行政・自治体 週刊現代
【戦慄のルポ】いま全国の「限界マンション」で起きていること
建物と住民の老化でスラム化
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管理組合が自然消滅

現在、全国のマンションのうち、世帯主の年齢が60歳以上のものは約5割を占め、マンション住民の高齢化は急速に進行している。

住民の高齢化が進むと、どうなるのか。そのモデルケースが、東京・新宿区の高田馬場駅から徒歩15分程度のところにある大規模な都営B団地だ。

ここは、総戸数約2300戸のうち65歳以上の住人が過半数を占める。都が、単身での入居は60歳以上と制限していることが高齢化に拍車をかけたこともあり、大都会の「姥捨て山」と揶揄する者すらいる。

エレベーターのない5階建ての棟に住む、70代の男性が言う。

「昔は子供もいっぱいいたけど、いまはもう年寄りばかり。ここ数年で知り合いだけで十数人が亡くなった。なかには、部屋の中で倒れて、死後2週間以上経ってから発見された人もいた。

団地全体だと孤独死の話はしょっちゅう聞きます。皆どこかしら体を悪くして、病院に行く以外は家に引きこもっている。自治会の役員もなり手が少なく、あと5年もしたら、運営が成り立たなくなりますよ」

このB団地は、あくまで都営であるため、設備の維持管理は都が担っているので、仮に自治会が組織できなくなっても、一定の環境は維持されるかもしれない。

だが、民間マンションの場合、同様に住民の高齢化が進み、管理組合の機能が果たされなくなれば、もはや誰も面倒を見てくれなくなる。

 

老朽化マンションの問題に詳しい、高崎健康福祉大学元教授の松本恭治氏が言う。

「以前私は、自宅のある都内の多摩地区から、大学のあった群馬県高崎市の近辺までに建つ約250件のマンションを、数年かけてしらみつぶしに調査しました。

結果、その1割、25件のマンションが住民の高齢化による管理組合の機能停止や、管理費積立不足による修繕不可能などの『管理不全』に陥っていたのです。

調査から数年が経ち、その数はもっと増えているはず。こうした足を使った調査はほとんど行われていないから見過ごされがちですが、東京周縁部での管理不全のマンションの増加スピードは、想像を遥かに超えるものがある。

私が実際に赴いて調査しただけでも、埼玉県の所沢市や新座市、熊谷市、茨城県の取手市などで、管理不全マンションの増加が目立っています」

いきなり廊下が崩落

建物と住人の2つの老い。その進行がとりわけ顕著なのが、'81年の6月以前に建設された旧耐震マンション(築35年以上)と、そのさらに前、'71年以前に建てられた旧々耐震マンション(築45年以上)だ。

日本全国で、旧耐震は約106万戸、旧々耐震は約18万個が現存しており、両者を合わせた数は、多い順に東京、神奈川、大阪、千葉、兵庫、埼玉、愛知と続く。

そのうち東京には、旧耐震が36万戸、旧々耐震が7万戸現存。次ページの表を見れば分かる通り、世田谷区や渋谷区、港区、新宿区など、人気住宅地とされる地域に多い。

都下に目を移せば、多摩ニュータウンに代表される大規模団地を抱える多摩市や八王子市、町田市に多く残る。