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5年目の安倍政権 首相の姿勢 寛容さを国内政治にも

 激動が続く欧米や韓国と比べれば、今年の日本政治は安定していたといえるかもしれない。今月、安倍晋三首相が政権に復帰してから5年目に入り、「自民党1強」体制はさらに強固になったように見える。だが数々の課題が浮き彫りになった1年だったことも忘れてはならない。

     今年最大の政治決戦は7月の参院選だった。選挙の結果、自民、公明の与党と日本維新の会など憲法改正に前向きな勢力が、参院でも改憲発議に必要な3分の2を上回った意味は大きい。同時に注目すべきは自民党が27年ぶりに参院でも単独で過半数を占めることになった点だ。

     その影響は直ちに表れた。象徴的なのが先の国会で成立した「統合型リゾート(IR)整備推進法」(カジノ法)だ。公明党に根強かった慎重論を自民党は顧みることなく、維新とともに強引に成立させた。

     野党の存在感が薄い中、これまで公明党が安倍政権の行き過ぎに対して一定の歯止め役を果たしてきたのは確かだ。最近、公明党幹部から公然と自民党を批判する声が出始めてはいるが、今後、自民党の独走に拍車がかかる懸念は消えない。

     安倍首相が異論に耳を傾けず、自らの非を認めようとしないことは再三、指摘してきたところだ。ところが年金制度改革関連法の審議の際、首相は「私の述べたことを全く理解いただけないのであれば、こんな議論を何時間やっても同じですよ」と答弁した。議論を軽んじる姿勢がさらに強まったというほかない。

     担当閣僚が法案採決前に「強行採決」の可能性を語るなど、「1強」のおごりとしか思えない発言も相次いだ。一方で、自民党内では個々の政策や方針決定をめぐり、かつてのような激しい議論を戦わせる場面はめっきり少なくなっている。

     外交で首相が次々と行動を起こしている点は評価していい。しかし、首相がオバマ米大統領と米ハワイ・真珠湾を訪問して日米の和解を強調した直後に、稲田朋美防衛相が靖国神社を参拝し、中国、韓国との関係改善に水を差した。首相が最重要課題に掲げる北朝鮮による拉致問題は今年もまったく進展せず、沖縄の米軍基地問題も解決せずに年を越す。

     今年の年頭、私たちは多様性を認め、異論や批判を受け止めて吸い上げるほど民主主義は「強くなれる」と書いた。自民党総裁の任期延長が内定し、安倍政権は2021年秋まで続く可能性がある。だからこそ、首相が真珠湾で語ったように寛容さがもっと必要だ。

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