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少子化と保育 まだ危機感が足りない

 今年生まれる子供の数は統計を取り始めた1899年以降、初めて100万人を下回る見通しだ。今後も出生率が大幅に改善しない限り、最も多かった1949年(約270万人)の3分の1程度になる。安心して子供を産める環境を整えないと、日本は縮小していくばかりだ。

     今年は保育所に入れなかった人の「保育園落ちた日本死ね!!!」という匿名ブログが発端となって母親たちの怒りが噴出し、政治を動かした年だった。

     保育所の不足による待機児童問題は深刻だ。厚生労働省によると4月時点の待機児童は2万3553人だが、育児休業を延長している場合などは集計に含まれない。こうした「隠れ待機児童」は6万7354人にも上る。

     都市部を中心に待機児童を多く抱える自治体は保育所の新設を進めているが、保育士の確保が追いつかず難航している。仕事が大変な割に賃金は全産業の平均より月10万円も低く、それが保育士不足の原因と言われてきた。

     このため政府は来年度予算に540億円を計上し、全保育士の月給を6000円程度増やすほか、技能や経験を積んだベテラン職員はさらに4万円を上乗せする。保育士として働き続ける動機付けとしては効果があるだろう。

     しかし、現実には経験が7年以下の保育士が全体の半数以上を占めている。6000円増えても、まだ月給が18万円程度にとどまる人は少なくない。一段の上乗せが必要だ。

     総収入に占める人件費の割合が極端に低い保育所が多数あることも指摘されている。国が待機児童解消のために予算を増やしても、保育士の賃金に回らなければ意味がない。低賃金で若い保育士を酷使する保育所には厳しいチェックが必要だ。

     保育士資格を持ちながら働いていない「潜在保育士」も約76万人に上る。低賃金とともに子育てや家庭生活との両立が難しいためとされる。正職員でないと保育所内での立場や処遇がさらに悪いためパートで働くことも控えている人が多い。もっとパートの処遇改善に力を入れるべきだ。

     また、国が定めた職員配置基準では、4歳児以上は子供30人に保育士1人だが、0歳児は3人に保育士1人と定められている。多くの保育士が必要な0歳児を家庭で育てられるようにすれば、待機児童の解消には大きな効果がある。男性も含めて育児休業をもっと取ることができるようにすべきだ。

     これから現役世代の女性の数はさらに減っていく。あらゆる政策を動員して出生率を改善しないと、人口減少に歯止めが掛からなくなる。

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