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11月に公開されて以来念願だった「この世界の片隅に」を、やっと観てきました。
たまたまぽこっと時間が空いたので、先伸ばしできるタスクを全部放り投げて映画館へ。
道中、まるで遠距離恋愛中の彼に会いに行くような高鳴りを感じながら、どこかで「いやそんな観る前からハードルあげすぎても」と思う自分がいました。
映画館に着いて、チケットとパンフレットを買いました。それを抱えてトイレに入ったところで、心拍数が上がるのを感じましたがやはり「観る前からそんなに盛り上がっても」と耳元で小さな私がささやいているようでした。
まだ前の作品の上映中だったので入り口付近のソファに座り、パンフレットを後ろからめくりました。
たくさん並んだクラウドファンディング参加者の名前の中から自分を見つけるのはそう難しくはありませんでした。
ここにあった、と、指でなぞって涙が込み上げてきましたが「こんなところで一人盛り上がっちゃって」とそんな自分をくすりと笑うもう一人の私が隣に座っているようでした。
入場し、着席し、館内が暗くなり。
スクリーンには、小さなすずさんが立っていました。
「やっと会えた」
ホッと、しました。
それから終わるまでの時間、何度も何度も読んだ原作の世界が、そこに描かれていました。色と音と動きをごく自然に加えられて。
ただただその、加えられたもののすごさに圧倒された2時間でした。
町の人たちの声、車の音、鳥のさえずり……そして、飛行機のエンジン音や砲弾や爆撃の音。
あれは、BGMや背景画ではなかったと思うのです。
すずさんが聴いていた音がそこに再現されたいた、見ていた世界がそこに再現されていた、そう、感じました。
もっとも印象に残ったのは呉の軍港が爆撃を受けるシーンの音でした。
私は本当の爆撃の音は知りません。
これまで知っていたのは、映画やドキュメンタリーで流されてきたもの。
でもそのどれとも違う、とてもクリアで、とても怖い音でした。
これが、当時の人が聴いた音なんだと、なんの根拠もないけれどそう思った。それくらい、その他のシーンも含めてとてもリアルに感じられる作りでした。
軍港や艦が映るたびに、Twitterで片渕監督にお返事をいただいて驚き恐縮したやり取りのことを思いだしてこっそり恥ずかしくなったりもしました。
エンドロールが流れ、監督のお名前のあとにクラウドファンディング参加者の名前が。
スクリーンのなかに自分の名前を見つけたとき、涙が止まらなくなりました。
ここに来られて本当に良かったと、そう思いました。ハンカチでなくハンドタオルを持ってきていて本当に良かった、とも。
上映後のふわふわとした気持ちを落ち着けるのには少し時間がかかりました。
運転席に座ってぼうっとしていたら夫からのメッセージが届く着信音がして自分のリアルを思いだし、帰路に着きました。
帰りの道中で思ったのは、これは記録映画なのかもしれないということ。
戦争のリアルを、戦争のころにそこにあった暮らしを知らせるための教材のような位置付けになれる映画なのだと思いました。
目を閉じると、印象深かったいくつかのシーンが浮かびます。
すずさんの声も、耳に残っています。
彼女のリアルがあの映画のなかにあったように、私リアルが目の前にある。それぞれの人生を同時進行ですずさんといっしょに生きているような、そんな不思議な気持ちです。
映画のなかで丁寧に追われていたエピソードとばっさりカットされていたエピソードとを意識しながらもう一度原作を読み返したくなったので、お正月休みの楽しみにしようかと思っています。
出会えて良かった原作、知って参加できて良かったクラウドファンディングと、ずっと観たかった映画。
こうの先生と片渕監督と、そして関わったたくさんのスタッフさんや、協力してくれた当時を知るみなさん、こんな作品を世に送り出してくれて本当にありがとう。
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