トランプ氏、プーチン氏を称賛 ロシアは米に外交報復せず

  • 2016年12月31日
モスクワの米国大使館(29日) Image copyright AFP
Image caption ロシア外務省は米国外交官の追放を提案していた。写真は、モスクワの米国大使館(29日)

ロシア政府が米国による外交官追放への報復措置をただちにはとらないと表明したことについて、ドナルド・トランプ次期米大統領はツイッターで30日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を称賛した。

トランプ氏は「(プーチン氏が)先送りを決めたのは非常に賢明だ。頭がいい人だとずっと思ってた」とツイートした

プーチン氏のこの声明の前には、トランプ氏は「最新状況の事実関係」について報告を受けるため、来週にも米政府の複数の情報機関の幹部たちと会談する予定だと話していた。

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米政府は29日、今年11月の米大統領選にロシア政府が介入したという情報機関の報告を受けて、ロシア外交官35人と家族に国外退去を命じ、ロシア政府は対抗措置をとる用意を表明していた。しかしプーチン大統領は30日、ロシアは「無責任な外交」を行うつもりはないと声明を発表

プーチン氏は声明で、「我々は誰も追放しない。(外交官の)家族や子供たちを、正月休暇をいつも過ごす場所から追い出したりしない。ロシアで認証されている米国外交官の子供たち全員を、クレムリンの新年とクリスマスのツリーのもとに招待する」と述べた。

さらにプーチン氏は、バラク・オバマ米大統領と家族、トランプ氏、ならびに「米国民全員」に、良い新年を迎えてもらいたいと述べた。

この大統領声明に先立ち、ロシア外務省は米政府への報復措置として、モスクワから31人とサンクトペテルブルクから4人の合計35人、米国外交官を追放する方針を示していた。ロシア外務省はさらに、モスクワ内外にある米国大使館の休暇用別荘の使用を禁止すると話していた。

米オバマ政権は、ロシアが米大統領選の結果を左右しようと民主党本部やヒラリー・クリントン氏の選対本部のメールサーバーをハッキングしたと判断を示しているが、ロシアはこれを一切否定している。

ロシアのハッキングは選挙を自分に有利にするための工作だったという批判について、トランプ氏はこれを「ばかげてる」と一蹴。制裁措置の可能性について事前に質問されると、米国人は「それよりも自分の生活を大事にすべきだ」と反応した。

トランプ氏の選対本部長を務め、現在は上級顧問のケリーアン・コンウェイ氏は29日、「ほとんどの案件でオバマ大統領に同調する人たちでさえ、この(ロシア制裁は)トランプ次期大統領を『封じ込める』ためだと受け止めている。政局が動機となっているなら、とても残念だ。よくある展開だと思わずにいられない」と話していた。

一方で、共和党重鎮で上院軍事委員会委員長のジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出)は、ロシアのハッキングを「戦争行為だ」と非難。

「それだけに、(その行為には)代償が伴うのだと、確実に示さなくてはならない。それによって、我々の民主主義の基本要素へのこうした攻撃を止めるよう、ロシアを説得できるかもしれない」とマケイン氏は述べ、今後もロシアのハッキングには追加制裁などより今まで以上に対応していかなくてはならないと指摘した。


奪われたメール

オバマ政権が29日発表したロシア制裁によって――

・ロシアのワシントン大使館とサンフランシスコ総領事館の外交官35人が、家族と共に72時間以内に米国外に退去するよう命じられた

・ロシア情報機関が使用しているとされるニューヨーク州とメリーランド州の建物2カ所が閉鎖された

・ロシアの軍参謀本部情報総局(GRU)や連邦保安局(FSB)を含む9機関・個人への制裁措置が発表された

オバマ大統領は、クリントン氏の選対委員長や民主党本部のメール・サーバーをロシアがハッキングしたとの報告を受け、報復措置をとると表明していた。

ハッキングで盗まれたメールは、米大統領選の期間中に告発サイト「ウィキリークス」で公開された。中には民主党にとって具合の悪い内容も含まれていた。

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Image caption サンフランシスコのロシア総領事館

(英語記事 Russia-US row: Trump praises Putin amid hacking expulsions

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