有期限労働契約」だった。

労働法違反

ベトナムの労働法について

ベトナムにも、日本の労働基準法に相当する法律があり、労働法と訳されている。JETROが日本語訳をpdfで公開しているので(労務 > 改正労働法のところ)、ベトナムで勤務している日本人は読んだことがあるんじゃないかと思う。ベトナム語で書かれた法律はここから見れる

違反内容

労働法違反の内容は主に次の4点。

  1. 労働法 第48条に基づき、退職手当1.5ヶ月分が支払われていない
  2. 労働法 第97条に基づき、1日の労働時間を超過した場合の超過勤務代、深夜時間帯の割増賃金が支払われていない
    • 2014-2016年の労働時間の記録だと約6ヶ月分が未払い
  3. 労働法 第106条に基づき、1日の超過時間上限(4時間)、1ヶ月の超過時間上限(30時間)、1年間の超過時間上限(200時間)が守られていない。さらに被雇用者の同意を得ず、強制的に時間外労働させていた。
  4. 労働法 第114条に基づき、未消化の有給休暇が清算されていない。2014年6月-2016年6月の取得状況だと1.2か月分が未払い。

1. 退職手当が未払い

労働法 第48条では、雇用者は勤続12か月以上の被雇用者に対し、労働契約を解除する際に、退職手当を支払う責任を規定している。つまり退職時には企業側は手当を払いなさい、という内容である。労働法の日本語訳では解雇手当となっているが、別の法律では退職手当と訳されている。会社から解雇された場合だけに支払い義務が発生するわけではないので、ここでは退職手当と書く。

  • 1 . 労働契約が本法第 36 条第 1、2、3、5、6、7、9 および 10 項の規定に基づき解除された 場合、雇用者は勤続 12 カ月以上の被雇用者に対し、勤続 1 年に付き半月分の賃金に相当する退職手当を支払う責任を負う。

この支払いの条件となる労働法 第36条の各項のうち関係があるのは次の項。

  • 3 . 両当事者が契約の解除に合意した。
  • 9 . 被雇用者が、本法第 37 条の規定に基づき労働契約を一方的に解除した。

第3項は、労働契約を解除するには雇用者、被雇用者の合意があれば、解除可能という内容。

「有期限労働契約」の場合、

  • 労働条件が保証されない
  • 賃金の支払いが遅延する

等の理由で、被雇用者から一方的に労働契約を解除することができる(事前通告は3日前までに行えばいいので、有給休暇が3日以上余っている場合、通告日に退職可能)。これを規定しているのが、第37条。

  • 1 . 有期限労働契約、12 ヶ月未満の季節的な業務又は特定業務を履行するための労働契約の下で就労する被雇用者は、以下の場合に、契約終了前において一方的に契約を解除する権利を有する。
    • a) 労働契約で合意した業務や勤務地に配置されない。または労働条件が保証されない。
      • b) 労働契約に定めた給与を十分に支給されない、あるいは支給が遅延する。
      • c) 虐待、セクシャルハラスメント、強制労働をさせられる。
  • 2 . 本条第 1 項に基づいて労働契約を一方的に解除する被雇用者は、雇用者に対し事前通告しなければならない。
    • a) 本条第 1 項 a、b、c及び gの場合は、少なくとも 3 営業日前 。

第36条 第9項ではこういった状況で退職した場合でも、退職手当を支払わなければいけないということを規定している。「無期限労働契約」の場合は労働契約を解除する場合、少なくとも45日前に事前通告しなければならないが、それ以外の条件がないので、仮にパワハラ等の被害に遭っていても45日間は仕事をしないといけない。このことが、退職時に社長が「無期限労働契約」であると嘘をついた理由。

私の場合だと、

  • 私の同意なく残業を強制される(終わるまで帰るな、今日中に終わらせろ等の指示があった)
  • 残業代が一切支払われていない
  • 給与の支払いが無断で遅れる
  • 暴言行為、名誉人格及び健康に影響を及ぼす行為

等の理由があるため、こちらから一方的に労働契約を解除可能な状況であり、退職することに関して社長が同意しているので、労働法 第48条に基づき会社は退職手当を支払わなければならない。しかし退職手当に関して、社長から何ら説明はなかったし、未だに支払うつもりは全くないようである。

労働法の一部内容について詳細と施行ガイドラインを規定する、第14条 第5項には、契約を解除してから7日以内に退職手当を支払うこと、と規定されている。

2. 残業代、深夜労働の割増賃金が未払い

2013年から2015年までの超過勤務について、超過勤務・深夜時間帯の割増賃金が一切支払われていない。労働法第97条では、時間外労働、深夜労働の賃金について規定されている。

  • 1 . 被雇用者が時間外労働をする場合、単価または通常の賃金に基づいて算出される、以下の賃金が支払われるものとする。
    • a) 通常勤務日の時間外労働の場合は、少なくとも 150%。
    • b) 週休日の時間外労働の場合は、少なくとも 200%。
    • c) 祝日または有給休暇の時間外労働の場合は少なくとも 300%。日給の被雇用者に対しては、それに加えて祝日または有給休暇日の賃金を支払う。

第1項では、時間外労働の賃金について規定されている。ベトナムの労働法では150%分の賃金を支払うこと、と規定されているので、通常の単価に加えて50%分の残業代を支払わなければいけない。

  • 2 . 深夜労働をする被雇用者には、少なくとも単価または通常の賃金に基づいて算出される賃金の 30%に相当する割増分が支払われるものとする。

第2項では、深夜労働の賃金について規定されている。通常の単価に加えて30%分の割増賃金を支払うこと、と規定されている。

  • 3 . 深夜に時間外勤務をする被雇用者には、本条第 1 項、第 2 項の規定に基づく賃金以外、単価または昼間の賃金に基づいて算出される賃金の 20%に相当する割増分が支払われるものとする。

第3項では、深夜に時間外勤務した場合の賃金について規定されている。第1項、第2項の賃金に加えて、20%分の割増賃金を支払うこと、と規定されている。例3の通り、単価の2倍の賃金となる。

これを踏まえて、労働時間の実績から未払いの賃金を計算すると、およそ6か月分となる。

3. 遅延損害金

改正労働法施行細則 政令95号(労働法違反時の罰則規定)(日本語ベトナム語)によると、「第 8 条 労働契約の修正・補則・解除に関する規定の違反」が規定されている。

  • 1 . 労働法第 47 条第 2 項に定めた期限内に退職手当や失業手当を被雇用者に支払わない、または全額を支払わない行為、労働法第 47 条第 3 項の規定に基づく契約解除時に被雇用者から預かったその他の書類の確認手続きを完了せず、返却しない行為のいずれかを犯した雇用者に対し、以下のいずれかの罰金を科す。
    • a) 1 名~10 名の被雇用者に対し違反を犯す場合、50 万ドン~ 200 万ドンの罰金。
    • b) 11 名~50 名の被雇用者に対し違反を犯す場合、200 万ドン~ 500 万ドンの罰金。
    • c) 51 名~100 名の被雇用者に対し違反を犯す場合、500 万ドン~1,000 万ドンの罰金。
    • d) 101 名~300 名の被雇用者に対し違反を犯す場合、1,000 万ドン~1,500 万ドンの罰金。
    • đ) 301 名以上の被雇用者に対し違反を犯す場合、1,500 万ドン~2,000 万ドンの罰金。
  • 2 . 違反行為の影響の是正措置
    • a) 本条第1項に定めた退職手当・失業手当を被雇用者に支払わないまたは十分に支払わない行為に対し、退職手当・失業手当を全額に被雇用者に支払わせ、また、処分時点における、中央銀行が公表した最高の金利に相当する金額を、被雇用者に追加で支払わせる。

また、「第 13 条 賃金に関する規定の違反」では時間外労働、深夜勤務手当を支払わない場合の罰則規定が定められている。

  • 3 . 労働法第 96 条に定めた期限通りに賃金の支払いをしない行為、郡レベル国家管理機関に送付した賃金テーブル・賃金表の規定レベルを下回る額の賃金しか支払わない行為、労働法第 97 条の規定レベルを下回る時間外労働・深夜勤務手当しか支払わない行為、労働法第 101 条の規定に違反して賃金の天引きをする行為、労働法第 98 条に定めた休業時の賃金を被雇用者に全額支払わない行為のいずれかを犯した雇用者に対し、以下のいずれかの罰金を科す。
    • a) 1 名~10 名の被雇用者に対し違反を犯す場合、500 万ドン~1,000 万ドンの罰金。
    • b) 11 名~50 名の被雇用者に対し違反を犯す場合、1,000 万ドン~2,000 万ドンの罰金。
    • c) 51 名~100 名の被雇用者に対し違反を犯す場合、2,000 万ドン~3,000 万ドンの罰金。
    • d) 101 名~300 名の被雇用者に対し違反を犯す場合、3,000 万ドン~4,000 万ドンの罰金。
    • đ) 301 名以上の被雇用者に対し違反を犯す場合、4,000 万ドン~5,000 ドンの罰金。
  • 6 . 違反行為の影響に対する是正措置
    • a) 本条第 3 項および第 4 項に定める行為に対し、被雇用者に賃金を全額支払わせる。
    • b) 本条第 3 項に定めた行為に対し、支払いが遅延された賃金の支払い時点における、中央銀行が公表した当座預金に対する最高金利に相当する金額を支払わせる。

ここでは罰則として、

  • 未払い賃金を全額支払うこと
  • 遅延損害金として一定金利(本記事執筆時点では6.5%)に相当する金額を支払うこと

という内容が定められている。およそ0.5か月分の金額になる。

4. 労働時間が守られていない

残業代も未払いだが、超過時間の上限も全く守られていないし、そもそも時間外労働の条件すら守られていなかった。

労働法第106条では、時間外労働について規定されている。

  • 1 . 時間外労働とは、法律・集団労働協約または就業規則で規定された通常の勤務時間以外の時間に就労することをいう。
  • 2 . 雇用者は、次に掲げる条件を十全に満たした際に、被雇用者を時間外労働させることができる。
    • a) 被雇用者の同意を得ること。
    • b) 被雇用者の時間外労働の時間数は、1 日の通常勤務時間の50%を超えてはならず、週当たり勤務時間の規定を適用している場合は、通常の勤務時間と時間外労働の総時間数が 1 日 12 時間を超えてはならず、1 カ月で 30 時間、1 年で 200 時間を超えてもならない。ただし、政府が規定する特別な場合は、1 年で 300 時間を超えない時間外労働が認められる。
    • c) 1 カ月間に時間外労働の日が多く続いた場合、雇用者は被雇用者が休めなかった期間の代休を取得できるよう人員を配置しなければならない。

「今日は残れますか?」ではなく「今日中に終わらせろ」、「終わるまで帰るな」という指示が何度もあった。これは第2項 a)に違反している。また、1日の勤務時間が12時間を超えることもあった。契約で定められている1日の勤務時間は8時間なので、この50%、4時間以上の超過勤務をしてはいけないはずだが、第2項 b)に違反している。2014-2015年の年間超過時間は200時間を超えている。もちろん代休は1日もなかったので、第2項 c)に違反してる。

退職時面接の社長の発言で分かったことだが、彼は「勤務終了時間を過ぎていたとしても、キリの良いところまで作業するのが当たり前」という考えであった。実際、同僚は社長から「あなたは仕事ができないんだから、早く帰ってはいけない」という話をされていたらしい。会社が意図して勤務時間を守らせなかったということになる。キリの良いところまで、の意味するところは、「作業が終わるまで」ということであり、いかなる理由であれ、作業が遅延することは一切認められない。モラルハラスメントの加害者が、被害者を追い込んで潰すための手段である。

上記の状況から、会社が社員の労働時間を全く管理していなかったのは、悪意をもって違法労働させたいから、ということが明らかである。

2013年もかなり超過勤務していたはずだが、自分で記録をつけ始めたのが2014年2月からなので、それ以前の労働時間の記録は残っていない。指示がなかったとしても、むしろそういう場合こそ、自分の労働時間は把握しておくべきだった。

今後の対応

1/10までに未払い賃金を全額支払うよう社長に要求する。要求通りに支払いが行われない場合、やりとりはすべて公開する。しかし、こちらの要求には応じるとは考えていない。その場合には、もう一度ホーチミンに戻り相応の対応を取る。ベトナムの裁判所には強制力がないようなので、裁判所に提訴するのが良い方法だとは思わないけれど、必要なら提訴する。その場合、これに加えて別の対応も必要になるため、Cộng Hoàまで直接追い込みに行くことになる。

社長から退職の条件として言われた、作業中だった仕事は全て終わらせてから帰国したし(もちろん即日退職可能だったわけだから、こんな事を守る必要は全くなかった)、退職してからすでに十分な期間が経過している。こちら側にはもう譲歩する余地は全くない。

モラルハラスメント

次回以降のエントリーで極めて悪質なモラルハラスメントの詳細を書く。この本に、彼らの行動と心理が全て書いてあった。

モラル・ハラスメント―人を傷つけずにはいられない
作者
マリー=フランス イルゴイエンヌ
出版社
紀伊國屋書店
発売日
1999-12
メディア
単行本
価格
¥ 2,376
モラル・ハラスメントが人も会社もダメにする
作者
マリー=フランス イルゴイエンヌ
出版社
紀伊國屋書店
発売日
2003-02-08
メディア
単行本
価格
¥ 2,160

退職祝い

こちらからお願いします。

労働法の抜粋

第 36 条 労働契約の解除の場合

  1. 契約期間が終了した。ただし、本法第 192 条 6 項で規定する場合を除くものとする。
  2. 契約に規定された業務が完了した。
  3. 両当事者が契約の解除に合意した。
  4. 被雇用者が本法第 187 条の規定に基づいて、社会保険の加入期間及び定年退職の年齢に関する条件を十分に有する。
  5. 裁判所の判決、決定に基づいて、日雇用者が懲役、死刑となった。あるいは、労働契約に記載された業務の継続が禁止された。
  6. 被雇用者が死亡した、裁判所より民事行為能力を失った、失跡した、又は死亡したという認定決定書を出された。
  7. 個人である雇用者が死亡した、裁判所より民事行為能力を失った、失跡した、又は死亡したという認定決定書を出された、個人ではない雇用者が活動を終了した。
  8. 被雇用者が、本法第 125 条 3 項の規定に基づく規律違反で解雇された。
  9. 被雇用者が、本法第 37 条の規定に基づき労働契約を一方的に解除した。
  10. 雇用者が本法第 38 条の規定に基づき、一方的に労働契約を解除した。雇用者が組織・技術の変更、経済上の問題、企業の吸収・合併・分割・分離の理由で労働者を解雇した。

第 37 条 被雇用者が労働契約を一方的に解除する権利

  1. 有期限労働契約、12 ヶ月未満の季節的な業務又は特定業務を履行するための労働契約の下で就労する被雇用者は、以下の場合に、契約終了前において一方的に契約を解除する権利を有する。
    • a) 労働契約で合意した業務や勤務地に配置されない。または労働条件が保証されない。
    • b) 労働契約に定めた給与を十分に支給されない、あるいは支給が遅延する。
    • c) 虐待、セクシャルハラスメント、強制労働をさせられる。
    • d) 自身または家族が困苦な状況におり、契約履行の継続が不可能になる。
    • đ) 居住地の機関における専従職に選出される、または国家機関の職務に任命される。
    • e) 妊娠中の女性被雇用者が、認可を受けている医療機関の指示に基づいて、業務を休止しなければならない。
    • g) 非雇用者が、有期限労働契約の場合は 90 日間、12 ヶ月未満の季節的業務、又は特 定業務の労働契約の場合は契約期間の 1/4 において、継続して治療を受けたにも 関わらず、労働能力を回復できない。
  2. 本条第 1 項に基づいて労働契約を一方的に解除する被雇用者は、雇用者に対し事前通 告しなければならない。
    • a) 本条第 1 項 a、b、c及び gの場合は、少なくとも 3 営業日前 。
    • b) 本条第 1 項d及び đ の場合は、有期限労働契約の場合は少なくとも 30 日前、12 ヶ月未満の季節的業務、又は特定業務の労働契約の場合は少なくとも 3 営業日前。
    • c) 本条第 1 項 e の場合、事前通告期限は本法第 156 条の規定に基づく。
  3. 無期限労働契約の下で就労する被雇用者は、本法第 156 条で規定する場合を除き、労 働契約を一方的に解除できるが、雇用者に対し少なくとも 45 日前に事前通告しなけれ ばならない。

第48条 退職手当

  1. 労働契約が本法第 36 条第 1、2、3、5、6、7、9 および 10 項の規定に基づき解除された 場合、雇用者は勤続 12 カ月以上の被雇用者に対し、勤続 1 年に付き半月分の賃金に相当する退職手当を支払う責任を負う。
  2. 退職手当算出の基礎となる労働期間は、被雇用者が雇用者のために実際働いた期間で ある。被雇用者が社会保険法の規定に基づき、失業保険に加入していた期間と雇用者 から退職手当を受け取っていた期間を除くものとする。
  3. 退職手当算出の基礎となる賃金は、被雇用者が解雇される直前の連続 6 カ月の労働契 約における平均賃金である。

第 97 条 時間外労働、深夜労働の賃金

  1. 被雇用者が時間外労働をする場合、単価または通常の賃金に基づいて算出される、以下の賃金が支払われるものとする。
    • a) 通常勤務日の時間外労働の場合は、少なくとも 150%。
    • b) 週休日の時間外労働の場合は、少なくとも 200%。
    • c) 祝日または有給休暇の時間外労働の場合は少なくとも 300%。日給の被雇用者に対しては、それに加えて祝日または有給休暇日の賃金を支払う。
  2. 深夜労働をする被雇用者には、少なくとも単価または通常の賃金に基づいて算出される賃金の 30%に相当する割増分が支払われるものとする。
  3. 深夜に時間外勤務をする被雇用者には、本条第 1 項、第 2 項の規定に基づく賃金以外、単価または昼間の賃金に基づいて算出される賃金の 20%に相当する割増分が支払われるものとする。

第 104 条 通常の勤務時間

  1. 通常の勤務時間は、1 日 8 時間、及び 1 週間 48 時間を越えないものとする。
  2. 雇用者は、時間、日または週当りの勤務時間を規定する権利を有する。週当りの勤務時間の場合、通常の勤務時間は 1 日 10 時間、1 週間に 48 時間を越えないものとする。政府は雇用者が、週 40 時間勤務を実施することを奨励する。
  3. 労働傷病兵社会事業省、及び保健省が公布した特別な重労働・有害・危険の業務のリストに該当する業務を行う者に対しては、勤務時間が1日 6 時間を越えないものとする。

第 105 条 深夜勤務時間

深夜勤務時間は、22 時から翌日の 6 時までである。

第 106 条 時間外労働

  1. 時間外労働とは、法律・集団労働協約または就業規則で規定された通常の勤務時間以外の時間に就労することをいう。
  2. 雇用者は、次に掲げる条件を十全に満たした際に、被雇用者を時間外労働させることができる。
    • a) 被雇用者の同意を得ること。
    • b) 被雇用者の時間外労働の時間数は、1 日の通常勤務時間の 50%を超えてはならず、週当たり勤務時間の規定を適用している場合は、通常の勤務時間と時間外労働の総時間数が 1 日 12 時間を超えてはならず、1 カ月で 30 時間、1 年で 200 時間を超えてもならない。ただし、政府が規定する特別な場合は、1 年で 300 時間を超えない時間外労働が認められる。
    • c) 1 カ月間に時間外労働の日が多く続いた場合、雇用者は被雇用者が休めなかった期間の代休を取得できるよう人員を配置しなければならない。

第 111 条 年次有給休暇

  1. 同一の雇用者のために 12 ヶ月勤務した被雇用者は、以下の通りに労働契約書に基づく賃金の 100%を受け、年次有給休暇を取得することができる。
    • a) 通常の労働条件で働く者の場合は 12 日間。
    • b) 労働傷病兵社会事業省と保健省が公布したリストによる重労働・有害・危険な業務をする人、または生活条件が過酷な地域において勤務する者、または未成年の被雇用者、或いは障害を持つ被雇用者の場合は 14 日間。
    • c) 労働傷病兵社会事業省と保健省が公布したリストによる特別な重労働・有害・危険な業務をする者、生活条件が非常に過酷な地域において勤務する者の場合は 16 日間。
  2. 雇用者は年次有給休暇消化のスケジュールを規定する権利を有するが、被雇用者の意見を参考にし、被雇用者に事前に通知しなければならない。
  3. 被雇用者は、雇用者との合意の上で年次有給休暇を複数回に分割、または最大 3 年分をまとめて 1 回に取得することができる。
  4. 年次有給休暇中の被雇用者が、道路・鉄道・水路による往復の移動にかかる日数が 2 日を超える場合、3 日目からは年次有給休暇とは別に移動期間として算定することができる。ただし、算定できるのは年に 1 回の休みに限られる。

第 114 条 未消化の年次有給休暇の清算

  1. 被雇用者は、退職、失業またはその他の理由により、まだ年次有給休暇を取得していない、またはまだすべてを消化していない場合、未消化の年次有給休暇を賃金として清算することができる。
  2. 労働期間が 12 カ月未満の被雇用者の年次有給休暇は、労働期間に比例して算定される。年次有給休暇を取得していない場合は、賃金として清算することができる。

労働法の一部内容について詳細と施行ガイドラインを規定する

2015年3月1日に、労働法の詳細についてガイドラインとなる政令が施行されている(ベトナム語日本語)。関連する条項を以下に抜粋する。

第11条 労働者による労働契約の一方的な解除

  1. 労働法 37 条 1 項 c)において以下の場合、労働者は一方的に労働の解除をする権利を有する。職場において雇用者が労働者に対して、暴力行為、暴言行為、名誉人格及び健康に影響を及ぼす行為、強制労働、セクシャルハラスメント行為があった場合、労働者はその労働を中止する権利がある。
  2. 労働法 37 条 1 項 d)に則り労働者は以下の場合、労働を一方的に中止する権利がある。
    • a) 配偶者、実の両親及び配偶者の両親、実子、里子の病気、事故により介護しなければならない場合
    • b) 生活また仕事のため海外へ行かなければならない場合
    • c) 家族が天災、火災、危難、病気などで困難に陥った場合、また全ての可能性を模索したが移転を余技なくされ労働契約の実行ができない場合

第14条 退職手当・失業手当

  1. 以下の場合、雇用者は労働者に対して労働法第 48 条の規定に従い、退職手当を支給する義務がある。労働法第 36 条 1 項から 9 項までの規定に従い 12 ヶ月以上継続的に労働した労働者の契約を解除した場合、及び労働法第 38 条の規定に従い労働契約を雇用者が一方的に解消した場合。
  2. 以下の場合、雇用者は労働者に対して労働法第 49 条の規定に従い失業手当を支給する義務がある。経済事由から行われた組織変更または労働法第 36 条 10 項、第 44 条及び第 45条の規定に則した企業、合作社の合弁または合弁解消のために 12 ヶ月以上継続して就労した労働者を解雇した場合。
  3. 退職手当及び失業手当の支給額を算出するための労働時間は、実際の労働時間から労働基準法に則して労働者が失業保険に加入していた期間と、雇用者が支給した退職手当の期間を引いた時間から算出される。
    • a) 労働者が労働した実労働時間は以下のものを含む。試用期間、職務のための研修・職業訓練、雇用者から任命されて行く研修、社会保険法の規定に則った休暇、労働法 110 条に則した週休;労働法 111 条・112 条・115条・116 条 1 項の規定に則した有給休暇;労働組合について定めた規定に則した労働組合活動のための休業、労働者側に原因のない休業、仕事のの一時中断による休業、仕事に由来する一時拘留・監禁による休業(国家権限機関により違法でないという結論が下されていることが前提)
    • b) 労働者が失業保険に加入していた期間は、雇用者が法律に従い失業保険の払い込みをしていた期間(雇用者が労働者に給与を支給していた間、法律の規定に則して失業保険の払い込みしていた期間)を含む。
    • c) 退職手当及び失業手当を算出するための就労期間は、就労期間が 12 ヶ月を満たしていれば年で計算できる。就労期間が 1 ヶ月以上 6 ヶ月以下であった場合は半年として換算し、6 ヶ月以上就労した場合は 1 年として換算する。
  4. 退職手当及び失業手当支給の特例ケースは以下のように規定される。
    • a) 就労期間が 12 ヶ月以上あるが 18 ヶ月以下で失職した場合は、雇用者は最低 2 ヶ月分の給与を退職手当として労働者に支払う義務がある。
    • b) 企業、共同組合が統合、合併、営業分離などにより労働者の契約を解除する場合は、雇用者は統合、合併、営業分離前までの労働者の労働期間に対して退職手当、または失業手当を支払う義務がある。
  5. 雇用者は労働契約を解除してから 7 日以内に退職手当または失業手当を労働者に支払う義務がある。支払い期限は延長することもできるが、下記のケースに該当する労働契約の中断の場合は 30 日を越えてはならない。
    • a) 個人でない雇用者が活動を終了する場合
    • b) 雇用者または労働者が天災・火災・危難・伝染病の感染に該当する場合
    • c) 雇用者が組織改変や技術切替を行った場合、または本政令 13 条における規定に則した経済的事由がある場合
  6. 退職手当経費、失業手当経費は雇用者の生産コスト、営業コスト、活動経費を算入して計算することができる。