心のベストテン

ボクらはSMAPを失うことで何を失うことになるのか

今回は、SMAP解散について。喪失感を感じるお二人ですが、SMAP解散がなにをもたらすのか、と柴さんは問いかけます。
芸人、DJとして活躍されているダイノジ・大谷ノブ彦さんと、音楽ジャーナリストの柴那典さんの熱い対談をお楽しみください。

僕らはSMAPを失うことで何を失うのか

柴那典(以下、柴) 今回はこの話からしましょう。SMAPが年内一杯で解散します。『SMAP×SMAP』の最終回が、5人がそろった最後の姿になると言われている。

大谷ノブ彦(以下、大谷) いやあ、まいっちゃうなあ。本当につらいですよね。SMAPのいない2017年なんて来てほしくない。

 喪失感ありますよ。

大谷 柴さん、最初から言ってましたよね。SMAPは平成の象徴だったって。

 今年の1月にそういう話をしましたね。その時は不謹慎だと思ってカットしたんですけど「ひょっとしてSMAPが終わったら平成も終わっちゃうかもしれない」って。
“あのころの未来”に立っている、ぼくらのSMAPの喪失

大谷 その時は解散するとは考えてなかったよね。

 しかも天皇の生前退位の話もなかった。だから8月に天皇の「お気持ち」の表明とSMAPの解散報道が立て続けにあった時には、正直、ちょっとゾッとしました。

大谷 昭和から平成に変わった1989年も、手塚治虫さんや美空ひばりさんや松田優作さんが相次いで亡くなって、僕らより上の世代がすごく悲しんでたじゃないですか。「ああ、こんな気持ちだったのかな」って思いましたよ。

 もちろん5人がいなくなるわけじゃないんですけどね。でも、考えたんです。僕らはSMAPを失うことで何を失うんだろう?って。

大谷 なになに? どういうこと?

 僕はSMAPと『ONE PIECE』が平成を代表する国民的なエンタテインメントだと思っているんですけど、どちらにも共通するのがフラットな「仲間」という結びつきがあることなんですよ。それが「組織」が中心だった昭和との違い。たとえばドリフターズは「仲間」じゃないですよね。

大谷 いかりや長介さんは恐怖の対象としてのリーダーだったよね。それに志村さんたちが反発するから子供たちが大笑いしていた。

 昭和の時代のエンタテインメントって、「石原軍団」とか「たけし軍団」みたいに「軍団」という言葉が象徴するものだったと思うんですよ。圧倒的な力のある人が中心にいて、上下関係がはっきりしている。

大谷 たしかに。

 でもSMAPにおける中居さんのリーダー像はそれとは真逆ですよね。

大谷 そうそう。中居さんは欠点を魅力に変えた最初のアイドルだと思う。歌が下手とか、私服がダサいとか、そういうマイナス面を引き受けることによって他のメンバーがスターになる。

 徹底してますよね。

大谷 中居さん、本当は身長170cmあるのにプロフィールでは165cmってことになってるのよ。それは「身長が小さいやつがリーダーのほうがおもしろいから」で。おもしろいかつまんないかでそれを決めちゃうのがすごい(笑)。

 最高だなあ!

大谷 僕はSMAPって『ONE PIECE』だけじゃなくて『スラムダンク』的なところもあると思うのよ。落ちこぼれから切磋琢磨して才能を開花させた物語もあるし、「仲間」と言っても、単に仲がいいだけのグループじゃなくて、距離の離れたドライな面もある。

 たしかに。みんな、そういう関係性を通してSMAPのことを見ていたと思うんです。そうして彼らはここ20数年間の社会のムード、世間の空気の写し鏡になってきた。でも、そういう「仲間」の素晴らしさが、ここに来て「組織」の論理に屈してしまったような感じがあって。だからみんなモヤモヤしている。

大谷 SMAPって、俺たちひとりひとりの日常の中に寄り添っていたんですよね。毎回コンサートに行くようなファンも、ヒットシングルしか知らないって人も。そういうたくさんの人たちの感情が、今になってSNSで可視化されている気がするな。

 きっと後から平成という時代を振り返ったとき、SMAPを通して語れることはたくさんあると思います。

紅白はエンタメの総決算

大谷 そして大みそかには紅白歌合戦がありますね。出演者も発表になった。

 SMAPは出ないでしょうけど、僕はすごく楽しみです。宇多田ヒカル、RADWIMPS、欅坂46らが初登場ですね。大谷さんの注目は?

大谷 僕は島津亜矢さんですね。去年の「紅白」の中で一番すごかった。

 去年が14年ぶり2度めの出場だったんですよね。どうすごかったんですか?

大谷 なにしろ歌がうまいんです。僕はよくお芝居も見るんですけれど、何を一番見るかって、役者の身体性なんですよ。舞台において物語の世界に説得力を持たせるのは、細かいディティールよりも役者の身体性なんです。

 身体性?

大谷 つまりは身体能力の高さで圧倒するということです。相方の大地がやってるエアギターもそうだけど、身体性に説得力があると、観た人がウソとかファンタジーを共有できるんです。島津さんはその身体性、つまり歌唱力の高さがすごいと思った。

 なるほど。たしかに紅白の原点ってそこですね。もともとは歌という身体性の表現を見せて、それを競う場所だった。

大谷 それが近年では薄れているから、余計に島津亜矢さんのすごさが際立った。

 ただ、こうして毎年の出場歌手ラインナップを見てみると、紅白は本当に正しい進化をしているなと思うんですよ。

大谷 というと?

 じゃ、続けて、次回は紅白の進化について話していきましょう。

次回「正しく進化する紅白歌合戦」は明日、12/29更新です!

構成:柴那典・田中うた乃


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大谷ノブ彦 /柴那典

「音楽についてパァッと明るく語りたい! なぜなら、いい音楽であふれているから!」。ハートのランキングを急上昇しているナンバーについて、熱く語らう音楽放談が始まりました。 DJは、音楽を愛し音楽に救われてきた芸人、ダイノジ・大谷ノブ...もっと読む

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コメント

19720818s https://t.co/UOPv7OxC0y 約6時間前 replyretweetfavorite

momo_0327 「いやあ、まいっちゃうなあ。本当につらいですよね。SMAPのいない2017年なんて来てほしくない。」 ああ、本当にこんな感じ。 https://t.co/xBBlX5i3rG 約7時間前 replyretweetfavorite

Singulith >「僕はSMAPと『ONE PIECE』が平成を代表する国民的なエンタテインメントだと思っているんですけど、どちらにも共通するのがフラットな「仲間」という結びつきがあることなんですよ」  https://t.co/HQiuqB85ei 約19時間前 replyretweetfavorite

Singulith >「SMAPは平成の象徴」  https://t.co/HQiuqB85ei 約19時間前 replyretweetfavorite